斬新で革新的なデザインのバイクを世に生み出した
’80年のケルンショーで発表され、翌’81年から市販が始まったGSX1100Sカタナの魅力と言えば、だれもが真っ先に思い出すのは、抜き身の日本刀をイメージした流麗なデザインだろう。何と言っても当時の日本車は、ほとんどが今で言うネイキッドだったのだから。とはいえ、同時代のライバル勢をするエンジンパワーと高速安定性能、スズキならではの質実剛健なエンジンとシャシーを抜きにして、このモデルの本質は語れないのである。
生産期間が非常に長かったため(’81〜00年)、ともすると忘れてしまいそうになるのだが、デビュー当初のGSX1100Sカタナは、スズキを代表するフラッグシップだった。111psの最高出力は同時代の日本車でナンバー1だったし、海外で行われたテストでは、当時の市販車で最速となる237㎞/hをマーク。そしてそういった高性能車は、普通は任期を終えたら速やかに退陣するのだけれど……。’84年にGSX1150E/EF/ES(114ps。後期型は124ps)、’86年に油冷GSX–R1100(130ps)が登場しようとも、カタナはラインアップに名を残し続けた。
その一番の理由は、やっぱりドイツのターゲットデザインが手がけたスタイリングが秀逸、と言うか、突出していたからだろう。デビュー時に斬新で革新的と呼ばれたカタナのスタイリングは、誕生から37年が経過した現在の目で見ても、依然として斬新で革新的なのだから。もっとも、カタナのスタイリングには昔も今も賛否両論があって、’80年のケルンショーにおける観客の評価も両極端だったのだが、逆に言うなら、否定派も意見を主張したくなるほど、カタナは絶大なインパクトを備えていたのだ。

低くセットされたセパレートハンドルはカタナの特徴のひとつだが、’82/83年の日本で販売された750㏄仕様は、大アップハンドルを採用していた。角型バックミラーやフライスクリーン、コンビネーションメーターなどは、いずれもカタナための専用開発品。

スピード/タコメーターは’80年ころのバイクとしては珍しいコンビネーション式で、ユニット下部には各種警告灯が並ぶ。

容量19ℓの燃料タンクは、フロントカウル/サイドカバー/シートとの一体感を強調したデザイン。過去に例がない形状だったため、量産時にはプレス技術の見直しが必要になった。

ツートーンカラーのシートは、当初はバックスキン調が標準だったが、後にオーソドックスなレザーが主力となった。

サイドカバーのデザインも相当に個性的。左側にはチョーク用ダイヤルとオプション電源用スイッチ×2を配置する。

鋼管ダブルクレードルフレームとDOHC4バルブ並列4気筒エンジンは、’80年に登場したGSX1100Eがベースだが、カタナに転用するにあたって各部を刷新。なお1100のクランクシャフトがローラーベアリング支持の組み立て式だったのに対して、750はプレーンメタル支持の一体鍛造式を導入していた。

キャブレターは負圧式のBS34。ただし極初期のモデルには、強制開閉式のVM32SSを装備する個体もあったようだ。

登場時の基準で考えるなら、ステップ位置はかなり後ろ寄り。とはいえ、低めにセットされたハンドルとの相性は実に良好。

’00年に登場したファイナルエディションを除くと、カタナのタイヤはチューブ入りが標準。37㎜径フォークには、’80年代初頭の流行だったアンチダイブ機構が備わっている。リヤショックのプリロードは工具を使わずに調整することが可能。
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