知人のベテランメカニックの手でキャブレターの同調を取り直し、すこぶる調子が良くなったZZR600・2号機。でも、良い気分でスロットルを大きく開けると、なぜか調子がグズつくときがまだある。
「一体なんでだぁ?」と頭を抱えました。こうなったら燃料系のパイプやフィルターも全部新品にしてタンク内部をじっくり確認し、きちんと清掃してみようと思い立ちました。
タンクの中から想像以上の鉄クズが出現!
ガソリンが残った状態のまま、マグネットツールをタンク内に差し込んでみると、怪しげな物体が中から出てきました。錆びた金属の破片と錆の粉が磁石部に付着。
同車を購入したショップは錆取りをしたと言ってたけど、その後で早くも錆びたの?ともあれタンク内の清掃作業は確定です。コックに繋がるパイプ類や燃料フィルターも疑わしかったので、またしても懇意にしているカワサキプラザ松戸へ交換部品をまとめて注文しました。
通常の燃料パイプとは異なり、変わった形状の新品・純正パイプ類と白い燃料フィルターが届いたので、古いものとじっくり比較。見た目からして疑わしい茶色くなった古い燃料フィルターをナイフで切り開き、カットモデルみたいに分解してみました(もちろん乾燥後)。
樹脂のアウターの内側にフィルターが入っていますが、フィルター外周とアウターの透き間をガソリンが通るんですね。この透き間に錆びた鉄片が多量にハマったら、そりゃ加速後にストール、場合によりエンジンストップもするわな……。キャブを外していた時に茶色っぽくなっていたのに注視するべきでしたね。
ここまで来ると予想された方も多いでしょうが、フィルター内には錆が堆積していて、スロットルを大きく開けると錆がフィルターの中身と外殻の透き間に詰まり、スロットルをオフにしたとたんにストールを誘発させていたみたいです。車速を落として吸い込みが弱まると、錆がバラけて一瞬の不調後でもそれなりに走れていたのかと。
さらに、燃料パイプの数ヵ所には内側から亀裂が生じており、ごく微量なガソリンの染み出しがあったのかも。ここもかつて近所の少年にガソリン臭いと指摘された一因だったのでしょう。
ともあれ、タンクの錆取りを念入りにしなくては根本的な解決はできなさそう。そこで、ガソリンを完全に抜いて数日乾燥させた後に、以前も使ってみて信頼性のある「花咲かG」タンククリーナーをお湯で希釈してタンクに投入。
セメント等をこねる用の大バットに、薬液を満タンにしたタンクを置き、液量を確認しながら2日間ほど錆の落ち具合をじっくり観察しました。そして、花咲かGを入れる前と錆取りをしてタンク内が乾燥した後も、再度マグネットツールで徹底的に金属片や残った錆のカスを除去しました。
先にタンク内の確認と清掃をしていたら、4連キャブの同調で不調は解消していたんでしょうね。遠回りしてしまいましたが、タンクの清掃完了後にパイプ、フィルター等をすべて接続して車体を再組み立てしました。
これで復活ZZR600本来のレスポンス、ラムエアも効く〜!
そして、好調を期待しながら近所の高速道路で試走してみると、新車で手に入れた以前の1号車とほぼ同じ感触まで復調。適度に刺激的で、心地よい加速感です。「こうでなくっちゃ!」と、フルフェイスの中で思わずニンマリ。
ですが低速のスムーズさもちゃんとしていなければ試走結果はNG。丁度いいタイミングで大型トラックが目の前を安全速度で走っていたので、同じペースで10kmほど追従してみました。
制限速度の40km/h以下でも滑らかで、ストレスなく走りやすい。これでやっと、納得できる本来のレスポンスが戻りました。
レース用マシンでは、CRやTMRキャブレターのセッティングを筑波やもてぎでやっていたこともありましたが、極低速域の調整などはしなかったし、ラムエア機構とレーシングキャブの設定をマッチングさせるのは自分にはハードルが高い……ノーマルの負圧型CVKDキャブ(ケーヒン)をきちんと整備するのが、この2号車では正解でしょう。
通常ならば、おそらくタンクからキャブ=川の上流から下流、といった手順で状態を確認するのが正攻法かもしれませんが、錆取りを完了して納車されたと思い込んでいたため、下流から上流へ遡る逆の手順で不調を追う結果になってしまいました。でも、時間は十分あったし面白かったから、ヨシ!としましょう。
こうして安定した本来のスロットルレスポンスが取り戻せたので、別に気になっていたところも1ヵ所改修。応急的なフェンダーレスになっていたナンバー灯周辺は、雨水や汚れの跳ね上げがやはり多く、テールランプケース内に水分がだいぶ入っていました。
フェンダーレス仕様は軽快な見た目がいいけれど、電装の保護を考えるとノーマルフェンダーに戻したいところでした。そこで、ノーマルの中古リヤフェンダーを入手。
仕向け地(国)によっては、もっと長いリヤフェンダーもあるかもしれませんが、このくらい(たぶん標準の長さ?)でまあ良しとしました。昔、長距離ツーリングで台風の日に点火系がリークしたり色んな目に遭いましたから、電気系のトラブルは予防的回避をしておきたかったんです。出先で電気がやられると本当に面倒くさいですから。
さて、リフレッシュ箇所、次のターゲットは……各部に無駄な抵抗があるとエンジンパワーに対しても、車体を押す際の取り回しでも重くなりますからね、遠からぬうちにリヤサス周辺のリンクもバラして、オーリンズが一層働いてくれるように整備する予定です。
レポート●小見哲彦 写真●小見哲彦/モーサイ編集部・上野 編集●阪本一史