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電動のセローで旅する少女ふたり、舞台は秋葉原や東京湾アクアラインへ
誰もいない朽ち果てた近未来の日本を少女ふたりがバイクでツーリングする漫画、『終末ツーリング』のコミックス第2巻が2021年9月27日にKADOKAWAから発売されます。
物語の主人公は女子高生ふうなジャンパースカートに、BOAシステムのライディングシューズでヤマハ・セロー225に乗るヨーコと、そのタンデムシートに収まり、うさみみパーカをまとうアイリのふたり。
彼女たちは電動仕様に改造されたセローで関東各地を旅しますが、作中でふたりが訪ねる場所はどこもかしこも荒れ果てています。
食料を調達し、バイクを充電し、出会いのよろこびや、降りかかるトラブルを乗り越え、ツーリングしていくという物語です。
誰もいない荒れ果てた終末世界──と文字を並べてしまうとシリアスな話を思い浮かべる人がいるかもしれませんが、主人公たちは悲観的雰囲気を感じさせず、そんな世界でも見るもの、触るものに喜んでいるような空気が伝わってきます。
舞台が終末世界になっていますが、今ふうに言えば「スライス・オブ・ライフ」な話ともいえます。

作者のさいとー栄さんはセローで日本各地をツーリングした経験がある方で、バイクの描写はもちろん、ツーリングで起こるありがちなトラブルなどをライダー視点からていねいに描いているので、バイクに乗る方なら自然と主人公たちの世界に共感できるでしょう。
2021年4月に刊行されたコミックス第1巻は箱根から旅が始まり、横浜、横須賀、お台場などを訪ねたふたりが最後に生存者の手がかりを見つけたところまでが描かれましたが、第2巻はそれをたどって東京・秋葉原に行き、その後は木更津を抜け、東京湾アクアラインの海ほたるパーキングエリアに向かう話が収録されています。
表紙は動物が闊歩するJR秋葉原駅電気街口を行くセロー。
ラジオ会館地下の銀座ライオンや上のフロアの海洋堂、たくさんのサイン入りチェキがあったアイドルグッズショップがどうなってしまったのか? 筆者としてはそんなことが気になる表紙でした。そうした妄想をめぐらせてしまうのも「終末世界ならでは」です。
クラッチ付きの電動バイクは……実は存在する
ところで表紙に描かれているセローは電動仕様ですが、ヨーコの左手元にはクラッチレバーが見えます。
2020年末、日本でリリースされたハーレーダビッドソン・ライブワイヤーはクラッチも変速機構もない電動バイクでした。
2011年の東京モーターショーでホンダが公開したRC-Eや、2019年に熊本でデモ走行させたCRエレクトリックもクラッチレバーがありませんでしたし、その発展型であるE.REXも同様です。
あ、ちなみに無限がマン島TTで走らせた「神電」に左レバーがついていたシーズンもありましたが、あれはリヤブレーキになっていました。


しかし、2018年の東京モーターサイクルショーでヤマハが展示した電動トライアルマシン「TY-E」は、エンジン車同様の油圧式湿式多板のメカニカルクラッチがついていました。
TY-Eの開発陣によるとトライアルのような瞬発力が必要な競技ではクラッチがあったほうが、扱いやすく、実用的だということでしたが、終末ツーリングのヨーコも物語内でアクションライドをこなすのは、もしかしたらクラッチがあるからこそなのかも。
……というのはちょっと深読みしすぎでしょうか(笑)



書名:『終末ツーリング』
著者:さいとー栄
●第2巻発売日:2021年9月27日(電子書籍も同日発売)
●判型:B6版
●ページ数:194
●定価:737円(本体670円+税)
●発行:KADOKAWA
●月刊コミック誌「電撃マオウ」で連載中/ WEBサイト「コミックウォーカー」にて無料配信中
レポート●飯田康博 写真●KADOKAWA/ヤマハ/飯田康博 編集●上野茂岐
■KADOKAWA『終末ツーリング』第2巻
https://www.kadokawa.co.jp/product/322106000045/
■webコミック・コミックウォーカー内『終末ツーリング』ページ
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_AM01201885010000_68/