■とりあえず、自分の好みと用途に合わせた改良は終了、これで完成!
取材時に転倒破損……修理します!
こんにちは。バイク大好き!カメラマンの小見です。
前回は四国の愛媛県におけるマウンテンバイクレース「松野四万十バイクレース2023」取材におけるKLX125の使用状況をお伝えしました。
その際に下りガレ場のクラッシュで破損した箇所なのですが、まずは自分で行った修復についてをお話ししましょう。
曲がったブレーキペダルを正しく元どおりにするために、フレームに当て板を当てて(傷防止をして)、レンチで曲げ直しました。ハンドガードの樹脂部品の少し割れた部分は、汚れを落として脱脂したのちに、プラリペアで修理。
右のリヤウインカーステー(純正品で樹脂)には四国取材当日の衝撃と経年劣化で亀裂が生じていたようで、ウインカー本体が帰京後に数日してからポロン。ブラブラになってしまったため、新品を注文し、自分で交換しました。このあたり、DIY精神で長く乗ってこられているライダーの皆さんなら同様の経験をお持ちの方は多いでしょう。
ですが、せっかくワンオフで作っていただいたエンジンガードはできるものなら以前同様に違和感なくきれいに直しておきたい。ただし自分には、そこまでの技量はありません。
■愛媛県で応急修理をしてハイエースに積んできたKLXを降したところです。エンジンガードは足で蹴り戻しても、まだずいぶん曲がっていますねー。
■ハンドルガードのアルミ部分もカバーも、しっかり削れております。
■四万十の水。作業の合間に入れるコーヒーは、この水で淹れるのです!
■バイク乗車以外に崖登りや歩く動作もある撮影には、このブーツが使いやすいのです。アディダス「GSG-9」は特殊な靴底でグリップに優れ、ゴールドウイング1800の熊本→東京の長距離試乗にもこれを活用。数年前、田村装備開発にて購入。丸洗いして陰干ししておくべく、KLX整備の合間に洗濯です。
■さて、ひん曲がった歪みで、自分では直し切れないエンジンガードを外しました。
■謎のヘコミが付いてます。どこに当たったんだろ?
■クランクケース・フィルター部のネジで凹んだ疑惑。エンジンは無事でした。
■ガード外側はガレ場で滑走した痕跡がアリアリ(恥ずかしー!)。
■肉厚の薄いパイプで構成されているので、フレームマウント部分のプレートが 歪む前にパイプが曲がって塗装が割れていたようです。
■エンジンマウントの部分を確認。亀裂や塗装の割れは生じていないですね。
エンジンガードの曲がりとへこみはプロの手で
ひん曲がっていたのを現場で応急処置した特製エンジンガード。これを製作者である狩野溶接工業代表の狩野さんまで持参。確認すると、曲がっただけではなくクランクケースボルトでへこみができていました。
狩野さんはまず曲がったガード本体を作業台上にて腕力でざっくりと戻したあと、中央部付け根から直線部の曲がり修正、それに微妙な亀裂を若干の肉盛りで補修。
それが終わると、へこんだ部分の深いところに穴の開いた小さな鉄板(スライディングハンマー使用時に引っ掛けるためのもの)を溶接して、スライディングハンマーでへこみを引き戻す作業に取り掛かります。
エンジンガードのパイプ肉厚がそれほど厚くないとはいえ、小さくても深いへこみは力を強く入れないとへこみを戻せず、何度か鉄の小片が取れては溶接で付け直して……の繰り返しになりました。根気よく作業を続け、さらにはポリッシャーで表面を慣らすと、転倒前よりきれいになっちゃったくらいの仕上がりです。狩野さん、さすがの復旧作業です!
思えば、このKLX「松野スペシャル」の各特別部材の製作は、狩野さんのご協力なしには実現しなかっただろうとつくづく感謝(めっきの神谷電化工業さんも同社の協力会社)。
■いざ、東京都葛飾区堀切の狩野溶接工業へ(もはや主治医)!
■曲がり具合を見て修理順序を考える狩野社長。「どこまで直るかねぇ?」と一言。
■まずは腕力で戻せるまで曲げる。これでずいぶん戻ったのが驚きです。
■火炙りの刑に処して、前後方向のねじれの修正にかかります。
■それが戻ると、たたくなどしてマウント部分の確認。
■戻した分、ヘコミが生じたようです。どう対処するのでしょう?
■半自動の溶接で、何かをくっ付ける作業が始まりました。
■熱を加えた後に、スライディングハンマーで引っ張り出すための板材ですね。
■上に向けて円筒状のハンマーをカーン!と一撃。でもそう容易には戻らない模様。
■さらに炙って加熱です。今度はトーチで部分加熱しながら引っ張り材も接合。
■だいぶ戻ってきました! ダメ押しで、もう一枚付けてスライディングハンマー攻撃。
■同様の方法で、ガード下側のエンジンのボルトに当たったとおぼしきへこみを修理。
■修理作業で表面の荒れたところや微小な割れを、TIG溶接し、サンダーで均して整形。
■肉盛りした部分の出っ張りを修正。
■だんだんオーバークォリティーな雰囲気になってきた狩野社長の図。
■最後はポリッシャーで、表面の段差がほとんど分からなくなるまで研磨します。
■滑走痕以外、現地であれだけ派手に曲がっていたとは思えぬガードに戻りました!
追加装着したスクリーンを安全な高さに変更
で、修復したエンジンガードを車庫に持ち帰り、缶スプレーで全面を再塗装して、数日乾燥させたら、自分の手だけでは復旧できない難儀な部分は完了。
エンジンガードの塗料の乾燥を待つ間に、転倒の衝撃と劣化でステーが割れたリヤウインカーを新品の純正品に交換しておきました。壊れていない左ウインカー(黒い樹脂が色あせしている)と右の新品ウインカー(ちゃんと黒い)で、比べてみると色が左右違いますが、これは仕方ないですね。
ヘッドライトカバーに追加したカタナ用スクリーンには、転倒時に少し顎を打ちました。スクリーンには豪雨の際には胸元にアタッチメントで取り付けるカメラの雨避け効果もあったのですが、考えた結果、このスクリーンも少し短縮して安全面を優先することにしました。
ディスクサンダーでカットし、断面がツルンツルンになるまで研磨。ノーマルヘッドライトカバーから5cmほどの高さ、つまり少し気休め的な天地寸法に落ち着きました。
純正ライトカバーの高さ、これ、じつはよ~く考えられた結果なのかもしれません……と今更ながら。
■アゴを若干打つことになった「刀スクリーン」を短縮することにして、ライン引き。高さ半減へ。
■寸法的にはこのラインでいいかな? 少しでも高さがあればそれだけ雨による機材の濡れが減少します。
■スクリーンを外し、サンダーと切断刃でまずは直線的にカット。
■曲線のマーキングに合わせ、今度は9mm幅のベルトサンダーでジワジワ削りました。
■切断面は徐々にペーパーの番手を上げて研ぎ、怪我防止を願って努力。……付きました!
■大丈夫そうに見えていたリヤウインカーですが、帰京して数日乗っていたら、ポロッ……。
■ステーと本体が一体なので、assy1個をカワサキプラザにオーダー。数日で届きました!
■配線のくぐらせ方が防水性向上と引き換えのためタイトゆえ、フェンダーも緩めて通過。
■コネクターをつなぎ、本体を+ドライバーで固定したら交換完了です。
新品バッテリーでの始動に感動!
さて、このKLXで密かに気になっていたこと……それは始動。始動時のセルモーターの動きが鈍いと感じていました。バッテリー放電スピードが若干速いようにも感じます。これは見直すべきと考えました。
本来、KLX125には輸出仕様の兄弟車で150があったと思うんですが、そちらのセルがうちのKLXのようにイマイチ元気よく回らなかったとしたら、125ccよりも圧縮が強いであろう150ccのエンジンを始動できるのだろうか?と思っていたんですよ。
じゃあ、もっと強いセルモーターを積んでるのか?とも考えましたが、共通のセルモーターを積むほうがメーカー的にはコストを抑えられるのでは?と。
今年も四国遠征が確定したことですし、思い切って信頼性の高いバッテリーに交換して、セルの回り具合も確認してみたいもの。
デイトナの「DYTX7L-BS」(標準価格9,680円)。信頼性と入手しやすさで、この製品にしました。きちんとした充電済みのメンテナンスフリーバッテリーですが、車庫で追い焚き充電を2~3時間ほど実施。その間に、古いバッテリーを外した跡の清掃と、シートレールのサビたところの補修塗装。塗料が乾燥したころに「DYTX7L-BS」を積んで結線。
シートやシートバンド、サイドカバーの取り付けはKLX愛用者には手慣れた作業。さあ、この新しいバッテリーに交換しての始動性はどうでしょう? ……目からウロコが落ちるくらい、セルの回り具合もエンジンのかかりも違いました! 古いバッテリーは交換すべきというセオリーは知っていたものの、こうも違う!?
セルの勢いや放電が気になってきたら、信頼ある製品にぜひ交換すべきです。
■充電しても、ふっと電力の落ちる元からのバッテリーに不安を感じてデイトナのDYTX7L-BSを選択。信頼性は確実なんだけど、セルの回り方も変わるかな?
■こちらバッテリー本体。DはデイトナのD、YTXの記号は安心のユアサ系でしょう。よくわからない外国バッテリーも増えたご時世、機材用も含め、信頼性は大事です。
■充電されているはずながら老婆心で追い焚き充電しておきました。でもデフォルトで十分に電力があります。
■さあ、交換です。カバーを外しておそらく劣化している古いバッテリーを外します。
■外した後のトレイや端子も、この際だからきれいに清掃。
■元のサビ状態を思い起こさせるシートレール部。補修塗装で対処します。
■マフラー側も補修が落ちて根深いサビがコンニチワしていました。ガシガシ落とします。
■養生テープとチラシ紙でマスキングして補修塗装。この間にバッテリー追い焚き充電。
■DYTX7L-BSを搭載。あとはカバーを付けて車体復旧すればOKなのです。完成後にセルボタンを押した瞬間、活気あるセルの回りと始動の良さに会心のスマイル!
「豪華」ではなけれど、こだわりまくったカスタムが完成
以上、数年かけてマウンテンバイクレース撮影対応仕様に仕上げたKLX125の道のりをご覧いただきました。車体そのもの以外にも、特化改造したトップケースについてもレポートしました。今年も松野四万十バイクレースが開催決定となり、KLXとトランポのハイエースを愛媛に向けて発進させる準備が始まっています。
このKLX、人生残りのバイクライフにおいても良き相棒になると思っています。 豪華なカスタム車ではありませんが、ご笑覧いただきありがとうございました。
※編集部注:原稿執筆時は2024年10月。11月1日には台風の影響により松野四万十バイクレース2024の中止が発表された。
○取材協力
・有限会社 狩野溶接工業
・株式会社 デイトナ
レポート&撮影●小見哲彦
プロフィール●小見哲彦
無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーとしてバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を2021年より依頼されている。
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<取材協力>
・有限会社 狩野溶接工業
https://kano-w.com/
・株式会社 デイトナ
https://www.daytona.co.jp/