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新型ハヤブサを2代目元オーナーがスペックから検証「3代目の気になるポイント、マルとバツ」

3代目、新型ハヤブサは先代モデルを超えるか?

13年の時を経たフルモデルチェンジで、3代目となった新型ハヤブサ。歴代モデルにあった「コブ」ことリヤシートカウルは新型にも用意される(写真は装備状態)。

完全ストック状態の市販量産車で初めて実測300km/h以上をマークしたことで、かつて「市販車最速」と謳われたスズキのフラッグシップモデル「Hayabusa(以下、ハヤブサ)」。その3代目モデルがついにスズキから発表された。2021年2月末頃より欧州や北米、日本など全世界で順次販売されるという──。

欧州などの新排ガス規制への対応のため、根強い人気を誇っていた2代目が2019年に生産終了となって約1年。新型の登場を待ち焦がれた世界中のBusa(ブサ、海外での愛称)ファンは多いと思うが、実は筆者もそのひとり。2代目の2008年型カナダ仕様を約12年間所有し、その魅力の虜になった元オーナーだからだ。

3代目は、まだ日本では写真や海外仕様のスペックなどしか発表されていないが、それらを見ていると、ついつい自らが乗った2代目と比べてしまう。そこで、当記事ではメーカー発表の資料などを元に、新型ハヤブサの個人的な○と×を紹介しよう。

筆者が12年間乗り続けていた2代目ハヤブサ(カナダ仕様)。街乗り・ツーリングだけでなく、サーキット走行も楽しんだ。

ハヤブサは「メガスポーツ」というジャンルを確立した

まずは、ハヤブサをよくご存じない方のために、簡単なプロフィールを紹介しよう。1300ccの大型スポーツバイクであるハヤブサの初代モデルは、1999年に「GSX1300Rハヤブサ」の名称で、輸出専用車として発売された。
当時の大排気量バイクは、各メーカー間における最高速競争が過熱していた頃で、カワサキの「ZZ-R1100」やホンダの「CBR1100XXスーパーブラックバード」など、いずれも最高速度300km/hを謳ったモデルが人気を博していた。

1998年のドイツ・ミュンヘンショーで発表され、1999年に発売された初代ハヤブサ。

そんな中で登場したハヤブサは、前述の通り、完全ストック状態の市販量産車で初めて実測300km/h以上をマークしたことで大きな話題を呼び、「メガスポーツ」というジャンルを作り上げた伝説のマシンだ。
その名前は世界中のバイクファンへ知れ渡り、北米などでは「Busa(ブサ)」の愛称で親しまれるほどの人気を博す。今でも、ちょっとSNSを覗いてみただけで、日本だけでなく海外にも多くのオーナーズクラブが存在し、長年グローバルな支持を得ていることが分かる。

初代モデルは排気量1298ccの並列4気筒エンジンを搭載し、最高出力175ps/9800rpmを誇っていたが、2008年に登場した2代目では、排気量を1340ccに増やし、最高出力も197ps/9500prmにアップさせた。
圧倒的な動力性能を持ちつつも、街乗りやワインディングなどでも扱いやすい特性も人気となり、2014年には国内仕様も販売される。

ところが、同じく前述の通り、より厳しくなった欧州の新排ガス規制などの影響により、2019年に一旦は生産終了に。そして、約1年の時を経て、ようやく発表されたのが今回の3代目だ。

2008年に登場した2代目ハヤブサ。2014年には海外仕様と同スペックで国内仕様が登場した。

3代目ハヤブサのデザイン「現代風なアレンジを加えたフォルム」

約13年ぶりの全面刷新を受けた3代目ハヤブサ。早速、筆者が所有していた2代目と、外観や機能の比較、スペックなどから予想される乗り味などを考察してみよう。なお、今回の比較は、あくまで筆者が所有した2008年式カナダ仕様をベースとした話。年式によってや、国内仕様では多少異なる場合もあるので、ご了承願いたい。

新型ハヤブサのスタンダード状態(リヤシートカウル非装着)。

まず、外観だが、歴代ハヤブサのグラマラスなフォルムを継承しながらも、一目で新型だと分かるデザインはなかなかいい。先代モデルをベースに、より現代風なアレンジを加えたカスタムバイクのようで、個人的には「あり」だ。
特に、フロントフェイスは、よりシャープになった印象でかっこいい。これは、主に左右のラムエアダクト(走行風を取り入れることでパワーを増大するラムエアシステム吸気口)形状の違いだろう。2代目が丸味を帯びた感じだったのに対し、新型は角張ってエッジが効いた形状となったことが大きい。

ただし、2代目ではフロントカウルの左右ダクトと、シートカウルの左右ウインカー部がコブ状に膨らんでいて、どこかジェット戦闘機に付いた翼のような雰囲気があった。その点、新型は、それら膨らみが小さくなり、先代のような前後の一体感もあまり感じられない。全体的な空力性能は進化しているのだろうが、やや残念な点だ。

特に、シートカウルは、テールランプとウインカーが一体型となったこともあり、2代目よりもシンプルであっさりとした印象。ハヤブサ乗りが「コブ」と呼ぶシングルシートカウルを装着したリヤフォルムは、2代目より初代モデルに先祖帰りしたイメージもある。全体的なインパクト感で言えば、個人的には2代目の方に軍配が上がる。

ちなみに、新型のヘッドライトは、2代目のハロゲンタイプからLEDタイプに変更され、夜間での視認性は向上していることが当然予想される(濃霧時などはハロゲンランプの方が前方を見やすいこともあるが、バイクはあまりそういった状況下で走ることはないだろう)。
また、左右のラムエアダクト脇に付いたポジションライト兼ウインカーは、対向車などがより車体を認識しやすくなっているはずだ。灯火系に関連する安全性については、新型はより進化していると思われる。

ヘッドライト、ポジションライト、ウインカー、テールライトにはLEDを採用。
ポジションライトはウインカーとしても機能する。

3代目ハヤブサのサイズ感「新型も立ちゴケには注意が必要?」

新型ハヤブサのボディサイズは、全長2180mm×全幅735mm×全高1165mm。2代目と比べ、全長で10mm、全幅と全高が各5mm短くなっており、サイズ感はほぼ同じながら若干のコンパクト化が計られているようだ。また、装備重量は、2代目の266kgに対し、新型は264kgなので、2kgほど軽量化されているが、重さもほぼ同様と考えていいだろう。

車体が大柄で重たい2代目ハヤブサは、とにかく取り回しがしづらかった。シートにまたがり走り出せばあまり重さは感じないのだが、狭い駐輪場から押してバイクを出すときや、ツーリング先で傾斜した場所へ駐車する際などは、かなり気を遣う。

特に、ハヤブサは立ちゴケさせるオーナーも多いようだ。ツーリング先で出会った同士(ほかのハヤブサ乗り)からよく話を聞いた。かく言う筆者も、12年間の所有期間で3回ほど経験したことがある。立ちゴケ程度でも、サイドカウルなどが傷付くことも多い。交換するとなると、カウル片側だけでも工賃込みで4万円~5万円程度の出費となる場合もあるからやっかいだ。

あるときなどは、凹凸がある路面だったためか、シートにまたがったままサイドスタンドを出した際、きちんとスタンドがバイクを支えてないまま降りてしまい、スタンドが跳ね上がったことがある。慌ててバイクを支えようとしたが、重さに耐えきれず車体が左側へゴロン……泣けた。新型は、サイドスタンドも改善していることを期待する。

ちなみに、2代目ハヤブサの足着き性は、身長165cm・体重59kgの筆者でもさほど悪いと感じたことはなかった。シート形状は幅広く、シート高も805mmだったが、リヤサスペンションが適度に沈み込むため、左足だけ出した場合ではカカトがほぼ地面に着く感じ。信号待ちで停車する際も、あまり立ちゴケの心配はなかった。

なお、新型のシート高は800mmと2代目よりも5mm低くなっている。数値だけ見ると、足着き性はよくなっているように思えるが、海外でも販売されている最近の大型バイクは、リヤサスペスペンションが硬めに設定されているモデルが多い。

理由は、一説によると、欧州など海外のライダーがタンデムで高速走行した際に、リヤサスペンションが底付きしないようにするためだといわれている。
ご存じの通り、日本の高速道路は基本的に制限速度100km/hだが、海外にはドイツのアウトバーンなど速度無制限の道路もある。グローバルモデルでは、安全上やPL法への対応で、海外に設定を合わせてるというのだ。

この点は、実際に新型ハヤブサにまたがってみないと分からないが、もし乗ってみてリヤサスペンションがあまり沈み込まないようであれば、街乗りではサスペンションのイニシャルをソフト方向に変更した方がいいかもしれない。

高速道路の快適クルージングに期待

2代目ハヤブサは、高速道路のクルージングが極めて快適だった。筆者は、日本人の中でも比較的小柄なので、ハヤブサはハンドルが遠く前傾姿勢はやや強めだった。だが、ウインドプロテクション効果が高いカウリングは、伏せなくてもあまり体に風を受けず、長時間の走行でも疲れにくい。

また、1340ccの大排気量エンジンは極めてトルクフルで、6速のトップギアに入れっぱなしでも、クルマの流れに乗ったまま楽に巡航ができた。さらに、直進安定性が秀逸なため、高速道路を真っ直ぐ走る場合の安心感はかなり高かったといえるだろう。

新型ハヤブサのホイールベースは、2代目と同じ1480mm。高い直進安定性もそのまま継承されていることが伺える。また、大柄なフロントカウルからも、ウインドプロテクション性能が高いことが予想される。

超高速域での安定性と加速性能を追求するため、空力特性を徹底的に煮詰めた新型ハヤブサ。海外向け資料では「ドラッグ係数に関しては、公道を走れるバイクの中で新型ハヤブサは最も優れたバイクだろう」と語られている。

新型で気になるのは、新しくクルーズコントロールシステムが採用されていることだ。スロットルを回さずに、設定した一定速度で走行できるこの機能は、長距離ツーリングをさらに快適にするだろう。

近年、4輪車では、多くのモデルに採用されており、スズキでも軽自動車などに、カメラやセンサーによって渋滞時も前のクルマを追従する機能を備えている。さすがに、バイクでそこまでの機能を持たせるのは難易度が高いだろうが(*)、新しいシステムだけに、ぜひ体感してみたいものだ。

*編集部註:前後にレーダーを搭載し、バイクで世界初の車間キープクルーズコントロールを採用したのはドゥカティ ムルティストラーダV4シリーズで、現状同車が唯一と言える存在。

左スイッチボックスに設けられたクルーズコントロールのスイッチ。31〜200km/hの間で車速を設定でき、2速以上のギヤで機能する。

3代目ハヤブサの電子制御「トラクションコントロール&エンジンブレーキ制御に注目」

ほかにも、3代目ハヤブサは、新たにS.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)を搭載することで、電子制御システムが大幅に進化している。特に、10モードから選べるモーショントラック・トラクションコントロールや、3モードから選べるエンジンブレーキコントロールなどは、ワインディング走行などでより安全で、楽しい走りが楽しめそうだ。

メーター中央の液晶モニターには、ギヤポジション、選択中のライディングモードや各電子制御機能の作動レベルなどが表示される。

ご存じの通り、トラクションコントロールシステムは、リヤタイヤの空転を制御する機能で、最近は多くのスポーツバイクに採用されている。また、エンジンブレーキコントロールは、減速などでシフトダウンした際にエンジンブレーキの効きを制御するシステムだ。

2代目ハヤブサにも、エンジンの出力特性を3つのモードから選択できるS-DMS(スズキドライブモードセレクター)は装備されていた。例えば、ドライならキビキビ走るフルパワーのAモード、雨天時などは穏やかな特性となるCモードといったセレクトは可能だった(同様の機能は新型にも搭載)。

だが、基本設計が13年前だということもあり、さすがにトラクションやエンジンブレーキを制御する機能はなかった。そのため、特に濡れた路面などでは、コーナー立ち上がり時のアクセル開度には気を遣うし、シフトダウン時もエンジンブレーキが効きすぎてリヤタイヤがロックしないよう注意が必要だった。

その点、新型に採用された様々な電子制御が、大パワーと巨体を持つハヤブサの走りを、より快適にしてくれることには大きな期待が持てる。
もちろん、電子制御があるからといって、無茶な走りをすれば事故の危険性が上がることは同様だが、コーナーや減速時などでより安心感があれば、ツーリングなどでの疲労度も軽減され、結果的に安全性が増すことは確かだろう。

最も気になる「3代目ハヤブサは300km/h出るのか?」

多くの最新テクノロジーが盛り込まれた新型ハヤブサだが、筆者が個人的に最も気になることは、3代目も「300km/hが出るのか?」ということだ。
もちろん、公道でそんなスピードを出せる所はない。だが、そこはやはり伝説の「ハヤブサ」だ。また、筆者が2代目ハヤブサで最も忘れられないのが、あの圧倒的な加速力。新型でもあの快感が味わえるのか、ついつい動力性能が気になってしまう。

筆者は2代目ハヤブサで(メーター読み)300km/hを体験したことがある。場所は富士スピードウェイの約1.5kmあるメインストレート。
最終のパナソニックコーナーから思い切りアクセルを全開にすると、凄まじい加速と共に車速がグングンと上昇、ストレートの真ん中あたりにあるゴールブリッジ付近であっという間に速度計が振り切ったのには、かなり驚いたものだ(2代目カナダ仕様の速度計は、数字は290km/hまでだが、目盛りは300km/hまで付いていた)。

エンジンは新設計ではなく2代目の熟成版といえる内容。最高出力190馬力/9700rpm、最大トルク15.3kgm/7000rpmの性能を発揮。
1340ccの排気量、81.0×65.0mmのボアストロークは2代目と変わらず。

新型のエンジンは、2代目モデルと同様の1340cc・並列4気筒を搭載している。最高出力は140kW(約190ps)/9700rpm、最大トルク150Nm(15.3kgm)/7000rpm。
2代目が最高出力145kW(約197ps)/9700rpm、最大トルク155Nm(15.8kgm)/7200rpmだったから、出力などはやや抑えられているようだ。

これは、恐らく、欧州で2020年より新型の二輪車を対象に導入されている新排ガス規制「ユーロ5」に対応させたためだろう(欧州仕様車の場合)。また、加速や最高速度には、パワーだけでなく、車両の重さも大きく関わるが、前述の通り、装備重量は新型が264kgに対し2代目は266kgで、2kgほどしか軽くなっていない。

単純にスペック上の数値だけでいえば、パワーやトルクが若干落ちている分、動力性能は2代目の方が高そうなイメージがある。
だが、スズキが公表した新型ハヤブサ輸出仕様の走行データによると、0-100km/hのタイムは、2代目が3.4秒に対し新型は3.2秒。0-200km/hのタイムでは2代目が6.9秒に対し、新型は6.8秒。最高速度はいずれも299km/hとなっている。

これらを踏まえ、筆者が2代目を走らせた富士スピードウェイのメインストレートで、新型ハヤブサを同時または同条件で走らせたとしよう。その場合、公表された走行データから考えると、新型の方がより加速が速く、より手前の位置で「メーターを振り切る」ことが予想できる。

スズキは、新型ハヤブサの開発にあたり、「電子制御スロットル(ライド・バイ・ワイヤ)の採用や吸排気の機構変更などにより、低中速域における出力とトルクを向上しながら、空力特性の追求により高速性能を落とすことなく」ユーロ5に対応させたという。
つまり、新型のカウリングなどにおる空力特性や、最新の電子制御システムなど、エンジンパワー以外の進化により、ハヤブサの大きな魅力である動力性能を保持、またはアップさせているのだ。

ハヤブサは、初代モデルが発売されて20年以上、筆者が所有した2代目の登場からでも13年の時が経つ。新型には、排ガス規制への対応や最新の電子制御など、時代の変化に対応した様々な変更が加えられているが、根底に流れる「ハヤブサらしさ」は今も変わっていないのではなかろうか。

特に、その圧倒的な動力性能は、スペックだけを見ても、まだまだ健在のようだ。もちろん、街乗りやワインディングでは、それら全てを味うことはできないだろう。だが、その片鱗だけでもぜひ乗って感じてみたいものだ。

スズキ ハヤブサ主要諸元

[エンジン・性能]
種類:水冷4サイクル並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:81.0mm×65.0mm 総排気量:1340cc 最高出力:140kW<190ps>/9700rpm 最大トルク:150Nm<15.2kgm>/7000rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:2180 全幅:735 全高:1165 ホイールベース:1480 シート高800(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R190/50ZR17 車両重量:264kg 燃料タンク容量:20L
[価格]
イギリスでは1万6499ポンド(約244万円)という価格が公表されている。

新型ハヤブサのカラーバリエーション

パールブリリアントホワイト×メタリックマットステラブルー
メタリックマットソードシルバー×キャンディダーリングレッド
グラススパークルブラック×キャンディバーントゴールド

レポート●平塚直樹 写真●スズキ/平塚直樹 編集●上野茂岐

2月21日追記:0-100km/h、0-200km/hのタイムを逆に記述していましたので、訂正を行いました。

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