ニンジャZX-25Rに見るふたつの価値観【エンジン編】
10数年ぶりに復活した250cc4気筒エンジン搭載モデルとして注目を集めているニンジャZX-25Rだが、果たしてそのエンジンの実態はどのようなもので、また一台のモーターサイクルとしての価値はそのエンジンだけにあるのだろうか?
この点を見極めようと思い、高速道路と山間部のワインディングでじっくりと試乗してみた。
また250cc4気筒エンジンとしては約30年ぶりの新規設計である。前世代250cc4気筒最後のモデルとなったバリオスIIと同時に乗り比べることによって、「30年分」の進化についても考察を行った。
そもそも、ニンジャZX-25Rの最新250cc4気筒エンジンはどんな特性か
まずは、ニンジャZX-25Rのエンジンのパフォーマンスや性格を考えてみよう。その走り出しは非常に軽やかだ。発進時はスタートアシスト機構によってアイドリング回転が上昇するので、クラッチ操作だけでスルスルと走り出す。しかし、低回転ではモッタリとしており、加速感はほとんどない。
ただ、回転上昇に合わせて繊細にスロットルをコントロールしても、乱暴にスロットルを大きく開けても、エンジンの反応やレスポンス性はほとんど変わらない。
過去の250cc4気筒モデルだと、そういう場合はエンジンの息付きやドン付きなどが発生する事も多々あったが、ニンジャZX-R25にはそのような唐突な反応や挙動がまったくない。この時点でそのエンジン制御の素晴らしさが実感できるはずだ。とにかく、エンジンが滑らかに回るのである。これはスロットルバイワイヤを始めとする一連の電子制御の賜物だろうが、間違いなく美点のひとつである。
ニンジャZX-25R:1万回転までの印象
市街地などではおおよそ4000回転も回っていればそれなりに走ってしまうが、素早く加速したい場合は、6000~8000回転のレンジに入れる必要があるので、ギヤを1速ではなく2速落とす必要があるだろう。
そして、本領発揮となるのは8000回転以上のレンジだ。ダイノジェットで測ったトルクカーブを見ると、7000~9000回転のレンジでトルクの盛り上がりがあり、そこからいったん落ち込んで、1万回転から、さらに1万1500回転あたりで大きな盛り上がりがあるので(つまり3段ロケットだ)、やはり実効力のある加速はこのあたりからと言う事になるだろう。
高速道路では、トップ6速8000回転弱で80km/h、1万回転弱で100km/hであるから、おおよそパワーバンドに入る回転レンジでの巡航となる。このため、追い越し加速などに戸惑う事はない。
また、この時点では排気音も金属的で4気筒らしいものになっているが、まだそれほど大きく感じる事もなく、むしろエンジンのスムーズさが快適で、ツーリングのシチュエーションにはピッタリに思える。ギヤレシオを含め、エンジンセッティングがうまく設定されていると感じさせる。
ニンジャZX-25R:1万回転以上の印象
一方、1万回転を超えるあたりからは排気音もかなり甲高いものに変わっていき、体感的な音量は大きくなる。スロットルレスポンスはシャープのひと言であり、エンジン回転はスロットルを開けただけ一気に上昇する。
しかも、このレンジでもエンジン回転は右手の動きに忠実かつ、どこか角の取れたマイルドさもあり、乗り手に不安感をあまり感じさせない。この点でも、エンジン制御における素性の良さが印象的だ。
おそらくは、スロットルの開閉において、その入力立ち上がりの瞬間を人間の反応速度に合わせて調整しているのではないだろうか。
トルクはピークの1万3000回転から緩やかにドロップしていくが、馬力はフラットに伸びていく。
パワーカーブは全体的にフラットではあるものの、1万回転でやや急に上昇し、最高出力が発生する1万5500回転がピークとなるが、回転上昇は素早く、そしてフワリと軽やかでさえあり、一気にデッドエンドの1万8000回転(リミッターが効く)まで回ってしまうのだ。
パワーがドロップしていても、文字通り、狂ったように青天井で回り続けるという、キンキンの超高回転エンジンである。
ただし、高回転域でのサウンドは相当に大きく、長い時間それを体感していると快感が疲労に変わっていくし、実際のスピードはライダーがサウンドから感じているほどではないのも事実だろう。
そういった意味では、その爽快な回転フィーリングとスムーズなパワー、あるいは高回転サウンドに、どこまで250cc4気筒エンジンのレゾンデートル(存在意義)を見出すかによって評価は変わってくるように思える──少なくとも、低回転から高回転まで常にスムーズかつ従順で、不安や破綻を一切感じさせないエンジン制御は実に見事である。
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