目次
■手直し終了! ここまでリフレッシュできたZZR600
少しご無沙汰してしまいました。
カメラマンの小見です。
昨年10月末の梨本塾における走行会での実走実験で、タイヤやブレーキフルード交換の必要性を感じた以外、まずまずの感触を得たZZR600の仕上がり。
その後、リヤのフルードをA.S.H.の高性能ブレーキオイルに交換した際、ついでにキャリパーの掃除も完了。
以前、対向するピストン全部が同調するように調整していたフロント純正トキコキャリパーは今も問題なく作動しています。リヤの純正キャリパーはいっそう使いやすく整備されて何の不満もなくなりました。
あとは小遣いの状況で、とうの昔に型落ちしたバトラックス スポーツツーリングT31から何に換えようかな?といったところです。ふだん使いを考えると、現行のT32が妥当なのかも……。

■この2号機を手に入れた直後のカットです。カウルのスクリーンが黒で、キャリア、デビルの集合マフラー、オーリンズのリヤサスが付いていた。リヤサスはセッティングがユルユルで、ダンピングの調整はほとんどされていなかった。
最終回……思い返せば、サビには苦労させられました
さて、このZZR600リフレッシュの記事も今回で最終回です。
今回=第17回までの間には、振り返ってみれば「なあんだ、しょーもない(笑)」って言われてしまいそうなことも多々ありました(自覚アリ)。でもトラブル修理のリアルタイムである現場では、頭を抱えてしまうことも多かったのです。
一方で、部品交換をしようにも中古でも見つかりにくい純正色の外装ゆえに、破損箇所をどうにか自分で修復すべく、旋盤で治具を自作してから樹脂作業をしたことも。
中古で買った当初から立ちゴケと低速転倒による傷がついていましたから、連載開始時にはまずカウリングの補修と塗装が必須の作業でした。
買って早々に燃料メーターの作動不良もあったため、タンクの底に付いている燃料残量計のセンサー部を交換。タンク内をフロートが上下するアナログなゲージが信号を送って燃料計が作動する仕組みをあらためて学んだことも。
思えば、この頃にタンクの内側をファイバースコープで確認しておけば、のちに謎のストールに悩まされることはなかったのだと思います。
なぜかといえば、バイクを買ったときに付いていたタンクの内側はサビ取りされていたはずなのに、のちのちにサビだらけであったことが判明。
しかも燃料フィルターの中まで、タンク素材の剥がれた破片や、サビの粒子が詰まっていたのです。

■燃料計がほとんど動かないまま納車。自分で解決するからいいですと言ったものの、フロートの動きを感知する接触部の劣化がどうしようもなく、新品の燃料センサーに交換した。

■立ちゴケ、スロー転倒の傷を修復すべく、削り&パテ作業にふけった時期。友だちが様子を見にきてくれた際に、どういうわけか「ももクロ」の刀イルミを置いていってくれました。

■サイドカバーの取り付けネジの部分が劣化と割れで欠損。この塗色の外装は欠品していたし、中古品も見つからない。アルミ材で治具を作り、エポキシパテで欠損箇所を作って修理した。

■ZZR1号機を所有していたころにも分解はしていたが、それから10年以上が経過。それでも何度も分解していると、外装脱着はだいぶ慣れた。置き場の確保のために、床面積が必要なのが難点です。

■買ってからしばらくして、摩耗したタイヤをT31に交換したときのスナップ。足立区にあるモトフリーク東京の作業はたいへん丁寧だった。日常使用でT31は素直で良好だったし、サーキット走行も無理をしなければ楽しめる。今後は現行T32に交換するのが妥当かもしれない。

■換えてすぐのころのT31F(フロント)と、塗装し直す前の赤い純正色ホイール。ホイールの表面がこのころにはすでに荒れており、アップで撮るとあちこち剥がれていましたね。

■見落としがちな、フロントフェンダー裏のスタビ的なスチール部材アーチ。フロント周辺の分解整備の際に黒スプレーで簡単に補修しておきました。
結果的に、熱中症で倒して凹ませたそのタンクは、交換してしまいました。
凹み極小にて手に入れた別タンクを、ドリーム商會さんによる素晴らしい純正色ペイントをしていただいたものに交換し、現状に落ち着いている次第です。
サビにはほとほと悩まされました。
燃料系の不具合についてを考えると、古いバイクでは部品が手に入るうちにゴム部品などは入手しておいたほうがいいでしょう。
上記のトラブルから復旧させるため、私のZZRは燃料系統のパーツ、ゴムホースやその他を全部新品に交換。時に知人たちから伝え聞く燃料ポンプのトラブル……これが全く発生していないことだけは不思議かも?
地元近くのカワサキプラザ松戸には、何度も部品発注をし、お手を煩わせてしまったと思います。また、カワサキの部品課(パーツセンター?)の方々にも、何度も細かい部品の発送でご厄介になったのだろうなぁ、と。
届いたパーツのラベルには梱包なり発送を担当されている作業者の氏名が印字されているのですが、面白いもので、何度もさまざまな部品を注文していると、それが同じお名前であることが幾度とありました。ふと親しみを感じたものです。「あ、またこの方が発送してくれたのかな?」って。
そうした部品担当の方々にも、この場をお借りして感謝いたします。
コロナ渦以降に気になったことですが、円滑な部品入手は重要ですよね。

■タンデムシート下のフレームで、荷掛けフックの取り付けネジの受け部分。摩耗でネジ山がダメになっていたので、ドリルで元穴を空け直し、リコイルで修理しました。6mmのリコイルセットは他にも使い道が多いので、あると便利です。

■燃料タンクとエアクリーナーボックスを外して、何回キャブを外したことか……? ダイヤフラムのカバーが色褪せていたので、デイトナの樹脂ブラックで補修。

■フロントフォークを手直しする前に試乗で「足周りが古いかなー」と、編集・上野氏の走り。今なら、きっとそんな印象は受けないと思われるのですが。

■スイングアームとリンクを分解してリヤの作動性を確認。汚れやシャフトの白サビがあったため、研磨とグリスアップを念入りに実施。

■燃料系のホース類、フィルター類は全部新品に交換。この段階でやっと燃料タンク自体のサビが酷かったことが発覚。旧フィルターをナイフで切り裂き、中のサビの詰まりに驚く。

■博美さん、明日香さん、何度も発送でご厄介になりました(馴れ馴れしい表現で失礼)。
足周りを重点的に整備! 快適にスポーツ走行を楽しめるように!
最初のほうの記事で、せっかく社外品の集合マフラーが付いていたのに、なんで純正のマフラーに交換するんだろう?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
実際、ZZR600の1号機でレースや最高速アタックをしていたころには、レーシングマフラーや公道対応の集合マフラーを付けて、テストをしたりして楽しんでいたものです。
ですが、静寂な郊外や住宅地での夜間の走行時、昨今のEV化による車両の低騒音化を踏まえると、今の自分の感覚では静かなほうが良いな、という判断です。
純正マフラーの在庫が極めて少なくなったという事情もあります。
広義でのカスタムとして見れば、マフラーよりも重きを置いたのは足周りの作動性アップです。こちらのほうが優先順位が高い項目でした。
基本的なリンクやスイングアームの分解整備、入手時に付いていたオーリンズのセッティングと、フロントフォークの丁寧なオーバーホール、作動性の良好なオイルシールへの交換……をテクニクスで実施いただいたあとは、今どきのバイクに負けないほど良好な路面追従性を得られました。
以前、「モーサイ」の上野氏に試乗いただいたときにはフロントの作動の古さを指摘されましたが、上記のオーバーホール以降はガラッとレスポンスが向上。
未だに上野氏には確認試乗していただいていませんが、その成果は旧年の梨本塾での試走でも明確でした。頼りない古タイヤをフロントサスがカバーしてくれていて、快適にスポーツ走行を楽しめました。
もっとも、まともな新品タイヤで走ればいっそう楽しかったであろうことは言うまでもありませんが。

■ノーマルマフラーに戻すに際して、オークションで見つけたステンレス仕様の純正エキパイには非常に助かりました。スチール製のエキパイはサビのひどい個体が多くて、再利用で研磨するには……? 溶接でお世話になった狩野溶接工業の狩野社長が一部だけピッカピカにして「あとはやって(笑)」と虎の穴状態にされ、必死に磨いたのも、良い思い出。

■「KHI K 474」の刻印。純正サイレンサーのE4型仕様。たぶん最終型ZZRのサイレンサーです。元々は93年ごろの型式なので、エキパイ接続部の凹ませ方が若干違っていて「だれかが凹ませたか?」と思われそうなのだけど、じつはセンタースタンド取り出し部の凹みが増えていたというわけ。

■燃費計測テストと、GoProの実験も兼ねて走った絵。これは開通したばかりの東名高速道路の横浜青葉JCTから首都高速横羽線までの港北区間ですね。

■テール&サイドカバーの破損の原因は、センタースタンド使用時にリヤシート下バーを掴んだ際、自分の手首付近が強めにカバーに当たるのも一因ではないか?と考えて、オフロード車の部材を狩野溶接工業で溶接していただいた。使い勝手は良好。

■空力と重心変化を抑えたくて、タンデムシート上にトップケースを付けられるようにサブキャリアを増設。この部分も狩野溶接のご厄介に。横風の影響が低減。

■圧&伸びのダンピングはすぐに良い感じで決まったのですが、プリロードの締め加減は一般道とサーキットでのスポーツ走行時の両方の程よいところに決まるまで時間がかかりました。

■昨今、プラザ店でバキュームゲージを使ったキャブ調整をしなくなったとのことで、古巣?(昔のグリーンショップ)のボスに頼み込んでキャブの同調調整。ダイヤフラム脇の小さな穴の通りまで確認してもらえたのは、さすがの一言でした。

■フロントフォーク各部を丁寧に洗浄。インナーチューブの研磨と素晴らしいオイルシールを組んでくれたテクニクスの稲葉さん。インナーチューブの表面処理まで実施したら、いっそう良くなったかも。同店のオーバーホールは、同世代のZZRやGPZにもお勧めです。
ユーザー車検も難なくパス! あとは……燃費?
サーキット走行後、ZZRは特に不調もなく、ユーザー車検をパスできました。
不調はなかったのですが、じつは先行車に遠慮してライトを下向き気味にしていたため、いちど不合格になってしまいました。
それは予想していましたので、カウリング下側のメンテナンスハッチ的小カバーをすぐ外せるように、スタビドライバーを持参していまして、即時対策。
2回目にレーンに入ると、あっさり合格。
ちゃんと整備しておいたので他には特に問題なく、これで公道走行に復帰。
この後にA.S.H.の高性能オイルのテストや各種の実験走行を行いました。公道ではスムースに走れます。そしてクローズドコースではパワーバンドに入るやラムエアの吸気音と叫ぶような高周波音を奏で、心気味よい加速をしてくれるのです。
そこにチェーンの音だけが加味されます。
ノーマルマフラーで、やかまし過ぎないこの和音が奏でられるのですから、あえて排気系を変える必要を感じられないのです。
あと、現状から改善できるなら……と思うのは、燃費が今のバイクに劣る点です。いずれメインジェットの番手を少し下げて、燃費向上の実験をしてみるつもりでいます。
加えて、できればシートを1〜2cm上げたいのと、次回サーキットを走るならバンク角対策でスタンド類をすべて外すことあたりでしょうか。他に希望は……特にありません。
最終話までお付き合いいただき、ありがとうございました。
ご協力をいただきました企業様、個人の皆様にも感謝いたします。

■楽しかった梨本塾Dクラスでの走行。ブレーキをかけたまま1コーナーに入ってフロントが沈んでいても前後サスはしっかり作動。先頭のGSX-R1000には離されてしまったけれど、2位争いの集団の先頭で粘っているところです。

■終盤で、やってみたかった数か所のブラックアウト化。ブレーキマスターは艶消しブラック、タンデムレールとタンデムステップ周辺は美しい7分艶ダイヤモンドコート仕上げになりました。西村コートグリズリーの塗装は、本当に丈夫で光沢が美しい。

■車検に向かうためZZRをハイエースに積んだところ、前輪下が丁度凹んでいて出し入れが不快でした。ちょうどいい板材があったので、下に敷いて固定。

■住居管轄の野田自動車検査登録事務所に、持ち込み車検。平日午後に申し込んだら空いていました。ストレートにパスできればラッキー。でも光軸で何かありそうな予感が……当たりました。

■「そんな事もあろうかと」と、ポケットに入れておいたスタビドライバーが本当に役立ちました。ライト下のカバーに付いたネジを4本外し、内側のダイヤルで光軸を少し上げたら車検合格。

■車検に合格したら、このシールをナンバープレートに貼って、すべて終了。コロナ渦もあって車検をしばし切らしていたのは、仕方ないですよね(率直な感想)。
レポート●小見哲彦
撮影●梨本塾オフィシャル&影兄/小見哲彦
走行写真提供●梨本塾
プロフィール●小見哲彦
無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーとしてバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を2021年より依頼されている。
◯梨本塾
◯ドリーム商會
http://www.dream-shoukai.info/
◯テクニクス
◯モトフリーク東京
◯狩野溶接工業
http://kano-w.o.oo7.jp/index.html
◯西村コートグリズリー
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