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無限の電動モトクロッサー「E.REX」が本格実走!! テストライダーと開発陣に最新状況を聞いた

マン島の神電に続く、無限の「電動レーシングバイク」

6月5〜6日、スポーツランドSUGOインターナショナルモトクロスコースにて、夢の電動モトクロッサー、無限「E.REX」のデモンストレーションが実施された。
全日本モトクロスの会場でEVが走るのは、2年前のHSR九州以来。そのときのCRエレクトリックは、ホンダとM-TEC(無限)の共同開発車だったが、コラボレーションが終了した現在は、M-TECが単独でE.REXの開発を続けている。
神電プロジェクト(2012〜2019年マン島TT-ZEROで8戦中6連覇)に一区切りを付けた無限だが、実戦で培ったEVテクノロジーによってE.REXの進化が加速した。

東京モーターサイクルショー(2017〜2019年)に展示されたE.REXは、いずれも恐竜のティラノサウルスをモチーフとしたデザインだった。スポーツランドSUGOで披露されたマシンはより現実的なモトクロッサーらしい外装となり、四輪スーパーフォーミュラのチーム無限車を模したグラフィックが採用されている。

E.REXのデモランは、テストライダーを務める増田一将氏によって、土日の昼休みに行われた。キュルキュルというモーター音、駆動系と制動系のメカノイズしか聞こえない。時折タイヤと地面がこすれる音まで伝わってくるほどの、正にサイレントモトクロッサーだ。30台が一斉にスタートしたら、少しは賑やかになるんじゃないかと、余計な心配事が増えたような気がした。

土曜の走行中にモーターが止まるハプニングがあったが、これはフェイルセーフ機能が働いたため。後輪とスイングアームの間に大きな土の塊が詰まり、異常な負荷の変動を検知した結果のシャットダウンだったと推測される。

電動モトクロッサー「E.REX」のパフォーマンスとは?

日曜のセッションではフルコースを走行したが、増田氏はSUGO名物のヤマケンジャンプ(23m)、ヤマケンビッグジャンプ(27m)、KYBジャンプなどをことごとくクリアし、EVの動力性能を証明してみせた。インプレッションを聞いてみよう。

「2年前に乗ったCRエレクトリックと比べて、より出力が上がってパワフルになっています。今回のセッティングは、コースコンディションに合わせて土曜はやや抑えめ、日曜はフルパワーで走ったんですが、リニアでレスポンスがいい特性は共通です。撒水でウェットになったセクションもあったので、無理せずに走りました。

車体的にはCRFに乗るのとほぼ同じで、違和感は全くありません。数値的にはバッテリーの重さが結構あるそうなんですが、重さを意識するのは低速コーナーだけですね。乗り方としては、右手のコントロールが全て。スタートで全開にしたらウイリーしてめくれちゃうので、パーシャルでトラクションを感じながらゆっくり開けます。もともとクラッチを使わない自分には、向いているマシンだと思います。

スクーターのオートマみたいな無段階なので、レシオの変化はあまり感じません。それでも途中からグッと伸びるところがあって、かなり奥に設定してあるんですが、右手は結構シビアな操作が要求されます。戻したときの感じは、エンブレとニュートラルの中間と言えばいいでしょうか。
このタイプになってから3回ほどテストで乗りましたが、現状では中速からの伸びが良すぎるので、今後はモトクロスのあらゆるシーンを想定しながら、もっと扱いやすさを追求していきたいですね」

増田一将氏●1980年2月22日生まれ、東京都出身。国際A級ライダー、1998年全日本モトクロス125ccチャンピオン。元HRC所属。現在はモトクロス普及活動を続けながら、E.REXの開発ライダーを兼任。

M-TEC(無限)開発スタッフに聞く、「E.REX」が目指すものとは?

E.REXの開発をリードしてきた、宮田明広氏(株式会社M-TEC・執行役員・モータースポーツ事業部・部長)はこう語る。

M-TEC(無限)モータースポーツ事業部・部長の宮田明広氏(右から2番目)。マン島TT-ZERO・神電の開発責任者&チーム監督も務めた。

「SUGOの大坂を我々の車両が駆け上がるシーンは、実に感動的でした。大勢のみなさんの前で、E.REXを走らせる機会をいただいたことに感謝しています。神電プロジェクトのマン島参戦は休止しましたが、電動パワートレインの開発を継続していることをアナウンスするため、どこかでE.REXのデモランを披露したいと考えていました。その場が今回のSUGOになったのは、たまたま日程的にタイミングが良かっただけです。今年に入ってようやく走行テストができたものですから、間に合ったのがここだったというわけです。今後も機会をいただけるのであれば、我々としても有効に活用したいと思います。

神電とE.REXの開発は同時ではないものの、オーバーラップしているところもありますし、両方に携わっているスタッフもいます。今はモトクロッサーについて勉強中で、コンパクトに仕上げる難しさと向き合いながら開発を進めています。モトクロスにEV時代がいつ到来するのかわかりませんが、我々としては今から開発を進めておき、いつかお役に立ちたいと思っています。電動車は重いというイメージがありますが、軽量化がキーポイントになるでしょう。

E.REXのスペックにつきましては、開発中ですので差し控えさせていただきたい。『満タン』で何分ぐらい走れるか……という質問をされますが、その辺は出力によっても変わりますし、今は航続距離などは意識せずに、電動モトクロッサーの基本性能はどうあるべきかということを検証中なので、長距離走行テストなどは実施していません。また、このシルエットからすると、市販間近と思われがちですが、弊社としてはその計画はありません。

レッドブル・ストレートリズムへの出場について、これもよく言われることですが、昨今の諸事情により海外への渡航が制約を受けていますので、タイミングが伴わないと難しいかなというのが現状です。ただ参戦計画というレベルではなく、目標として出てみたいという気持ちはあります」

赤いカバーの中に減速機がある。無限のロゴがモーター軸、スイングアームピボットの前がドライブシャフトの位置にあたる。
燃料/エンジンに替わる、バッテリー/インバーター/モーター。発熱に対応するため水冷化されている。
ハンドルバーパッドに埋め込まれた、バッテリー残量計と警告灯らしきランプ。
右グリップにあるキルスイッチ風のボタンは、走行モードをオンにするスイッチか?(主電源は別にあるという)。
左グリップのボタンは、出力をコントロールするためのスイッチと思われる。

今はモトクロッサーについて勉強中……という謙虚なコメントに、筆者は身震いした。
無限と言えば、1970〜1980年代に先進的な水冷エンジン、アルミやCFRPを用いた車体などでモトクロス界を震撼させたコンストラクターだ。今は動力性能の向上に注力するため、市販モトクロッサーの車体をベースにしているが、このままで終わるわけがない。
神電後期型にドライブシャフトとピボットを前後逆転配置したスイングアームが採用されたように、E.REXのニューバージョンは度肝を抜く車体構成で我々の前に現れるはずだ。

レポート&写真●浦島信太郎 編集●上野茂岐

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