ヒストリー

二輪免許区分改正の歴史「普通免許さえ取れば排気量無制限でバイクに乗れる時代があった」

1965年までは「クルマの免許」に二輪免許がついてきた

80歳前後のドライバーの中には「ワシはナナハンだって運転できるんじゃよ、二輪に乗ったことはないけどな(笑)」という人がいる。

これは決してほら話でも珍しい話でもなく、かつて四輪免許を取得すると、現在の原付免許の感覚で、自動二輪に乗れる免許が付帯された時代があったからだ。

その制度は1965年の改正によって消滅するが、それ以前に四輪免許を取得していた人には既得権として制限なしの二輪免許が与えられた。結果としてそのまま免許を更新し続けていると大型二輪のところに丸印がついた免許証を持っていることになるのだ。

そして1965年9月以降に四輪免許を取得すると50cc以下の二輪車に乗れる「原付免許」が付帯されるようになった。あわせて、このときに単体の原付免許も誕生している。

二輪免許は1948年に誕生!! 小型・普通・大型の区分は1968年に誕生

一方で「二輪免許」自体は1948年に新たに創設されていた。
もっとも前述したように「四輪免許」に付帯されるのだから、現実的には「二輪免許」を単体で取得する人は少なかったのではないだろうか。

では、四輪免許に二輪免許が付帯しなくなった1965年以降に「二輪免許」を取得するとどうなったのだろうか?

1968年までは「二輪免許」で50cc以上のすべてのバイクを運転することができた。現在のような小型・普通・大型といった区別はなかったのだ。

その三つの区分に分かれたのは1975年のことだ。先行して1972年に125ccの小型自動二輪免許が新設され、1975年に排気量制限のない「自動二輪免許」、400cc以下に乗れる「中型限定自動二輪免許」、125cc以下に乗れる「小型限定自動二輪免許」の3つに分類された。

いずれにしても自動二輪というひとつの免許があって、そこに条件として小型限定、中型限定という風にして実質的に3種類の免許として運用していた。そのため中型限定自動二輪免許で400ccを超える大型二輪を運転したとしても無免許ではなく、あくまでも条件違反でしかないというのが、この時代だった。

1974年発売のホンダ ドリームCB400FOUR。排気量が408ccだったため、「ヨンヒャク」でありながら、発売翌年1975年からは排気量制限のない「自動二輪免許」(今で言う「大型二輪」)でないと乗れない車両となってしまった。
1975年の免許法改正に合わせ、1976年には、排気量を398ccとした「CB400 FOUR-I」と「CB400 FOUR-II」が発売された。写真はCB400FOUR−I。IとIIはハンドル形状が異なる。

「普通自動二輪免許」で大型バイクを運転するのが「無免許運転」となったのは1995年から

そうした限定条件によって運用するという時代が終わり、大型自動二輪免許が新創設されたのが1995年だ。あわせて中型限定自動二輪は普通自動二輪免許となり、小型限定自動二輪は小型限定普通自動二輪免許に変わった。

それまで中型限定自動二輪だったライダーが免許を更新すると、この後は普通自動二輪に書き換わった。つまり大型二輪を運転すると無免許に問われることになり、一気に罪が重くなったのだ。

もっとも、アメとムチという言葉があるように、1995年の改正にあわせて大型自動二輪免許が教習所でも取得できるようになった。それまで中型限定自動二輪の「限定解除」をするには警察の試験場にて審査をうける必要があり、非常に合格率の低い狭き門だったが、教習所で大型二輪免許がとれるようになってからは、ある意味で誰でも大型二輪に乗れる時代になったといえる。

1973年に発売されたカワサキ 750RS(通称Z2)。70年代前半から始まった750ccオーバーのバイクを国内販売しないというメーカー自主規制をふまえ、海外向けに販売されていた排気量903ccのカワサキ900super4(通称Z1、1972年発売で輸出専用車だった)の国内版として開発された。
1969年に発売されたホンダ ドリーム CB750FOUR。1970年代「ナナハンブーム」を盛り上げた人気車のひとつ。

2005年「二輪免許」にもAT限定免許が登場

そして2005年には二輪免許にもAT限定が新たに設定される(四輪では1991年に創設されていた)。これによって、大型二輪・大型二輪AT限定・普通二輪・普通二輪AT限定・小型限定普通二輪・小型限定普通二輪AT限定・原付といった具合に、二輪を運転できる免許は7種類に増えていった。

とくに小型限定普通二輪AT限定は、四輪免許を所持しているドライバーであれば最短2日間で取得できるとあって、最近ジワジワと人気の免許となっている。ホンダ CT125・ハンターカブ(バイクはクラッチレバーの有無によって運転に必要な免許がMTかATかが変わるため、自動遠心クラッチでクラッチレバー操作が不要なカブ系の車両はAT免許で運転できる)やホンダ PCXなど125ccクラスのスクーターに魅力的なモデルが増えていることも、この免許を取得しようというインセンティブになっているようだ。

なお、2019年12月1日の道路交通法改正まで「大型二輪AT限定免許」には排気量上限があり、650ccまでしか運転することができなかった。
2022年現在は排気量上限が撤廃され「大型二輪AT限定免許」でもホンダ CRF1100Lアフリカツインやホンダ レブル1100のDCT仕様、ホンダ NT1100などDCTが標準装備となっている車種など、一部のリッターマシンも運転できるようになった。

2002年に登場したスズキ スカイウェイブ650(写真は2005年型)。排気量は638ccで、二輪にAT限定免許が創設された2005年時点でスクータータイプとしては世界最大の排気量だった。「大型二輪AT限定免許」で運転できる排気量の上限が650ccに定められたのは、同車の存在があったからだろう。
2022年3月17日に発売するホンダ NT1100(エンジンは1082ccの並列2気筒)。トランスミッションはDCTでクラッチ操作が不要、「大型二輪AT限定免許」で運転できる。

2022年、今後の「二輪免許」はどうなる?

さて、このように排気量の区分によって細かく分かれてきた自動二輪免許の将来はどうなるのだろうか。

まず、このまま環境規制が厳しくなればエンジン車の原付バイクが消滅する未来は近い。つまり原付免許自体も消える可能性がある。

もちろん、電動化が進むとなると定格600W以下の原付バイクというのは生き残るかもしれないが、それでも原付二種相当の電動バイクの条件が定格1000W以下となっていることを考えると、このあたりは統合される可能性が高いといえるだろう。

そのとき、四輪免許に、小型AT限定の二輪免許が付帯されるのか、それとも完全に二輪免許として独立してしまうのかはまったく不明だが、電動バイクの普及がカーボンニュートラルにつながるという話になれば、政府としても普及につながるような制度に向かって動かざるを得ないだろう。

もしかすると、電動の小型二輪限定といった免許が生まれるかもしれない。

電動化時代には、そもそもマニュアルで変速する仕組みは不要になるというのが大きな流れであり、基本的にATしか存在しないという世の中になる可能性もある。そうしたときにAT限定という条件をつけておくことはナンセンスで、トランスミッションの限定条件が自然消滅する未来も予想できる。

さて、電動バイクは出力にかかわらず車検不要の軽二輪扱いとなっているが、現時点で電動バイクの免許区分については、次のように決まっている。

定格出力600W以下:原付
定格出力600W超1000W以下:小型二輪
定格出力1000W超20kW以下:普通二輪
定格出力20kW超:大型二輪免許

既に、こうした区分が定められたことを考えると、大型二輪と普通二輪が統合されるということはなさそうだ。

2020年に発売されたゼロ モーターサイクルのSR。定格出力が40kW/5000rpmのため運転には「大型二輪免許」(AT限定可)が必要。ただし2022年現在電動バイクには規定がないため、車検の義務は免除される。

レポート●モーサイ編集部 写真●ホンダ/スズキ/カワサキ/ジーム/八重洲出版 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実

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