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ドゥカティ ムルティストラーダV4開発スタッフに直撃インタビュー「V4エンジンでデスモをやめた理由は? 前19インチ化の目的は?」

ムルティストラーダ1260の後継となるムルティストラーダV4

2021年モデルとして発表されたドゥカティの最新アドベンチャー「ムルティストラーダV4」。従来までのムルティストラーダシリーズのトップモデル「ムルティストラーダ1260」の後継機種となる。
(ただし、オフロード性能に特化した「ムルティストラーダ1260エンデューロ」は2021年モデルでも継続となる)

L型2気筒エンジンを搭載していたムルティストラーダ1260とは異なり、エンジンは1158ccV型4気筒に。また、前後17インチホイールだったムルティストラーダ1260に対し、ムルティストラーダV4ではフロントホイールを19インチとするなど、大胆な刷新が行われている。

そのねらいについて、イタリア本国で開催された試乗会に参加したイギリス人ジャーナリストのアダム・チャイルド氏が、ムルティストラーダV4車両プロジェクトエンジニアのダビデ・プリビテーラ氏に直撃した。

ムルティストラーダV4車両プロジェクトエンジニアのダビデ・プリビテーラ氏。
ドゥカティ ムルティストラーダV4イタリア本国試乗会に参加したアダム・チャイルド氏。

ムルティストラーダV4 S

ムルティストラーダ V4 S

[エンジン・性能]
種類:水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:83mm×53.5mm 総排気量:1158cc 最高出力:125kW<170ps>/1万500rpm 最大トルク:125Nm<12.7kgm>/8750rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:── 全幅:── 全高:── ホイールベース:1567 シート高840〜860(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR19 R170/60ZR17 車両重量:243kg(乾燥重量:218kg) 燃料タンク容量:22L
[価格]288万円〜

ムルティストラーダ1260 S

ムルティストラーダ1260 S

[エンジン・性能]
種類:水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:106.0mm×71.5mm 総排気量:1262cc 最高出力:116.2kW<158ps>/9500rpm 最大トルク:129.5Nm<13.2kgm>/7500rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:── 全幅:── 全高:── ホイールベース:1585 シート高825〜845(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R190/55ZR17 車両重量:235kg 燃料タンク容量:20L
[価格]274万9000円〜


ムルティストラーダV4の車体で目指した方向性

──ムルティストラーダV4の車重はムルティストラーダ1260より少し重くなっていますが、フレーム単体、エンジン単体で比べるとどうなっているのでしょう。軽くなっているのでしょうか?

ムルティストラーダ V4 S
ムルティストラーダ V4 S

そうです。フレームはムルティストラーダ1260より4kg軽くなり、エンジンも1.2kg軽くなっています。ただV型4気筒エンジンになると、L型2気筒に比べ吸気系・排気系が2倍になり、エキゾーストパイプも4本になります。
また燃料タンクも大きくしましたし、新技術のレーダーシステムの搭載や電子機器類の配線も増えましたので、トータルでは車重増となってしまっています。

──ムルティストラーダ1260からホイールサイズを変更したのはどういう狙いがあったのですか?

新しいムルティストラーダは、より可能性を持ったバイクにしたかったんです。舗装路だけじゃなく、どんな道にも適合するような「地球を走れるバイク」にしたかったんです。
細かなところでも、スタンディング状態で自由に体を動かせるように、ステップまわりやミラーの形状を変更するなど、オフロード性能を確保するために多くの時間を費やしました。また、車体後部もライダーが体を動かしやすいようにスリムに仕上げました。
フロントホイールを19インチとするとハンドリングはダルくなるのが一般的ですが、ムルティストラーダV4の車体はスムーズでスポーティな走りができるように設計しています

V4エンジンのバルブ周りについて変更を行った一番の目的は?

スーパースポーツの「パニガーレV4」のエンジンをベースに、アドベンチャーモデル用として改修が行われたV型4気筒エンジン。「ドゥカティV4グランツーリスモエンジン」と名付けられている。

──次にエンジンについて教えて下さい。なぜムルティストラーダV4はドゥカティ伝統のデスモドロミックをやめ、スタンダードなスプリング式のバルブにしたのですか?

ドゥカティがこの先デスモドロミックをやめるというわけではありません。
我々にはまだデスモドロミックのバイクはありますし、それは特定の車種では継続されるほか、MotoGPプロジェクトでも継続されます。
ムルティストラーダV4は、このカテゴリーのバイクでトップクラスに長いメンテナンスサイクルとしたかった。そのため、バルブはスタンダードなスプリング操作としたわけですが、整備性も上がりますし、人件費を抑える効果もありました。
お客様から確かな信頼を得られるだけの品質となっていますので、ムルティストラーダV4には4年保証がついています。

ムルティストラーダV4に搭載される1158ccV型4気筒エンジン。パニガーレV4やストリートファイターV4の1103ccV型4気筒エンジンに比べ、ボアが2mm拡大されている。
ツーリング用途がメインとなるアドベンチャーモデルに搭載するため、デスモドロミックではなくスタンダードなスプリング式のバルブ駆動とした「ドゥカティV4グランツーリスモエンジン」。バルブ周りのメンテナンスサイクルは6万kmごととなっている。

試乗と開発スタッフへのインタビューを踏まえて、アダム・チャイルド氏は他社製ライバルモデルに対し、ドゥカティ ムルティストラーダV4をこう分析する。

アドベンチャーのベンチマーク「BMW R1250GS」に対するアドバンテージは?

現在、どのメーカーが新型アドベンチャーバイクを送り出しても、この分野の王者たるBMW R1250GSと比較されて判断される。
R1250GSのスタンダードモデルは英国価格で1万3705ポンド(約190万円)、ドゥカティ ムルティストラーダV4のスタンダードモデル・1万7495ポンド(約243万円・日本には未導入)よりかなり安い。
しかし、スタンダードのムルティストラーダV4であっても、同等の装備を求めるとR1250GSの価格は1万7000ポンド〜1万8000ポンド(約235万円〜250万円)の領域に突入してしまう。

価格だけで判断するなら、BMW R1250GSのほうが一見お買い得に感じられる。
が、ドゥカティ ムルティストラーダV4にはR1250GSにはない「アダプティブ・クルーズ・コントロール」(車速を自動制御するクルーズコントロール)や「ブラインド・スポット・ディテクション」(後方車両の接近警告装置)など、レーダーによって安全性を向上させる最新電子デバイスが装着可能である。
ユーザーがここに重きを置くかどうかが大きなポイントになるだろう。

前後にレーダーを搭載し(赤い矢印の部分が前方レーダー)、車間キープ制御のクルーズコントロールや後方車両近接アラームを実現したムルティストラーダV4。
車間キープクルーズコントロール「アダプティブ・クルーズ・コントロール」は30〜160km/hの間で設定できる。

一方、性能数値で比較してみよう。
カタログ上ではドゥカティ ムルティストラーダV4のほうが最高出力では30馬力以上も上回っているが、BMW R1250GSのボクサーエンジンのほうがトルクはある。
また、気筒数が少なく、出力が低いR1250GSのほうが実燃費も良いだろう。
ムルティストラーダV4の燃料タンク容量は22リットルなのに対しR1250GSは20リットルだが……実燃費を踏まえた航続距離は、同等か、あるいはムルティストラーダV4のほうが分が悪いかもしれない。

2車とも前後のホイール径は同じで、フロント19インチ、リヤ17インチ。R1250GSはシャフト駆動で、そういった面も影響してか車重はR1250GSのほうが10kg程重い(装備重量の「計測基準」にもよるが……)。

オンロード・オフロードを2車で走り比べてみると、実際どのような結果となるか、非常に興味深い。

BMW R1250GS。最高出力136馬力/7750rpm、最大トルク14.6kgm/6250rpm、装備重量256kg、燃料タンク容量20L。日本仕様の価格は255万円〜。
ムルティストラーダV4 S(パニアケースはオプション装備)。最高出力170馬力/1万500rpm、最大トルク12.7kgm/8750rpm、装備重量243kg、燃料タンク容量22L。日本仕様の価格は288万円〜。

レポート●アダム・チャイルド 写真●ドゥカティ、BMW まとめ●上野茂岐

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