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VWビートルの1600ccエンジンを積んだ巨大バイク「アマゾネス」を覚えているか?

当時世界最大排気量のバイクだった、ブラジル生まれのアマゾネス

ブラジルで1978年から生産を開始したアマゾネス。
その原型となったのは1970年代初頭にふたりのメカニック、 Luiz Antonio Gomide(ルイス・アントニオ・ゴミデ)とJosé Carlos Biston(ホセ・カルロス・ビストン)が製作した、ハーレーとインディアンのフレームを利用して作成したフレームにVWビートル用1493cc空冷水平対向4気筒エンジンを搭載したチョッパー風モデル、モトフォルクス(Motovolks)である。

その後、ふたりはAME(Amazonas Motosetas Especiais Ltda)を起業して「アマゾネス」の量産化に乗り出す。
なぜ四輪用エンジンを使ったのか?
なぜフレームを完全自作としなかったのか?
そこには、当時のブラジルならではの事情があった。
自国産業の保護と育成のため、二輪車は完成車の輸入が事実上禁止されていた一方で、警察や軍隊が使っていた古いハーレーは保守部品の不足からどんどん廃車されていた。
これに代わる存在として、モトフォルクスに可能性を見出したのである。

エンジンだけでなく、四輪用パーツを多数用いて作られたアマゾネス

村山モータースにより1981年9月に日本上陸を果たしたアマゾネス。直6エンジンのカワサキZ1300(1286cc)や、当時のハーレーダビッドソン(1340cc)を上回る「世界最大のモンスターバイク」として新聞やテレビなどでも紹介され、日本でも一躍有名になった。

量産版のアマゾネスは排気量が1584ccとなり、ブレーキキャリパーはVW、ディスクローターはフォード、ヘッドライトはメルセデス・ベンツ608Dトラック、メーターはプーマ(VWのコンポーネンツを流用したスポーツカー)など、その大半がブラジル生産の四輪用パーツで構成されている。
生産年度により変わるようだが、スポーツ、ツーリング、軍・警察用の3タイプが用意されて、基本的な構造に大きな変化はないまま1988年までアマゾネスは生産された。

総生産台数は約450台と言われる。
アメリカやヨーロッパにも輸出されたほか、四輪用パーツを多数使用した甲斐あって「丈夫で信頼性も高い」という評価を得て、100台以上が軍・警察用に使われている。
日本には約50台ほど輸入されたという。

当時発売元だった村山モータース(輸入元は日航商事)のカタログに記載されたラインアップ。左からsuperEsporte(英語でいうところのスーパースポーツ)、Turismo(同じくツーリング)、Esporte(同じくスポーツ)という3モデルがあった。

1981年、日本に上陸した当時のアマゾネス試乗記をプレイバック

そんな貴重な1台に試乗し、モーターサイクリスト1981年11月号では記事展開を行っている。以下、当時の試乗記を紹介しよう。


試乗レポートは当時のモーターサイクリスト誌のメインテスターだった大光明克征さん(ただし、写真に映っているライダーはカメラマンの和智英樹さん)。

バイクとはバランスで乗るもの、なんていう常識は、どっかへ飛んでいきそう。なんといっても乾燥重量370kgのアマゾネスだ。写真撮影の位置決めにも、ちょっと押しただけではビクともしない。これでもヒトより体力があるつもりの私だが、本当に力いっぱい数秒間押しつづけて初めてソロリと動き出す始末。

あせり気味の私に「エンジンかけりゃ楽なのに」とは、村山モータースの川崎氏。なるほど、そのためのエンジンだしバックギヤだった。ところが、そのエンジン始動、ハンドル右のスイッチホルダーは手のひらほどもある大きさ。そこに付いているセルボタンには、スロットルグリップを握ったままでは指が届かない。右手でグリップを握り、左手でセルボタンを押すのだ。エンジンの始動性は悪くなかった。

全幅は1050mmと超ワイド。エンジンのシリンダーヘッド両端の距離も770mmある。ハンドルに付くレバーとレバーホルダーも巨大かつ独特な造形で、手の小さな人だと握ることも難しい。

ズ太く大きい排気音だが、四輪のVWより澄んだ落ち着きのある感じ。アイドリング500rpmちょいでじつに安定してのどかに回っている。スロットルを少しあおると、車体はトルク反動でグラリと右へ傾く。アマゾネスを巨大な生物のように感じる一瞬だ。

で、クラッチレバーは大きくて重かった。ギリギリ……という感じで握りしめ、シーソー式のチェンジペダルを前方へ踏んで1速へ入れる。クラッチレバーをそろりと離していく。低速トルクは恐ろしいほどであり、アイドリングの少し上(1000rpmぐらいか)でもスムーズに、アマゾネスの巨体は動き出す。

変速機はVWそのままで、複雑なリンクを介してシフトパターンを4段リターン式にしている。このリンクのためと、フルシンクロとはいっても新車でなじんでいず、チェンジのタッチはかなり堅い。
2速へ入れるにはペダルをカカトで2回踏み下げる。ちょっと面倒なやり方である。3速、4速とギヤを送り込む。独特の加速感は、並列4気筒とも、同様のエンジン形式のホンダGL1100ともまるで違う。大排気量ならではの豪快さ、大らかさがある。

トップギヤ(4速)で40~50km/hあたりからスロットルを開けていくと、ズズズーッという感じで加速が始まり、決して速くは思えないのにスピードメーターはすぐに80~100km/hへハネ上がる。

VWビートル用の1584cc強制空冷水平対向4気筒OHVエンジン。冷却ファン用のプーリーが見えるが、前輪のすぐ後ろがこの状態ではさすがに無理があったようで、後のモデルではカバーで覆い隠されている。キャブレターはソレックス32mmの加速ポンプ付き。

タコメーターは電気式で、反応は鋭い。トップギヤでのエンジン回転数と車速の関係は、1000rpmで38km/hくらい。2000rpmで80km/hぐらいと、誤差があるのでハッキリとはしないが、最高出力回転の6000rpmまでトップギヤで回し上げることができれば、最高速度230km/h!?
トップギヤはかなりハイギヤードであり、実際には空気抵抗が大きくて、そんなに出るハズもない。最高出力はわずか60psなのだ。最高速度は180km/hも出るかどうか……。

200km/hスケールの速度計と6000rpmスケールの回転計は、同じブラジル製で同系の強制空冷水平対向4気筒エンジンを搭載する四輪のスポーツカー「プーマ」にも使われているもの。文字盤が斜めっているのはご愛敬。

しかし、アマゾネスのいい味は、100~120km/h、2000~3000rpm前後のクルージングにある。静かで落ち着きのある排気音で、マンモスタンカーのようにゆったりと巡行する感じがなんともいえないのだ。
そして、トップギヤで500rpm、22km/hでもシズシズと走れるフレキシビリティは、四輪エンジンならではの強みともいえるだろう。

ライディングポジションは、身長2m近い人でもゆったりした感じを味わえるはずだ。大きく手前に湾曲したハンドルは、幅が885mmもあり、両端が下がった形状。太いグリップを握り、フートボードに足をのせれば、口笛のひとつも出てこようというもの。ただし、これは道路が空いていればの話だ。

アマゾネスを走らせるには、四輪車と同程度の広いスペースが必要なのだ。ほかのバイクのように四輪の間をスイスイ抜けていくという芸はできそうにないし、する勇気もない。おまけに、ブレーキが頼りにならないときている。フロントブレーキは、小径のダブルディスクだが、ブレーキレバーに力を入れにくいのもひとつの理由だろう。

しかし、このアマゾネスが箱詰めで村山モータースへ届いたとき、エンジンから車体すべてが、まるでオイル漬けだったという。「オイル落としがえらい苦労でね、オイルなしでサビたって、それを落とすほうがずっとラクだヨ」と川崎氏がボヤくほどだ。そのオイル分が、ブレーキまわりにわずかに残っていたことも考えられる。

シングルディスクのリヤブレーキは、まあまあの効き味だった。ただブレーキペダルはフートボードの右横に飛び出しており、足首をよじって踏まねばならないのが不便。シート高は810mmと、数字の上では低いといえないのだが、身長165cmの私でも、足着き性はよかった。これはシート幅が割と狭いことや、シート自体が柔らかいせいもある。

ボードからはみ出すように「生えている」ブレーキペダル。

アマゾネスはその構造上、超低重心であり、この足着き性のよさと相まって、転倒しにくいバイクのように感じられた。タイヤは前後とも5.00-16で、AMAZONASのネーム入り。空気圧2kg/cm2くらいでは、かなりの変形が見られた。しかし、操縦性は思ったより素直だった。コーナーで車体を倒し込むときもさほど力はいらない。むしろ低速コーナーではフラリと車体が傾きすぎることがあった。ステアリングヘッドの締めすぎではない感じ。タイヤの空気圧を3kg/cm2ぐらいに高めれば直ってしまうのかもしれない。

リヤクッションは、チラリと見るとスイングアーム式のようだが、じつはいまでは珍しいプランジャータイプ。1950年代に多く使われた方式だ。
クッションユニットはかなり長いもので、上部のピボットはシートのすぐ下だ。しかし、90kgは楽にありそうな村山モータースの川崎氏が乗って、ドンドンと尻でシートをたたいても、リヤクッションはビクリとも沈まない。まるでリジッドのような堅さには恐れいった。

フォークはインナーチューブ径が43mmほどあり、近年のスーパースポーツと同じくらいの太さ。しかし、車重を考えると少々心許ないかも……。スプリングがむき出しになっているが、後年のモデルではカバーで覆われている。
リヤサスペンションはBMWやインディアン、草創期の日本車にも多く使われたプランジャー式。超過荷重に耐えるようにしたのか、見た目の長さとは裏腹に1人乗りではほとんど作動しないほどの硬さ。

フロントフォークは、インナーチューブ径が43mmほどもある太いもの。長いスプリングをむき出しに付けている点は、インナースプリング全盛の現代ではむしろ新鮮だ。
このフロントフォークの作動性はよかった。舗装路面では、太いタイヤがショックを吸収してくれるためか、リヤクッションの堅さは気にならず快適だ。

ところが、舗装のされていない駐車場に入ったときは、リヤホイールがバタバタと飛び上がる。で、あとで見るとクッションユニットは、わずかだが作動した形跡があった。つまり、フレームに過大な衝撃がかかったとき、フレームの損傷を防ぐための安全弁がこのリヤクッションの役割なのだ。

次ページ:四輪用エンジンを転用したことによる、苦労と工夫も感じられる

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