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ホンダ二輪新技術「E-クラッチ」開発者にインタビュー「ATとは何が違う? クラッチレバーを残した意味とは」

E-クラッチ ホンダ CB650R CBR650R

「レバーはあるけど、クラッチ操作不要でシフトチェンジ・発進・停止ができる!」

イタリア・ミラノで11月上旬に開催されるEICMA2023。通称「ミラノショー」とも呼ばれる世界最大級の二輪モーターショーだ。
ホンダは新型車・CB1000ホーネットをはじめとして、ヨーロッパ市場に復活となったCBR600RR、ユーロ5+対応に加え各部をアップデートしたCB1000RR-RファイアブレードやCRF1100Lアフリカツインなどを発表したほか、「ホンダ・E-クラッチ」なる新技術の発表も行った。

これはクラッチレバーをいっさい操作しなくても発進からシフトアップ/ダウン、そして停車まで行える画期的なシステムだ。会場にてE-クラッチ開発担当・小野惇也さんに詳しい話を聞くことができたので、一般公開されている技術情報に加えてお伝えしよう。

EICMA2023で発表された「E-クラッチ」と、同機構を搭載する新型CB650R。
E-クラッチの開発を担当したホンダの小野惇也さん。

クイックシフターとは何が違う?

E-クラッチは、ホンダ独自のDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)とクイックシフターの技術とノウハウを応用したものだが、開発の出発点は「バイクを運転する楽しさはそのままに、最新テクノロジーによってさらに快適に、もっと楽しく」というコンセプトだ。

そのためE-クラッチは、システムが動作中でもクラッチレバーを握ることでシステムがオフとなり、従来とまったく同じようにクラッチレバーとシフトペダルによるマニュアル操作が可能となる点が大きな特徴だ(ただし、自動変速は行われない)。
その切り替えはとてもスムーズで、従来のクラッチ操作に慣れた人でも違和感なく扱えるレベルに仕上げているという。また、E-クラッチ作動中はメーターにインジケーターが表示され、クラッチ操作が不要であることを目視できる。

また、クイックシフターと異なる点は、シフトチェンジの際に点火や燃料噴射だけでなく、半クラッチも制御することでよりスムーズで滑らかな変速ができるようになったことだ。

もうひとつの大きな特徴は、スロットル・バイ・ワイヤやクラッチ・バイ・ワイヤという電子制御デバイスを使わずともE-クラッチを導入できることで、一般的なワイヤー式のスロットルとクラッチの車両にもE-クラッチを装備することができることだ。
今回の発表では、スロットル・バイ・ワイヤを採用していないCB650RとCBR650RにE-クラッチが搭載されており、今後もさらに幅広いモデルにE-クラッチを採用していくという。

2024年モデルCB650RのE-クラッチ搭載車。
2024年モデルCB650RのE-クラッチ搭載車。通常モデルと外観上で異なるのはクラッチケース上部にカバー状のパーツが付く点くらい。
2024年モデルCBR650RのE-クラッチ搭載車。
2024年モデルCBR650RのE-クラッチ搭載車。CB650R同様、クラッチケース上部に「Honda E-Clutch」とロゴの入ったカバー状パーツが付く。

回転数を合わせたり、クラッチ操作をしたり……「操る楽しさ」は変えない!

E-クラッチは、いつでもマニュアル操作に移行できる点が大きな特徴でもあるし、メリットでもある。どのエンジン回転数でクラッチをつなぎ、半クラッチをどれだけ使うかはライダーの技量や好みによって異なる。そうした要望に応えることもできる。

バイクの魅力は、決して簡単ではない運転操作を習熟していくおもしろさにもある。そうした楽しみをなくすことなく、快適性を高めたり、よりスポーティに走れたり、バイクの魅力をさらに深めることがE-クラッチの開発コンセプトであるという。その点では自動変速を突き詰めていったDCTとは対極に位置する技術ともいえる。

ふだんはマニュアル操作でクラッチレバーを握りつつも、ロングツーリングや渋滞でクラッチ操作に疲れてきたらすぐにクラッチ操作をバイク任せにできる。柔軟に使えることがE-クラッチの魅力だ。E-クラッチ採用のCB650R、CBR650Rは日本での発売も予定されている。試乗できる機会が訪れたらモーサイwebでレポートするのでお楽しみに!

レポート&写真●山下 剛/ホンダ 編集●上野茂岐

追記2023年11月14日19時:CB650RとCBR650Rがスロットル・バイ・ワイヤを採用している車種と紹介しておりましたが、実際は採用していない車種でした。その点を訂正しました。

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