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VWビートルの1600ccエンジンを積んだ巨大バイク「アマゾネス」を覚えているか?

アマゾネスのエンジンはVWそのままという。4サイクルOHV水平対向4気筒で、強制空冷式。総排気量は1584ccで、市販型のバイクとしては、現在世界最大である。
キャブレターはソレックス32mmの加速ポンプ付きが、左右に1個ずつ付けられている。その上に円筒形のエアクリーナーが、煙突のように突き立てられているのが迫力である。点火方式はバッテリーで、四輪車そのままのディストリビューターがクランクケース前方右の上部に付けられている。そのとなりにオイルクーラーが無造作に突っ立っている。

クランクシャフト前端にはプーリーが付けられ、これはその上部にある強制空冷の冷却ファンを回す。冷却ファンの内側にあるジェネレーターも同時に駆動されるわけだ。クランクシャフト後端にはフライホイール、そして乾式単板式クラッチが付けられている。その後方に前進4段フルシンクロ、後進1段の変速機がある。冷却ファンの位置を除くと、ほとんど四輪そのままだ。

後輪駆動はチェーン。エンジン側スプロケット23Tに対し、後輪側は21Tと、一般のモーターサイクルとは逆になっているのが面白い。そしてシリンダー周りとキャブレターを除く部分は、すべて分厚いグラスファイバー製のカバーで厳重に覆われている。そう。シリンダーがカバーの外に突き出しているので、強制空冷式とはいっても、じつは空冷式なのだ。
冷却ファンはクランクケース上に突っ立っているオイルクーラーに風を送るためのもの。本当はカバーなどなくてもよかったのだが、VWに限らず四輪のエンジンは、それ自体が鑑賞の対象になるようにはデザインされていない。あまりカッコのよくないクランクケースまわりをカバーしたのも、ムリのない話である。

アマゾネスの造りはすべてが手造りのようだ。たとえば、フロントフォークにしても、そのアッパーとアンダーのブラケット(三つ叉)は15~16mmの鉄板を切り出し、ヤスリで仕上げた跡がある。
マフラーのプロテクターも、いかにもハンマーの手だたきで造形したように表面はデコボコしている。チェーンケースもそうだし、シートステーも、みなハンマーのお世話になっているようだ。フートボードには砂型を使ったアルミ鋳造品で、精密とはいえないコンドルのマークが浮き出している。

全体的に、このアマゾネスの仕上げは荒っぽく、個々の部品をとってみても、おせじにも高級品とはいいがたい。しかし、そこには限られた生産設備で、なんとか世界一のバイクを造ろうとした製作者の熱意が濃厚に感じられる。コンピューターナイズされた現在の日本製バイクにはない、機械にぬくもりを感じるようなアマゾネスであった。


いかがだっただろうか? 限られた事情のなか、ほぼ手造りのような工程で製造されていた「世界最大排気量」のバイク──。
その独特な世界観に惹かれ、現在も熱心なファンがいるのもうなずける話である。

試乗車の「スポーツ」と同時に輸入された「ツーリスモ」の実車。当時の新車価格は298万円で、サイドバッグにリヤキャリヤ、スクリーンを装備する。
年式によって装備や形状が異なるが、1981年の輸入開始時の新車価格は293万円〜だった。

アマゾネス スーパースポーツ主要諸元(諸元は1986年モデルのもの)

[エンジン・性能]
種類:空冷4ストローク水平対向4気筒OHV2バルブ ボア・ストローク:85.5mm×69mm 総排気量:1584cc 最高出力:56ps/4750rpm 最大トルク:10.8kgm/3000rpm 変速機:4段リターン
[寸法・重量]
全長:2240 全幅:1050 全高:1360 ホイールベース:1690 シート高──(各mm) タイヤサイズ:F5.00-16 R5.00-16 車両重量:374kg 燃料タンク容量:32L

レポート●高野栄一/大光明克征(モーターサイクリスト1981年11月号記事) 写真●八重洲出版 編集●上野茂岐

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