目次
■クランクケース塗装のため、簡易マスキング。オフ車だから「横倒し」にて。
粉を吹いたクランクケース、どうする!?
こんにちはー! 乗るのもいじるのも大好き!カメラマンの小見です。
2000km走行の中古で入手したKLX125は買って早々、ホイールハブに発生した化石みたいなアルミサビの対処から始めて、下周り、そしてリヤサスと、地道に動作改善と化粧直しをやってみました。
■中古で購入したばかりのKLX125。近くで見ると……サビだらけ!
ですが、動力発生の心臓部であるエンジン、これがまた白く粉を吹いた状態でたいへん見苦しかったのです。こちらが、今回のお題となります。
時期的には、過去に記事に書かせていただいたリヤサスの化粧直しより若干前だったかもしれませんが、記録していた写真整理の都合にてご了承ください。
さて、クラッチ部分などのカバー類はまだいいとしても、クランクケース本体がひどい。
走れる状態(一応、日常の足にはなっています)とはいえ、走行距離に見合った小綺麗な外観くらいは、林道対応の車両であれど取り戻したいもの。
車体の上半分の作業のしやすさと比べて、中心部や下側は自分としては面倒な部位でもあるため、他の部分の作業より前、早めに補修しておきたいと考えていたのですが……。なぜか作業タイミングを引っ張って、この時期に。
■どう見ても走行距離に相応しくない、白サビだらけだったクランクケース。いくらオフロードバイクと言えども許し難い有様です。ワイヤーブラシで軽く擦ってどの程度落とせるかを試したところの写真です。後日また作業を続けました
■ケースを塗装する前にフロントのエンジンハンガーを外してケース前側を塗りやすくする措置。このプレートはユニクロメッキするべきでしょうか?
■この塗料は、おそらく以前にレストアしたホンダJAZZやヤマハ・ルネッサの再生に使ったもの。まだ半分近く残っていたので再利用。
オフ車ですし、横倒し!での補修です
使いかけですがそこそこ残量のある耐熱塗料が車庫にあったので、それを頼りに作業を開始します。
KLXを作業用スタンドで立てた状態で、まずはできるかぎりの腐食落としを。
「スコッチ」と呼んでいる研磨材で全体的に磨いたり、入り組んだところを真鍮ブラシで軽めにこすってみたり。だんだん地肌が出てきて、アルミの輝きが少しずつ見えてきました。
油分を落とすため、パーツクリーナーで洗浄した後に中性洗剤で水洗いして、その日は作業終了。3日後、天気の良い日にガソリンタンクから燃料をほとんど抜き取って、フレームのマスキングに取り掛かりました。
なんでガソリンを抜いたかと言いますと、ヤレた中古オフロード車ならではの(?)ラフな塗装方法を実行するためでした。
キャブレター付きのバイクの場合、横倒しにするとフロート室からの残存ガソリンが漏れたりして困ることがよくあるんですが、このKLXはうちの手持ちバイクの中では(今どき笑われそうなのですが……)初のインジョクション搭載車両。フロート室からの漏れはないであろうという想定で、タンクの中のガソリンは抜いて、横倒しの準備です。
そぉ~っとクッション材の上にハンドルエンドや後部の車体を載せて横倒しにして、フレームのマスキングの間からクランクケースを耐熱シルバーに塗装。耐熱塗料は温めないと乾燥しにくい製品が多いので、一応ガスバーナーの炎を当てて遠火で加熱して、硬化を促進してみようと気長にボ~ッ。
■本文に書いたようにガソリンをほぼ抜いて、静かに横倒しにした車体下部とフレームを大雑把にマスキング。この写真で見るとリヤサスを分解する前。分解塗装するつもりだったのでエンジン後部のマスキングがいい加減だったものと思われます。エンジンハンガー下側もサビていますよね。
■これから下周りをワイヤーブラシでひたすらサビ落とし!に励むところ。フレームのパイプはサビ落としの後にもう少しちゃんとマスキングしました。
■反対側のケース左側面も、ワイヤーブラシ攻撃に取り掛かります。チェンジシャフトとオイルシールの辺りやスプロケット付近も後でマスキング。
■塗装して、まだ常温乾燥した後くらいの画像です。随分とましになりました。フレームにもしっかり塗料が付いてしまっていますが、高温乾燥していないし、アセトンで落とせました。
■ケース右側から見たところ。フレーム下側に付いた余分な耐熱塗料、純正の塗装がメタリックでクリアコートっぽいのを見ると工程が複雑そうですね。飛び石や砂利も巻き上がる部分だし、別にこのままでも良いかも…?
なぜ、こんなところが……ヒートガード取付部の破損を修復!
マスキングは、じつはあんまりシビアにやらなかったんですが、フレームその他に多少付いたとしても乾く前にアセトンで拭き取ってしまえば大丈夫ですので、大した問題ではありません。
アセトンで拭き取るような他の部分は、後から別途塗装しますし、ともかく「いちばん奥のクランクケースを塗ってしまう」、これが最重要課題です。
ある程度乾いたところで近所を走り、クランクケースに熱を加えること数日。クランクケースが乾燥していい感じになりましたので、次はサビの浮いたエキパイも塗ってしまうことにします。
エキパイのヒートガードを外してみると、後ろ側の取り付け部に剥離しているところを発見。溶接ではなくて、なぜか耐熱パテみたいなもので付いていたのが割れて外れかけていたんですよ。これはどういうこと……?
こういう部分も放っておくとよけいな雑音の元にもなりますし、部品が落ちても困ります。
樹脂っぽい塊は電動工具で削り落とし、アーク溶接機を使い、点付け溶接で補修してみました。アンペア数はやや落とし目にして1.4mmの溶接棒でバチバチと数回。
チッピングハンマーで念入りにスパッタを落としたら整形し、ねじ穴も確認。溶接は上手ではないけれど、今回はまあまあ大丈夫そうです。溶棒と溶接面を持つため両手が塞がっているので、写真は撮れませんでした。
点付け溶接と整形が終わったら、パイプ全体のサビ落としの確認と脱脂。バーナーで軽く炙って、黒の耐熱塗料を薄めに回数に分けて塗り重ねました。
走行距離の割に、どうしてこうもやることが多いんだろう?と少々疑問も沸きますが、旧車でもないのに擬似レストアという事態が面白くなってきた感じです。
■ケースの塗装が終わり、走行&予熱乾燥した後に気になったのが、エキパイのサビです。エキパイのヒートガードを外してみると、けっこう程度が悪く、ネジ穴も怪しい。
■シリンダーヘッドとマフラーから外して単体になったエキパイです。全体のサビを落としてみると、その後意外な発見があって驚かされます。
■後ろ側のヒートガード取り付け部分。溶接じゃなくてコレは何だろう? 四輪マフラーの応急修理でよく使ってたガンガムみたいなヤツかしらん? エキパイから取れかけてますけど(困惑)。
■もっと酷かったら親しいベテランのいる溶接工場に持っていくところだけど、試しに自分の手持ちアーク溶接機で修理を試みる。失敗しても被害甚大な箇所ではなさそうなんですが、問題は車庫のアンペア数が少なくて、すぐブレーカーが落ちてしまうのが難点。2、3発でキメないと。
■ネジ穴を傷めず、エキパイに穴も空けずに点付け溶接が済みました。こういうサビた排気系部品、以前はよく穴を空けてボツにしたことがあったもんですからひと安心。ベテランの上手な手加減やパルスを使ったTIGのようにはいきませんけれど。
■デコボコの多かったパイプを全体的に軽くポリッシャをかけてなだらかに磨く。深いサビは、これ以上削ってしまうと肉厚が心配。仕方ないのでこのくらいで脱脂して耐熱の黒を塗っておこう。
■黒く復元したエキパイを元通りにエンジンに取り付けたところ。シリンダーヘッドのスタッドのナットもサビたものから新品に交換。でも、この写真でもお分かりと思いますが、エキパイの上のシュラウド保持ステーが汚いですね。
カムスプロケットカバーの白サビが酷い! 塗り直しです
一方、クランクケースがちゃんとシルバーに戻ったエンジン。腐食して石灰のようになっていたケースが綺麗になってくると、同様に劣化していたシリンダーヘッドのカムスプロケット部の丸いカバーもやっぱり美化したくなってきました。「こういう丸いカバー、カブ系のエンジンでもよく磨いていたっけな~」なんて回想もしつつ。
原産国のタイの工場が悪いとも思えないし、もはや塩害を疑うアルミの白サビ。いったんサンドペーパーで磨き落として第一次美化までやってみたものの思いのほか腐食が深いようでした。この際なので、上側のブローバイの出口みたいなパイプ接続部付近はワイヤーブラシでサビを落として、ここも耐熱塗装しておくことにしました。
シリンダーヘッド付近で目立ってちょうどいいので、ここには耐熱のチタン色を塗装。
しつこく脱脂したおかげで塗料もよく乗り、まあまあいい感じにできました。
エンジン上部の塗装から数時間の仮乾燥?ののち、再度、自走で加熱乾燥。信号待ちで塗料の匂いが下から上がってくるのを何度か味わい、じんわりと充実感を感じて帰宅。
プロの焼き付け塗装からはかけ離れたアマチュア作業ぶりですが、本人的には嬉しいものです。
■KLXを横から見ると目立つ、シリンダーヘッドの丸いカバー。化石ですよ、化石。カスタムとかそういう次元ではなく、ここだけ見たら放置車両以下でしょう。
■あまりの酷さに、0リングその他は注文しておいて、外したカバーをペーパーがけ。最初は150番くらいで軽くかけて、240番~400番くらいまででこのくらいになりました。
■まだ突っ込んだ研磨までせず、いったんエンジンに付けて、何度か仕事に使用していました。でも、最初の化石状態よりはまだヨロシイかと。
■しばらくして、削りすぎない程度に再度研磨と脱脂洗浄して耐熱のチタンカラーへ。オフロード車でバフがけ仕様まで追い込むのも、トライアル車だったら良いかもしれませんが、この色合いは気に入ってます。
樹脂パーツのライムグリーン化を計画! まずはフェンダーから
こうした塗装の合間、車体色の白が飾り気に欠けるのでライムグリーンの車体に変身させるべく、とうとう第一弾としてフェンダーをライムグリーンに交換。おりしもこの作業をしていたのはコロナ禍の真っ盛り、イベントなどがことごとく中止となったりして、お財布に余裕ナシ。なるべくお金をかけず、それでも機能の向上と美化を進めるべく工夫を凝らす日が続きました。
生産中止になって何年か経っているとはいえ、自分の中では現行機種とほとんど変わらないバイク。できるなら、遠目(もしくは夜目)で見たら新車のように見える程度にならないものかな?って。
いざフェンダーを取り付けてみて、ライムグリーンの新品になると、欲が出て、タンク横のシュラウドとかライトカバーもライムグリーンにしたほうが「パッと見、新車」企画にちょうどいいのではなかろうか、と思いはじめました。大型のツアラーやスーパースポーツと比較してみると、パーツの価格が低めなのは経済的に助かるというもの。
樹脂製の外装までは奮発して衣替えしてもいいかな!?と画策しました。
■意を決して新品のフェンダーを注文。自転車レースの撮影等で林道を走る際、目立つ色の方が撮られる側=参加選手からの被視認性が良く、その方が安全につながりそうなのですよ。別に普段は目立たなくてもいいんだけど、上記の理由は疎かにできないので。
■左右のシュラウドの取り付け兼、電装類の保持ステーですね。シュラウド付きの状態で見えてたところは筆補修を軽くしたけど、左を外してみればこりゃヒドイ。
■ホーンの付いている右側も、この通り。溶接部分の隙間とかにもサビが侵食してますね。
■こういう細いパイプでできた鉄部品は、放っておくとサビの侵食で強度も落ちそうです。フレームから外してできるだけサビを落として塗り直しましょう。
■電装部品を保持するゴム部品の差し込み部分のバリやサビも研ぎ落として、ゴム部品が切れにくくするべく機械と手作業でゴシゴシ。
■左右のステーの補修が終わりました。細部のサビが消滅すると清々しい気分になります。
■ステーの塗料が乾燥するまでの間、電装部品の樹脂や配線の被覆をポリメイトでお掃除。被覆の破れや配線の具合もここで改めてチェックしておきました。
■ステーがちゃんとシルバーになったしイグニッションコイル等も綺麗になりました。新しいフェンダーも画面に入れて、ちょっとした記念写真です。
■左側もこの通り。塗装しなおしたカムスプロケットのカバーが目立ちます。
レポート&撮影●小見哲彦
○プロフィール
小見哲彦
無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーとしてバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を2021年より依頼されている。
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