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レトロ系デザインのドゥカティという独特な存在感「スクランブラーシリーズ」
ドゥカティ……バイク乗りならきっと一度はその響きに憧れたことがあるはず。
言わずもがな、歴史あるイタリアのバイクメーカーで、MotoGPやスーパーバイク世界選手権などレースの世界で大活躍。市販車にしてもそれを裏付けるようにスポーティなモデルが多いのですが、反面、「ハードルが高そうで自分には縁がないかも」と感じる人も少なくないのではないでしょうか。
ですが、ドゥカティには「スクランブラーシリーズ」という大穴があります。日常的に乗れるフレンドリーさがありながら、ドゥカティらしい個性も楽しめるモデルで、価格も129万900円〜とフレンドリー。嬉しい。
そもそも、このスクランブラーはドゥカティの中でもちょっと独特な存在と言えるかもしれません。モチーフとなっているのは、ドゥカティが1960〜70年代に販売したスクランブラーで、昨今でいうところのネオレトロ系に当たるでしょうか。つまり、カジュアル路線なのです。
今回はシリーズ中で最もベーシックな「スクランブラー・アイコン」に触れてみましたが、何というかTシャツ&スニーカーみたいな気軽さがありました。
「400ccみたいな感覚」スクランブラー・アイコンの軽さに驚く
まず、またがって引き起こす……で驚きます。とにかく軽くて、800ccのバイクとは思えないほど。 それにL型2気筒エンジンの恩恵もあって、車体が細身=足つきも悪くない。なんせ車体が軽いので、多少傾いても大丈夫な安心感もあって、まるで400ccクラスのような感覚。
この軽さ、スクランブラーシリーズの特徴としてドゥカティ自身かなりこだわっているポイントと思われます。
というのも、現在販売されているスクランブラーシリーズは2023年にフルモデルチェンジを行い第2世代となったのですが、エンジン、フレーム、スイングアームを軽量化。トータルで従来型より4kg軽くなり、アイコンの車重は176kg(燃料抜き)。ガソリンを満タンにしたとしても185kgくらいでしょうから、数字で見ても800cc前後のバイクの中では群を抜いて軽いのは間違いありません。
ドゥカティ伝統の空冷Lツインエンジンを搭載
さて、エンジンをスタートさせるとドゥカティの血統が顔を出し、アイドリングでも「中でガソリンがメッチャ爆発しています」と言わんばかりの鼓動感。
低〜中回転はその鼓動感が濃厚なのですが(反面、極低回転域だとギクシャクしてしまう面もあるので少々扱いに注意)、4000rpmを越えたあたりから振動の粒が収束していく。そして、高回転域では滑らかになると同時にパワーが上乗せされていくという二面性があります。
最高出力は73馬力なので速すぎず(とんでもない速度に達しないという意味で)、ツーリングなど日常的な領域で濃いエンジンフィーリングを楽しめるのも大きな魅力です。
とはいえ一気にスロットルを開けるとすると身体がちょっと後ろに持っていかれるくらいの勢いはあるので、全開加速時はニーグリップをしっかり目にしたいところ。
また「スポーツ」「ロード」の2種のライディングモードがあり、エンジン出力特性とトラクションコントロールの作動レベルが変化します。個人的には一般道をツーリングするなら、出力特性穏やかめの「ロード」がいい感じ。
スクランブラーシリーズのエンジンは、長年ドゥカティが育ててきたデスモドロミックの空冷L型2気筒。現在ドゥカティのバイクで空冷エンジンとなるのはこのスクランブラーシリーズだけで、きめ細かく調律された最新水冷エンジンとは違ったワイルドなフィーリングも同車の個性だと思います。
18インチのフロントホイールを採用していることもあって、ハンドリングは俊敏という感じではなく、ナチュラル、あるいは、わずかに穏やか寄りと感じられました。とはいっても車体が非常に軽いので、全体として軽快な走りが気持ちいい。まあ、この元気がいいエンジンでズバズバ曲がっていくキャラクターだったとしたら自分のような一般ライダーは気後れしてしまうので、絶妙なバランスだと思った次第です。
ちなみに「スクランブラー」らしくブロックパターン風のタイヤを履いていますが、普通にツーリングペースで走っている限り、それを意識するような場面は全くありませんでした。
スクランブラー・アイコンは日常で刺激的な走りが楽しめる!
オフロード車のようにハンドルが幅広なの点はオーソドックスなネイキッドモデルと違う点ですが(オフロード車の経験が少ないので、乗り始めはちょっと戸惑いました)、乗車姿勢はアップライトなもので窮屈感も無し。シートは前後長があるので、前寄りに座るとワイドなハンドルに応じて肘が開いていき、攻めた雰囲気に。ちょい後ろ寄りだとゆったりツーリング向け、とポジションの自由度も高いです。
冒頭で「Tシャツ&スニーカーのような」と言いましたが、陸上競技場を走るのではなく、散歩(ツーリング)やランニング(ちょっとスポーツ走行)で軽く汗をかくのが気持ちいい──スクランブラー・アイコンの走りはまさにそうした感覚だったのです。
こんなフレンドリーさを持ったスクランブラー・アイコン、初めての大型バイクに選ぶというのもアリだと思います。
ドゥカティ スクランブラー・アイコン主要諸元
[エンジン・性能]
種類:空冷4ストロークL型2気筒OHC2バルブ ボア×ストローク:88mm×66mm 総排気量:803cc 最高出力:53.6kW(73ps)/8250rpm 最大トルク:65.2Nm(6.7kgm)/7000rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:2103mm 全幅:721mm(ミラー除く) 全高:1150mm(ミラー除く) ホイールベース:1449mm シート高:795mm 車両重量:176kg(燃料抜き) タイヤサイズ:F110/80R18 R180/55R17 燃料タンク容量:14.5L
[車体色]
スリリングブラック、62イエロー、ドゥカティレッド
[価格]
129万9000円(スリリングブラック)、133万3000円(62イエロー、ドゥカティレッド)
ドゥカティ スクランブラー・アイコンの機能&特徴
ドゥカティの800ccスクランブラーは、アイコン以外に4タイプあり
スクランブラー・アイコンダーク
車体全体を精悍なマットブラック仕上げとしたモデルで、アイコンに比べショートなリヤフェンダーを装備。2025年型が発表され、価格は119万9000円。
スクランブラー・フルスロットル
アメリカのフラットトラックレースをイメージしたモデルで、サイドカバーはゼッケンプレート状のデザインとなっている。そこに描かれる「62」という数字は、ドゥカティの初代スクランブラーがデビューした年のこと。テルミニョーニ製サイレンサー、クイックシフター、アンダーガードが標準装備となる。2025年型が発表され、価格は153万8000円。
スクランブラー・ナイトシフト
カフェレーサーをイメージしたモデルで、ワイヤースポークホイール、バーエンドミラー、クラシカルなデザインのシートが特徴。サイドカバーもフルスロットル同様のゼッケンプレート風デザインとなる。価格は153万8000円。
スクランブラー・10°アニベルサリオ リゾマエディション
現代のドゥカティ スクランブラーシリーズが誕生して10周年となったのを記念した、世界限定500台のモデル。イタリアのパーツメーカー「リゾマ」とのコラボレーションで、ホワイトを基調としたボディに「メタルローズ」カラーのアルミ削り出しパーツをあしらう。バーエンドミラーやメーターバイザーも装備し、エレガントなカフェレーサーというような趣きを感じさせる。価格は180万4000円。
レポート●モーサイ編集部・上野 写真●モーサイ編集部/ドゥカティ