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カワサキの新クラシック「メグロS1/W230」詳細解説! エンジンはKLX230系の232cc空冷単気筒、価格は60万円台……?

メグロS1 カワサキ W230

カワサキが「メグロS1」と「W230」をジャパンモビリティショーで世界初公開

「伝統と革新」をテーマに掲げるカワサキが、250ccクラスのクラシカルモデル2台をジャパンモビリティショー2023で世界初公開。伝統のメグロブランドの名を冠した「メグロS1」と、カワサキ伝統のWを継承した「W230」だ。

2車のエンジンは同時発表されたオフロードモデル・KLX230(従来型よりモデルチェンジ)の232cc空冷単気筒ベースであるというが、エンジン外観はクラシカルモデル専用に仕上げられている。
メグロS1とW230の主な違いは外装で、大まかにいうとメグロS1がメッキ仕上げ、W230が塗装仕上げ。上級クラスでのメグロK3とW800の関係を250ccクラスでも踏襲する形だ。カワサキモータースジャパンからは2024年に発売予定との発表もあり、同社マーケティング担当の赤地祐介さんに話をうかがった。

カワサキ W230:エストレヤが2017年に生産終了となって以降、久々の250ccクラシカルモデルとなる。
カワサキ メグロS1:2024年に発売予定となっているが、2024年はメグロブランドの原点「目黒製作所」創業から100年の節目でもある。
カワサキモータースジャパン 企画統括部事業企画部 マーケティング課 赤地祐介さん。後ろの車両はW230。

メグロS1/W230のエンジン「KLX230ベースの空冷単気筒で、外観はクラシカルなデザインに」

──メグロS1とW230の両車は、上級クラスのメグロK3とW800(800cc空冷並列2気筒)の関係と同じように、エンジンと基本骨格を共用しつつ、外観を差別化するという展開になるんでしょうか?

赤地さん●エンジンはKLX230系をベースとし、フレームはW230とメグロS1用に新規で造っています。エンジンはKLXベースとはいえ、クランクケースの外観やシリンダーヘッドのフィン形状、排気ポートの向きなどが違います(メグロS1とW230は右向き、KLX230は逆の左)。
しかし、中身の基本は変わっていません。KLXは元気な特性のエンジンなので、メグロS1とW230のエンジンも意外とパンチのある特性になると思います。ただ、エキパイやサイレンサー形状、二次減速比、車重なども違いますし、KLXとまったく同じパワー特性ということにはならないと思います。とはいえ、以前のエストレヤのようなトコトコしたエンジンフィールというより、割とギビキビした特性になりそうです。

──KLX230シリーズの生産国はインドネシアですが、メグロS1、W230の2台も同国生産ですか?

赤地さん●確定ではないですが、その方向になるでしょう。ところで、先程メグロS1とW230のエンジン特性は意外と元気なフィーリングと言いましたが、同時展示しているカワサキ 250メグロSG(メグロS1がモチーフとしたモデルで1964年発売)に社内で参考試乗したところ、意外と元気なところが似ていて「ブルブルと走る」との感想が多く、この方向はアリだという声も多かったんです。メグロS1とW230の具体的なエンジンスペックや特性はまだお伝えできないですが、今後中身を確定して、ECUの設定で詰めていくことになります。

メグロS1:ロードモデル用に新開発したセミダブルクレードルフレームに、オフロードモデルKLX230系のOHC2バルブ232cc空冷4サイクル単気筒を搭載。メッキタンクや黒基調の色使い、キャブトンタイプマフラーなどに往年のメグロを感じさせる。
メグロS1の言わば「ご先祖」、カワサキ 250メグロSG(1964年発売)。エストレヤのデザインも同車をイメージしていた。エンジンは248ccの空冷4サイクル単気筒OHVで、最高出力17.5ps/7000rpm、最大トルク1.9kgm/6000rpmの性能を発揮。
W230:メグロS1とエンジン・フレームは共通だが、明るめの塗色でかつてのエストレヤ的な雰囲気も感じさせるW230。ホイール径はフロント18インチ、リヤ17インチで、これもメグロS1と共通。
メグロS1、W230とともにジャパンモビリティショー2023で世界初公開された次期型KLX230。ヘッドライトの小型化とデザイン変更、フレームやサスサスペンションの改良などを実施。エンジンは従来型をベースに環境対策が施されたものと思われる。

車名のメグロ「S1」はメグロ250ccモデルの原点回帰という思いも

──W800やメグロK3は少し高めの年齢層をターゲットにしたモデルだったと思いますが、230ccの2台は若いユーザー向けとなるのでしょうか?

赤地さん●ターゲットが20代の若年層かと言われるとそうではなく、もっと広い層で、女性のお客さまにも乗ってほしいですね。シート高は低いですし。

──シート高を気にするユーザーは多いですよね。

カワサキ●ホンダさんのレブルなどと比べたらそんなに低いわけではないですが、こういうクラシカルモデルの中では低いほうだと思います。

──足着き面を考えると、サイドの張り出しが若干気になりますが……。

赤地さん●その辺も大丈夫だと思います。今後細部は調整していくと思います。というのも展示車は、開発過程で言うとちょっと早すぎる公開となっているんです。通常なら試作、量産試作、先行量産があって、量産車なんですが、展示車は試作の段階なんです。ですので、塗装や仕上げ、シートなども一品もので作っていて、細部の意匠は確定ではありません。メグロも車名を「S1」としていますが、これも変わるかもしれませんし。
S1というのは、目黒製作所時代の250cc単気筒のジュニアシリーズが、1953年以降にSジュニアになって(それ以前はJ、J2)、S2、S3、S5、S7、S8と変遷して、SGが最後となりますが、そのシリーズの原点回帰ということでS1としました。メグロ「S」の原点に帰るぞという意味合いでの命名ですが、この辺はS1にジュニアを入れるとか、SG1するとか、まだ変更の可能性もあります。

メグロS1のメーターまわり。左が速度計で液晶モニターを備える。右は各種インジケーターを内蔵した回転計。ETCのインジケーターランプがあるということは車載器が標準装備!? 回転計は8500rpm以上がレッドゾーン。
メグロS1:ニーグリップ部にラバーパッドが付く燃料タンクは、黒塗装を基調にメッキが入る往年のメグロらしい配色。MEGUROロゴの立体エンブレムも採用。
メグロS1:フラットなシートは適度な厚みがあり、白のパイピングでクラシカルなイメージを強調。シート前方は角を落としつつ絞り込まれた形状で、足着き性にも配慮されている模様。

エストレヤではなく「Wファミリー」とした狙いは? 

──W230はエストレヤの再来という印象もありますが、なぜエストレヤではなくWの車名になったんでしょうか?

赤地さん●今回のジャパンモビリティショーブースのテーマは「伝統と革新」ですが、その伝統の面で言えば、Wを継承するほうがふさわしいという判断です。1992年に登場した250cc空冷単気筒のエストレヤは、国内では長く販売されましたが、アジア市場向けにはW250やW175といったモデルもありましたし(*)、Wファミリーとして展開するほうがいいだろうと。

──メグロS1とW230では、今回もメグロのS1が高級バージョンとなるでしょうが、具体的な違いはどの辺になりますか?

赤地さん●両車は同時開発なので、どっちがベースということはないですが、外装やメーターのデザインなどが違います。メグロS1にはメグロのロゴが入ったパーツを採用していますし、外装のメッキ仕上げなどもコストのかかる部分です。ただし、メグロS1はメグロK3のような銀鏡メッキではありません。銀鏡メッキは非常にコストがかかるほか工程的にも難しいので、より一般的なメッキになります。

*編集部注:W250はエストレヤが日本で販売終了となった後も、同車ベースで販売されたモデル。W175は177cc空冷単気筒を搭載したクラシカルモデル。1960年代半ばに誕生した「W」は「Z」「ニンジャ」より古く、カワサキの歴史を伝えるにふさわしい名称だが、元々は2気筒だから「ダブル」のはずで、単気筒車にWの車名という点に違和感を覚えるベテランライダーもいるだろう。今後この「W」が示す新たな意味が説明されるかもしれない。

W230:Wロゴの入った専用デザインのメーター。左に液晶表示内蔵の速度計、右に各種インジケータ内蔵の回転計という基本構成はメグロS1と変わらない。
W230:デザインや仕上げを含めメグロS1と共通の仕様と思われるW230のエンジン。KLX230ベースとはいえ、右のクラッチケースカバー、左のクランクケースカバーともに丸みを帯びた独自の形状。
W230:エンジンのフィン、排気ポートの取り回しもベースのKLX230と異なっている。ただし、パワー特性は「意外とKLX230寄りのキビキビとした感じにりそう」とのこと。
W230:Wの立体エンブレムが付いた白系基調の塗装&黒ライン入りの燃調タンク。容量は非公表。ニーグリップ部分はホールド性に配慮しフラットな形状となっている。
W230:セミアップタイプのバーハンドルも、メグロS1と共通の模様。スイッチボックスは左にヘッドライトハイロー切り替え、ウインカー、ホーン、右にキルスイッチとセルボタンのシンプルな配置。
W230:厚み形状ともにS1用と似ているものの、縦横に区割りの入るワディング加工の表皮が特徴的なW230のシート。上下での黒と白の色分けも差異のあるポイント。
W230:テールランプ&ウインカーがステーで一体となって、リヤフェンダーに取り付けられる。メグロS1も同様の構成だ。
W230:オーソドックスなスチールリム+スポークの前後輪はチューブタイヤ仕様。フレーキは前後ディスクでABSを搭載。リヤサスペンションはオーソドックスなツインショックで、プリロード調整付き。

250ccクラスとしての両車の価格帯と価格差は?

──250ccクラスとして求めやすい価格も意識されるのでしょうが、メグロS1とW230の価格帯や両車の価格差はどれくらいになりそうですか?

赤地さん●その辺はまったく決まっていないので申し上げられませんが、上級モデルのメグロK3とW800の価格差が参考になるかもしれません(メグロK3が139万7000円、W800が123万2000円)。カワサキ総意としての見解ではないですが、価格差は10%程度に落ち着くのではないでしょうか。あとは250ccクラスの一般的な位置づけとして、70万、80万円を超えるとなかなかお客様は手を出しにくくなってしまうと思います。それを踏まえつつコストを考えて、販売価格も決まって行くことになります。

───エストレヤの直立した250cc空冷単気筒エンジンを規制対応で見直しするのは難しかったのでしょうか? 現役の空冷230cc単気筒を活用するのはコスト的な判断なのでしょうか?

赤地さん●確かにエストレヤベースのエンジンを規制対応というのは、難しいですね。結局ほぼ新規に開発するような手の掛け方になるでしょうし、それよりは極力コストを抑えて求めやすい価格で投入するほうがメリットが大きいという判断です。若いお客さまも含めて、多くの方に乗っていただきたいと思いますし。

──ちなみに、もう予約はできますか?

赤地さん●いやいや、それはまだまだ先です(笑)。仕様の決定もこれからですし、価格も含め来年のしかるべき時期に発表しますので、ご期待ください!

ジャパンモビリティショー2023・カワサキのメインステージに置かれたメグロS1(右)とカワサキ 250メグロSG。

report●阪本一史/太田力也 photo●岡拓/編集部/カワサキ

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http://www.kawasaki-motors.com/

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