雑ネタ

中高年バイク好きに絶大な人気を誇る『イージー・ライダー』を今の20代が予備知識なしで見たら、正直ワケわからなかった

最近年配のバイク乗りの人から「イージー・ライダーに憧れてバイクに乗り始めたんだよね」とか「イージー・ライダーに出てくるバイク、かっこいいよね」なんて話を聞く機会が多いのですが……なぜ、ある一定以上の世代に『イージー・ライダー』という映画がそこまで「刺さる」のか疑問に思った筆者。

作品の名前は自分を知っていましたが、カッコいいバイクが出ているから人気になったのか、もしくは登場人物たちの中に有名な俳優が出演しているからなのかナゾです。
映画をきっかけにバイクに乗るようになる……そんな人生に大きな影響を与えるような作品だったのでしょうか?

そこで、『イージー・ライダー』の中身について1ミリも知らない20代の筆者が、予備知識なしで実際に見てみました。

※当記事には『イージー・ライダー』本編のネタバレが含まれています。未視聴の方はご注意ください。


『イージー・ライダー』は当時のアメリカの社会情報を知らないと分からない?

まず、結論を言うと「意味がわからなかった」というのが最後まで見終わった感想です。

物語の途中もしくは見終わったときに、登場人物たちの行動の意味がわかるのかと思いきや、結局わからなかったので「この作品はなにが伝えたかったのだろう?」と正直に思いました。

物語の始めから主人公のワイアット(キャプテン・アメリカ)と、ビリーの二人の第一印象が最悪でした。
冒頭から麻薬取引をする二人だったので悪役だと思っていたのですが、まさかの主人公だったなんて!?

また、『イージー・ライダー』はストーリーについて説明がないまま物語が進む場面が多く、戸惑います。
後に調べて知ったのですが、当時……1960年代のアメリカの社会情勢や文化の予備知識がないと、恐らく意味がわからない。

冒頭にある麻薬取引の場面もなぜ麻薬を売買しているのか説明は一切なく「いいブツが手に入ったゼ……」などといったセリフすらありません。
そして詳しい説明がないまま、麻薬取引で大金を得た主人公たちはハーレーダビッドソンのバイクに乗り、ニューオーリンズを目指すのです。

バイクに乗る場面では、有名なステッペン・ウルフの「ワイルドでいこう!」や「ザ・プッシャー」が流れ、背景にはアメリカの広大な大地が映し出されるのですが、ココは率直にカッコいいなと思いました。
このシーンを見れば、バイクに興味がない人でもアメリカの広大な大地を走ること、気ままに旅をする姿に憧れを抱く人だっていたかもしれません。

しかし、筆者はワイアットが乗っているチョッパーを見るやいなや「えっ、まさかブレーキレバーがないの?」と驚きましたが、よ〜く見ると前輪にブレーキがついていませんでした!

ジャック・ニコルソンの怪演に驚く!

こちらも見終わってから調べてみたことですが、『イージー・ライダー』が公開された当時のアメリカでは、ベトナムへの反戦運動や人種差別解消の「公民権運動」が起こっていた時期であり、また日本でも学生運動があるなど、人々が「自由のために戦う」ムードがあったそうです。

それを知った上で改めて作品を振り返ってみると、なるほど、そういった時代背景を感じられる描写があり「自由」という言葉がちらほら出ていました。
しかし、麻薬取引という悪事に染めた二人が自由を求めているのはいささか矛盾を感じるのは筆者だけでしょうか……。

そして、ワイアットとビリーは小さな町で行われていたパレードをバイクに乗って邪魔をしたことで、警察に連行されて留置所に拘留されてしまいます。
しかし、たまたま留置所に入っていた弁護士のジョージ・ハンセンのおかげで釈放され、それ以降はハンセンと一緒に旅に出るのですが……ここで衝撃の事実が。
なんと、有名な俳優が出ていたのです。

ジョージ・ハンセンを演じているのは『シャイニング』や『バットマン』に出演した怪優とも呼ばれているジャック・ニコルソンだったのです。筆者は『シャイニング』や『バットマン』を見ていたこともあり、ビックリしました!

お酒を飲むたびに弁護士のハンセンが「ヒックヒック」と言いながらある動作を取る怪演が面白いので、バイクに興味がなくてもジャック・ニコルソンのファンの方にはとりあえず見てもらいたいですね(笑)。

……と、驚きつつも映画を見続ける筆者でしたが、これから起こる出来事こそ最も驚いたシーンでした。
そもそも「パレードを邪魔するというのはいささか乱暴すぎる行為なのでは?」と思いましたが、冒頭から麻薬取引をやるぐらいですから、それぐらいのことはやるのでしょう。

弁護士のハンセンによって釈放された二人は、謝肉祭へ行くことをハンセンに伝えると同行したい、と言われ一緒に旅をすることになります。
仲間が一人加わったことにより、楽しくツーリングをしている一行はお腹が空いてきたようで、田舎のとあるレストランで食事を取ることになります。
しかし、店内にいた男性たちは主人公たちを見て、あからさまな敵意を見せます。

敵意はやがて、殺意に変わっていきますが、ここでも殺意に変わる具体的な理由が明かされずナゾのままとなるのです。
重苦しい空気から離れようと、三人は店を出ていき野宿をすることになるのですが、店にいた男性らが三人の寝込みを襲いにかかります。

一言も発することなく、当たり前のことをやっている様子で彼らはひたすら三人を殴打する。
殴打されたことで、主人公のワイアットとビリーは重症を負い、ハンセンは撲殺されてしまう……衝撃なシーンでした。

「え、なんで? あの三人、何も悪いことしてないけど!?」なんて不条理を感じつつ、また1960年代のアメリカという場所はそんなに怖い場所だったのかとも思いました。

これも後で時代背景を色々調べていくうちに知ったことですが、当時のアメリカでは長髪でひげを生やし、ジーンズやヘアバンドなどを身にまとい、脱社会的な思想や行動を取ったりする者たち=「ヒッピー」という人達がいた一方で、それを嫌う人達もいたとのこと。
だからこそ、レストランにいた彼らは主人公たちを野放しにしておけず、ハンセンを撲殺までしてしまったのかもしれません。

その後、ワイアットとビリーはようやく謝肉祭のあるニューオーリンズに到着するのですが、空元気なビリーに対し、ハンセンのことで落ち込むワイアット。
ワイアットはおそらくアメリカの不条理さ……自由をうたうアメリカの矛盾についてなにか思うことがあったのかもしれません。
ハンセンが死ぬ理由なんて、どこにもなかったからです。

1960年代のアメリカが描写されている『イージー・ライダー』

『イージーライダー』で主役ワイアットを演じたピーター・フォンダ(奥)とビリー役のデニス・ホッパー(手前)。

謝肉祭を終えたワイアットとビリーは最終目的地であるフロリダに向かい、麻薬取引で得た大金で余生を過ごそうと思っていたようですが、主人公たち二人の夢は叶うことなくあっけなく終わりを迎えます。

バイクで走っていると、トラックを運転している農夫らしき男が現れて、鋭い目つきでワイアットとビリーを睨みつけてきます。
気に食わない長髪の若者が派手なバイクに乗っているのを見て腹が立ったのか、農夫はライフルを手にしてビリーに銃口を向けます。それに対し、挑発されたと思い指を立てるビリー。

農夫からしてみれば、ワイアットとビリーはおそらく宇宙人みたいなものだったのでしょう。そして、実際に農夫はビリーを撃ってしまう。
ハッキリ言って、農夫の行動も筆者には意味不明でした。だって、そこまですることないじゃないの!?

ワイアットは撃たれたビリーに駆け寄り「なんてことしやがる」と言い残し、トラックの後を追います。
農夫はそれに対抗するかのように、トラックを反転してワイアットを正面にして走り出しますが、またもやライフルを手にとってワイアットへ発砲。炎上したバイクを最後に物語が終わります。

あまりにもあっけなく、衝撃なラストシーンです。
何か危害を加えたわけでもなく、指を立てたら撃ち殺されるという不条理。

アメリカといえば、自由を象徴する「自由の女神」像があることもあってか、自由という概念を肯定的に捉えることができる国なのかなと思っていました。
しかし、この映画を見る限り、自由があるようでないというか、むしろ誰彼構わず殺害することができる自由もあることに恐怖を感じます。

ある場面で、ビリーが世の中の人間に対して「やつらは何をビビっているんだ」と不満を募るのですが、それに対しハンセンが「君が象徴しているそのものさ。君に自由を見るんだ。自由を説くことと、自由であることは別だ。アメリカ人は自由を証明するためなら殺人も平気でする。個人の自由についてはいくらでも喋るが、自由なやつを見るのは怖いんだ」と話します。

1960年代のアメリカはもしかすると、ハンセンの言う通り、自由を勝ち取るためなら他人を傷つけてしまえる時代だったのかもしれません。だから農夫も自らの自由を守るために、平気で人の命を奪うことができたのでしょう。
正直言って、筆者は1960年代のアメリカには住みたくないと素直に思いました。


1960年代のアメリカを知るための『資料映画』という見方も

バイクに乗って広大なアメリカンの大地を走るシーンなどもあり「話はよく分からないけど、とにかくカッコいい」という感想を抱く人もいるんだろう、というのは何となく分かったのですが、個人的には『イージー・ライダー』は昔のアメリカを知るための資料映画のような感覚でした。

余談ですが、見ているときに中学生の頃、社会科の先生が映画『ホテル・ルワンダ』を授業の一環として見せてくれたことを思い出し、少し懐かしさを感じましたね(どうでもいい)。
興行成績を調べたところ、アメリカでは6000万ドルだったといいます。当時の日本円換算(1ドル360円)では216億円!
映画を見ただけでは「そんなに売れた作品だったの!?」という気がしましたが、当時の社会情勢や文化による影響も大きかったのではないかと思いました。

逆に言うと、若い世代に限らずある程度「予備知識」がないと、『イージー・ライダー』は何がいいたいのか分からない作品に見えてしまう可能性が高い……。

一方、レビューサイトやブログなどに書かれている感想を見ると『イージー・ライダー』は「感覚的な映画」と言われているようです。
細かい説明抜きに物語が進んでいくため、見る側がこの作品はなにを伝えたいのか感じ取らなければいけない部分が多いということでしょうか。

しかし、『イージー・ライダー』の「意味不明さ」をきっかけに、1960年代のアメリカについて「こういった時代があったのか!!」と知ることができました。
そういった意味では自分にとってアメリカの歴史と文化を教えてくれる「貴重な資料映画」だと思った次第です。

2月17日15時30分、誤字脱字を修正しました。

『イージー★ライダー』NetflixやAmazonプライム等でデジタル配信中のほか、Blu-ray 2381円(税別)、DVD 1410円(税別)も販売中。発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント。

レポート●モーサイ編集部・小泉 写真提供●ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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