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日本発売も噂されるハイネスCB350を見て、懐かしき「サンパン」を振り返りつつ、ロイヤルエンフィールドとも比べてみる

350SS カワサキ マッハ

国内では主流とならなかったサンパン=350ccクラス

インド生産のホンダ製単気筒モデル、ハイネスCB350(現地名)が注目を集めている。ここ数年グローバルモデルの300cc+αの排気量車が数々投入される日本市場。同車も日本仕様が発売される可能性は高そうだ。
モーサイwebがコラボしているwebヤングマシンによれば、日本市場に投入される際は「GB350」という車名になるのではないか……と報じている。

2020年秋にインドで発表された「ハイネスCB350」。エンジンは排気量348ccのOHC空冷単気筒。

1980〜1990年代にあったトラディッショナルな単気筒GBシリーズ(GB250クラブマン、GB400TT、GB500TT)の車名が復活!?というのも興味深いが、なんで350ccなんだ? その答えを探しつつハイネスCB350の狙いを想像してみようというのが当記事のお話。

350cc、ベテランライダーはこれを「サンパン」なんて呼んだりもするが、過去に350ccモデルは国内各社に存在した。
思いつくだけでも、ホンダ=CB350、CL&SL350の4ストツイン、4気筒のCB350FOUR(後にヨンフォアことCB400FOURに発展)、ヤマハ=350R1、RX350、RD350、スズキ=T350、GT350などの2ストツイン、カワサキ=A7シリーズ(2ストツイン)、2スト3気筒の350SSなどだ。

【写真14点】CB350フォアや350SSなど「懐かしの350ccモデル」を振り返る

ホンダ CB350エキスポート(1968年登場)

250ccツインより8mmボアアップにより325cc化されたCB350エクスポート。ほかに派生型のセニア、スクランブラータイプのCL350などもラインアップされた。最高出力は36ps/1万500rpm。

ホンダ CB350フォア(1972年登場)

CB500フォアのスケールダウン版として登場したCB350フォア。当時のホンダ車では最小の347ccインラインフォア搭載モデルで、フラットな出力特性を特徴としていた。最高出力は34ps/8000rpm。

ヤマハ 350R1(1967年登場)

ヤマハ初の専用設計350ccモデルとして登場した350R1。新設計の空冷2スト並列ツインは348ccで、当時のヤマハ最大排気量車だった。36ps/7000rpmの高性能を発揮したエンジンは、後のヤマハ2ストツインエンジンの原型となった。

スズキ T350(1969年登場)

T250をベースに、7mmボアを拡大したT350。排気量アップにともない、フレームもT250より大径化されている。空冷2ストツインは最高出力33.5ps/8000rpmの性能を発揮し、当時としては先進的な6段ミッションが組み合わされていた。

カワサキ 350SS(1971年登場)

2ストツイン350ccのA7シリーズに代わり、3気筒マッハシリーズのミドルモデルとして登場したカワサキ 350SS。跳ね上がったリヤセクションを「テールアップGT」とアピール。最高出力45ps/8000rpmの高性能を誇った。

さらに歴史をさかのぼれば、国内メーカーが乱立した1950年代にも350ccモデルはいくつか存在したが、これは戦後の1949年から始まり1982年まで存続した世界GP350ccクラスを意識した面もあっただろう。
その後国内は4メーカーとなり、前述のように1960年後半から350ccロードスポーツが登場したが、花開く前に萎んでいった印象が強い。
ヤマハ RZ350=1981年、スズキ グース350=1991年などは、ちょっと特殊な例だろうか。

理由は1975年から導入された段階免許制度だ。
自動二輪小型限定(125ccまで)、同中型限定(400ccまで)、同限定解除(排気量無制限)と区分けされた日本の自動二輪免許は、この時期から教習所で取得可能な免許が中型限定までとなった。「限定解除」と言われた、いわゆる当時の「ナナハン免許」は合格率の低い試験場での実技一発試験でのみ取得できた。400ccが上限の中型限定免許が生まれたことで、国産中型モデルは排気量一杯の400cc(厳密には399cc)が現在までの主流となったわけだ。

ヤマハ RZ350(1981年登場)

市販レーサーTZ250レプリカとしてデビュー間もなく人気を博した水冷2ストツインRZ250登場の翌年、TZ350レプリカとして登場したRZ350。最高出力45ps/8500rpmの高性能で「ナナハンキラー」の異名を持つ。

スズキ グース350(1991年登場)

エンデューロマシンDR350系の油冷単気筒をベースに、レーサーレプリカと一味違うスポーツとして提案されたグース350(写真は1992年モデル)。最高出力33ps/8000rpmの性能で、デザイン含め通なライダーから支持されたが、販売面では奮わず。翌年1992年には250cc版が登場する。

ハイネスCB350はロイヤルエンフィールドの完全対抗馬といえるスペック

インドで発表されたホンダ ハイネスCB350。

その流れが変わったのは、ここ10年くらいのこと。
日本市場での2輪車販売台数の低迷に呼応し、また年々厳しさを増す排出ガス規制などにより、国内専用排気量と言える400ccモデルの開発は鈍化。代わって世界的に需要のある中型排気量車が、日本市場にも投入されるようになった。「数の売れない日本専用モデルを作る余裕はない」わけだ。
1980〜1990年代の400ccクラスを知るおっちゃんとしては残念だが、そんな活況を知らないユーザーの多く(特に20〜30代の若年層)は、さほど悲観的ではなかろう。

他方「グローバル化」の恩恵もあって、グローバルモデルとして生まれた原付二種クラスの125cc、軽二輪クラスの150ccや200ccモデルなども日本に投入され、数を増やした。
そして250ccモデルの少し上、前述した300cc前後の排気量のモデルも日本市場へ自然に投入されるご時世となった(日本メーカーではヤマハYZF-R3、MT-03、海外メーカーではBMW G310GS、KTM 390デュークなど)。

250ccのヤマハYZF-R25の兄弟車……というか、250ccという「枠」の無い海外では主流となる320ccのYZF-R3。YZF-R25が最高出力35psなのに対し、YZF-R3は最高出力42ps。

しかし、個人的には疑問もある。
車検のない250ccと車検が必要な300ccクラスの兄弟車ってそんなに違うのかと。
いわばパワーの優位性の差だ。現行販売モデルを見ると、モデルの車格(車体)も重量もほぼ同じで排気量の差があるから、排気量のプラス分そのままの性能アップを体感しやすいのかもしれないが……。

話が少々脱線気味したが、ともあれハイネスCB350である。
350ccクラスはインド市場での高級車クラスの排気量で、ハイネスCB350の場合はボア・ストローク70×90.5mmのロングストローク型単気筒(OHC)という点が注目だ。
実はこれ、すでに存在するインドの大メーカー、ロイヤルエンフィールドの350ccモデルと近似値なのである(こちらはOHV単気筒だが)。

現在インドで販売されているロイヤルエンフィールド バレット350(日本未導入)。

過去何度も試乗したロイヤルエンフィールドの350ccモデルは、爆発的なトルク感というより、ゆったりもっさりと動き出し、波に乗るとのどかに滑らかに回転するフィーリングが牧歌的で楽しかった。
大して回らないけれど、流すのが楽しい──こういう感覚を、旧態依然としたエンジンで味わえるのが貴重で、どちらかと言えば、高回転まできっちりと回るのを指向していた国産エンジンにない味に興味が湧いた記憶を思い出す。

そしてハイネスCB350のボアストロークを始め、性能スペックを見る限り、ホンダはロイヤルエンフィールドの350ccモデルを十分意識し、現代の技術でゆったり感を味わわせる狙いを込めたのは間違いない。
ハイネスCB350の最高出力は21ps/5500rpm。それに対し、現在インドで販売されるロイヤルエンフィールド バレット350は19.1ps/5250rpm
ハイネスCB350の最大トルクは3.0kgm/3000rpm。対するロイヤルエンフィールド バレット350は2.8kgm/4000rpmである。

OHCエンジン=ハイネスCB350と、OHVエンジン=ロイヤルエンフィールド バレット350の違いはあるが、ホンダ製らしい精密なエンジンの回転感がありつつ、ロイヤルエンフィールドよりも意図的に低回転トルクを狙った味付けが想像できる。

ハイネスCB350は従来のサンパンともGBシリーズとも違う魅力がある!?

車重と出力値を見る限り、ハイネスCB350の最高速はせいぜい120km/h程度か?
また、どんな重さ(大きさ)のクランクが使われているか不明ながら─実はここが興味深いのだが─40〜80km/hの速度レンジで一般道や田舎道を流すのが気持ちよいだろうと想像できる。

となると、これまでの国産300ccないし350ccモデルのモノサシで、軽二輪より性能のアドバンテージがあるかとか、車検付きモデルなりの価値があるかなんて観点では語れぬエンジンかもしれない。
またあくまで想像だが、国産で唯一無二の個性を味わわせたカワサキ W650(後に800へ発展)のロングストローク感や重いクランクがゆったり回る感覚を、その約半分の排気量と単気筒でもって味わわせてくれる可能性大。ここが大変興味深い点だ。
高回転を狙わないロングストローク単気筒という、これまでホンダがあまり参入してこなかったテイストの領域に踏み込んだのが、ハイネスCB350なのだ。

一方、これが本当に「GB」として日本で販売されるならば、過去のGBシリーズとはかなり違うキャラクターとなる。
同じ空冷単気筒エンジンながら、GB250クラブマンもGB400TT、GB500TTも、低中回転のトルク感というより、高回転まできっちり回ることを狙ったスポーツモデルだったからだ。
そうした意味も含め、ハイネスCB350はこれまでにない味に期待を抱かせる「異例のサンパン」かもしれない──。

次ページ:かつてのホンダGBシリーズはどんなモデルだった?

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