ヒストリー

【’80sバイク熱狂時代】NSR史上最高馬力! ライバルメーカーが恐れた1988年式NSR250Rとはどんなバイクか?(前編)

’80年代に巻き起こった各メーカー間の性能競争は、“レプリカブーム”という一大ムーブメントを生み出した。
そのブームが最大瞬間風速を記録したのは間違いなく’88年。
そしてその主役となったのは、今なお「NSR史上最高出力モデル」と一目置かれるMC18型ホンダNSR250Rである。
TZR250で2サイクルスポーツを革新したヤマハは、その1KT型を徹底的に熟成し、2XT型を発売。
そしてケビン・シュワンツとともに世界GPに復帰したスズキは、レーサーと同様に満を持してRG-ΓをV型化。
あれから20年……。
ネイキッドブーム勃興の直前に起こった、最大にして最高の輝きを振り返る。

文●阪本一史 写真●柳田由人 車両協力●G2トレーディング(TEL:048-951-3536)

※本記事は別冊Motorcyclist2008年1月号に掲載されていたものを再編集しています。

 

スペック至上の時代

バイク界がレーサーレプリカブームに沸いたピークの年を1988年とするのには、いくつかの理由がある。

では、その前提としてブームを簡単に振り返ってみると、広義の解釈では火付け役がヤマハRZ250だとはよく言われることだ。
また、カウルとアルミフレーム採用を象徴的なアイテムとするなら、’83年のスズキRG250Γ ガンマ(水冷並列2気筒)がそのスタート。
そして次の革新点と言えるのが、前後17インチホイール装着で(それまでの数年は前16/後18が主流)現代のスポーツモデルへの道筋を付け、ニュートラルなグッドハンドリングとうたわれたTZR250(’85年)の登場だろう。

しかし、それ以前からHY(ホンダ・ヤマハ)戦争を繰り広げていた国内ナンバーワンメーカーとしてのホンダが、この状況を静観しているわけはなかった。

2サイクルロードスポーツの分野では後発で、MVX250F(’83年/前水平2気筒、後ろ直立1気筒の水冷V型3気筒)、NS250R/F(’84年/水冷V型2気筒)で、革新的なトライをしながら性能面でも販売面でも苦戦を強いられたホンダだったが、ついに’86年10月、NSR250R(水冷V型2気筒)を登場させた。
ワークスマシンNSR250譲りをはっきりとうたった同車は、さらに驚いたことに翌’88年1月には、早くもフルモデルチェンジと言える内容の’88モデルに進化した。

●ライバルメーカーから物言いがついたというほど、飛び抜けたピークパワーを出していた’88年式NSR250R。翌’89年型は明らかに出力を抑えられていたため、たった1年の命であった。年間約4万台も売れるほどの人気があったが、20年もの月日が過ぎた現在、程度のいい「ハチハチNSR」の希少性は高まっている

VFR750R(RC30)が出たのが’87年でもあり、ホンダはレーサー技術の量産公道車へのフィードバックを、実に分かりやすくかつ刺激的に行っていた時期に当たる。
そして’88年に入ると、NSR250Rをベースにマグネシウムホイールと専用のロスマンズカラーを採用したSP仕様も登場。
また同年、スズキはV型2気筒のRGV250Γをリリース(同時にクロスミッション、前後ハイグレードサスを装備のSP仕様も登場)。レーサーレプリカは、本気でレーサーに近づこうとしていた時代に突入したのだ。

レーサーレプリカ全盛年が’88年と言われるのはそうした理由からであり、たたみかけるように技術的進化が注がれたNSR250Rの2型(MC18)が、特にそれを象徴する。
そんな’88NSRの話はよく知られるところだが、実のところ筆者は試乗初体験。
’88年に22歳の貧乏学生だった私には、50万円を超える車両価格も、そろいで用意したいレーサーツナギの値段も、ハードルが高すぎた。
そして’94年以後、ブーム退潮を肌で感じることになる。
NSRをはじめとした250フルスペックモデルは、45psの公称出力を自主規制により40psへ落とし、それと前後してバイク界の空気が、速さからテイスト重視となっていったのは周知のとおりだ。

前置きが長くなったが、’88NSRの特徴は、市販2輪車では世界初というコンピュータ制御によるPGMキャブレターとPGM-CDI点火システムを採用したこと。
加えて可変排気孔バルブシステム(RCバルブ)も手伝っての、吸気、点火、排気に至るまでの総合的コンピュータ制御が要となる。
簡単に言えば、エンジンやライダーの不得手をコンピュータが補うとも言え、それまではライダーがクセを手なづけるか、慣れてしまうか、それとも我慢すべきところを、解消してしまおうというデバイスだ。
その後のバイク界の主流を行く電子制御による特性コントロールをホンダは早くもNSR250Rに盛り込み、掛け値なしに速さを追求していたのだ。

 

後編に続く

(順次公開)

 

Specification

1988 HONDA NSR250R

●エンジン:水冷2サイクルV型2気筒 クランクケースリードバルブ ボア・ストローク54.0×54.5㎜ 総排気量249㎤(㏄) 圧縮比7.3 気化器TA20 点火方式PGM CDI 始動方式キック

●性能:最高出力45ps/9500rpm 最大トルク3.8㎏ m/8000rpm 

●変速機:6段リターン 変速比①2.846 ②1.941 ③1.500 ④1.272 ⑤1.136 ⑥1.045 1次減速比2.360 2次減速比2.733

●寸法・重量:全長1985 全幅640 全高1105 軸距1355 シート高770(各㎜) キャスター24° トレール90㎜ タイヤF110/70-17 R140/60R18 乾燥重量127㎏

●容量:燃料タンク16.0ℓ オイル1.2ℓ

●当時価格:57万9000円(’88年1月19日発売)

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