ヒストリー

【80〜90年代 250ccレーサーレプリカ ヒストリー】車重130kgでオーバー45馬力! ブッ飛び性能の国産マシン烈伝!!

80年代後半から各社が開発にしのぎを削った2スト250ccマシン。表面上は公道向けであったもののその中身はレーサーそのものであり、100年以上にわたる長いバイクの歴史から見ても異様な熱気を帯びた瞬間であった。

今回は日本国内が空前絶後のバイクブームにわき上がった時代に生まれた、2スト250ccマシンの代表的車種を振り返ってみよう。

走りを極めた「公道で乗れるレーサー」

1985年にTZR、1986年にNSRが発売され、4社の2ストレーサーレプリカが出そろった。4スト4気筒とは異なるGPレース直結の技術とパフォーマンスは日本独自のものだ。

公道用バイクでありながら、レーシングマシンに限りなく近いパフォーマンスを持っていたのが、1980年代に一気に進化した2ストローク250ccマシンたちだ。
ファクトリーマシン、市販レーサー、市販公道用マシンの3車が密接に関係しながら、公道用レーサーレプリカの車体(構造・寸法)、エンジン形式、電子制御(吸排気・点火)、サスペンション、ブレーキ、タイヤ(80年代後半に前後ラジアル化)には常に最新技術がフルに投入された。こんなバイク作りは世界的に見ても異例中の異例。実質GP250マシンの公道版なのだ。

90度VツインSPモデルの対決。RGV250Γ(手前)とNSR250Rロスマンズ。フルアジャスタブルサス、クロスミッションは必須装備。NSR-SPはマグホイールも装着(1988年)。

レーサーだと70馬力以上を発生し、レーサーレプリカも本来であればほぼ同じぐらいの馬力が出せる。が、公道用のスペックは45馬力や40馬力。これは、簡単に言えば70馬力以上のパワーカーブの上を切って台形カーブにしてしまっただけ。2スト250ccが主力のSPレース参戦時には、本来の性能である70馬力以上に簡単に戻せることも重要だったからである。

驚くのは40馬力の馬力規制がかかった最終仕様の完成度だ。車体は高剛性ながらガチガチ感は消え、サスペンションは驚くほど作動性が良く、エンジンは従順。街乗りすら楽しいのだ。それでいて加速は良く、最高速は180km/hを軽く超えていた。
これが日本のGP技術。驚くべき公道マシンだった。

NSR250R(左)とKR-1 。フレーム母材は各社凝っていて、5角目の字断面(NSR)や極太角断面(KR-1)などアルミ押し出し材が盛んに使われ高剛性化が一気に進んだ。

バイクブームを駆け抜けた珠玉の2ストマシンたち

フレディ用マシンの完コピ公道仕様
ホンダ・NSR250R(1986年/乾燥重量125kg・45馬力)

NSR250R(1986年)

1985年にフレディ・スペンサーが世界GP250/500でダブルタイトルを獲得した際のファクトリーマシン、RS250RWを完全コピー。エンジン回転数に応じ排気タイミングを制御するRCバルブ付きの3軸90度Vツインエンジンは9500回転で45馬力を発生。
フレームは目の字断面のアルミツインスパーを採用していた。乾燥重量は当時のクラス最軽量となる125kg(車両重量は141kg)で、タイヤサイズはフロント100/80-17、リヤ130/70-18だった。

→関連記事:【MCアーカイブ】ホンダNSR250R(1986年10月)

吸排気および点火系を電子制御化
ホンダ・NSR250R(1988年/乾燥重量127kg・45馬力)

ホンダ・NSR250R(1988年)

1988年型はPGMキャブやさらにRCバルブ-2など吸排気・点火を電子制御とした。さらにマグホイールのロスマンズカラー(1988年)や乾式クラッチ装備のSPモデル(1989年)が追加された。歴代NSR250Rの中でも「最強」の呼び声が高いモデル。
→関連記事:NSR史上最高馬力! ライバルメーカーが恐れた1988年式NSR250Rとはどんなバイクか?(前編)

ガルアーム採用 SPはレース対応車
ホンダ・NSR250R(1990年/乾燥重量132kg・45馬力)

ホンダ・NSR250R(1990年)

基本構造は従来型を踏襲するが、エンジン主要部品やフレームなどを新設計。
スイングアームはガルアームを採用。SPレース対応型でマグホイール、乾式クラッチ装備のNSR250R SPも用意された。

カードキー、プロアーム装備の最終型
ホンダ・NSR250R(1993年/乾燥重量137kg・40馬力)

ホンダ・NSR250R(1993年)

1990年以来の全面変更。スイングアームは片持ちのプロアーム。
PGMメモリーカードは電源・ECU起動など複合的な電子キーになっている。メーカーの自重規制により最高出力は40馬力に下がったが乗りやすさは向上。

TZより先行した本気のレプリカ
ヤマハ・TZR250(1985年/乾燥重量126kg・45馬力)

ヤマハ・TZR250(1985年)

1985年にRZ250RRに代わる高性能レーサーレプリカとして登場。並列2気筒エンジンをTZでも採用していなかったアルミデルタボックスフレームに搭載。
1986年にGPレプリカのゴロワーズカラーやマルボロカラーを追加。

TZと同様の後方排気を採用
ヤマハ・TZR250(1989年/乾燥重量136kg・45馬力)

ヤマハ・TZR250(1989年)

1988年型TZで採用された後方排気を取り入れて89年に発売。
テールカウルからのぞく2本のマフラーエンドが印象的だった。90年型では倒立フォーク、スタビ付きスイングアームを装備。乾式クラッチを装備するSPも用意されていた。

90度Vツイン+ガルアームの究極形
ヤマハ・TZR250R(1991年/乾燥重量126kg・45馬力)

ヤマハ・TZR250R(1991年)

TZRも偶力バランサー付き90度V型ツインを採用。
GPマシンのYZR250は、1985年当時は2軸クランク60度V型だったが、その後1軸90度V型となりTZRやTZにも採用された。スイングアームはガルアーム。
TZR250R、乾式クラッチを採用したTZR250RS、さらにクロスミッションを採用したTZR250RSPの3モデルがラインアップされていたが1995年にTZR250SPRへと一本化。1999年型が最終モデルとなる。

GP投入後2年弱でアルミΓを市販化
RG250Γ(1983年/乾燥重量131kg・45馬力)

スズキ・RG250Γ(1983年)

市販車初のアルミフレームを採用。2スト水冷並列2気筒はクラス最高の45馬力。
フルフローターサスやフロント16インチホイール、アンチノーズダイブフォークなどGP技術をフルに投入。1985年型で完全フルカウルになった。

RG250Γに採用されたアルミフレーム。

V2エンジン採用で戦闘力アップ
スズキ・RGV250Γ(1988年/乾燥重量128kg・45馬力)

スズキ・RGV250Γ(1988年)

名称どおり90度Vツインを搭載した新型レーサーレプリカ。
フレームはアンダーループを持つアルミツインスパー。この年日本GP優勝(K・シュワンツ)を記念したペプシカラーを追加。SPモデルはクロスミッション装備していた。

GPマシンと同じ70度Vツイン搭載
スズキ・RGV-Γ250SP(1996年/乾燥重量134kg・40馬力)

スズキ・RGV-Γ250SP(1996年)

ファクトリーマシン、RGV-Γ250のレプリカとして登場。エンジンも同型の70度Vツインを採用していた。また、ラムエアをクラス初採用したこともトピック。
また、脱着が容易なセルスターターも装備。ファクトリーマシン同様のラッキーストライクカラーもラインアップされていた。
2ストマシンのなかで最後にフルモデルチェンジされた車両ということもあり、40馬力規制のかかったモデルのなかでも特に高い性能を誇っている。

世界GPを制したタンデムツイン搭載
カワサキ・KR250(1984年/乾燥重量133kg・45馬力)

カワサキ・KR250(1984年)

世界GPで8度のタイトルを獲得した直列2気筒エンジンのレーサー、KR250/350のレプリカ版。ロータリーディスクバルブで180度クランク(レーサーは180→360度同爆へ進化)。レーサーにはなかったアルミフレームを採用した。

前後並列2気筒の新型超軽量マシン
カワサキ・KR-1(1988年/乾燥重量123kg・45馬力)

カワサキ・KR-1(1988年)

タンデムツインから50度前傾並列2気筒に変更し、アルミツインスパーフレームに搭載した新型で1988年発売。1989年にはエンジン・車体・デザインを見直し、名称もKR-1Sへと変更された。残念ながらファクトリーマシンX-09の下向きV型は採用せず、終焉を迎えた。

report:高野栄一/まとめ:モーサイ編集部

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