アーカイブ

カワサキ初代エリミネーターの謎「なぜドラッグレーサースタイルで、なぜシャフトドライブだったのか?」

エリミネーター SE カワサキ 1988 

以前から抱いていた初代エリミネーターへの疑問

2023年4月に新型エリミネーター(400cc)がデビューしたことで、最近は初代エリミネーターの記事を雑誌やwebで目にする機会が増えている。それらを眺めているうちに筆者の中では、どうしてドラッグレーサー的なスタイルで、どうして250cc以外はシャフトドライブで、どうして旗艦の販売をわずか数年でアッサリ止めてしまったのか……という、以前から抱いていた初代への疑問が再浮上してきた。

そこで当記事では、1985年から展開が始まった初代エリミネーターに関する個人的な見解を記してみたい。ただし、250は他の排気量車とは素性が異なるので、ここで記すのは主に400cc以上のエリミネーターの話である。

日本国内ではエリミネーター750(1985年12月発売)を皮切りに、エリミネーター400(1986年2月発売)→エリミネーター250(1988年3月発売)とシリーズが展開された。写真は1985年型エリミネーター750。

どうしてドラッグレーサー的なスタイルだったのか?

まずはスタイルの話から。そもそも初代エリミネーターシリーズは、GPZ-R各車の派生機種である。
そして既存の空冷Zシリーズを振り返ると、派生機種を生み出す最も簡単な手法はベース車の基本設計をできるだけ転用しながら、リヤショックの短縮や後輪の小径化で車高を下げ、大アップハンドルや段付きシートを採用し、クルーザースタイルの「LTD」を作ることだったはずだ。

ところが初代エリミネーターは、Z-LTDの手法を踏襲することなく、エンジンを除くほとんどの部品を新規開発していた。その理由は、ベース車の基本設計をできるだけ転用すると、クルーザーとしての成立が難しかったからだろう。逆に言うなら、既存の空冷Zシリーズは小変更でクルーザーに変身できたものの、空力を筆頭とするロードスポーツとしての性能を徹底追及したGPZ-R各車に、空冷Zのような汎用性は備わっていなかったのだ。

日本国内では750、400、250と各排気量にラインアップされたZ-LTDシリーズ(650や550もあった)。写真は1980年発売のZ400LTD-II。エンジンはZ400FX系の400cc空冷DOHC4気筒。

もっとも、だからといってドラッグレーサー的なスタイルにする必然性はないのである。とはいえ、せっかくエンジンを除くほとんどを新規開発するのだから、カワサキは新しいチャレンジをしたかったのではないだろうか。

そして初代エリミネーターの主要市場となるアメリカのドラッグレースで、既存の空冷Zシリーズが大人気だったことを考えれば、Z-LTDとは路線が異なるロー&ロング指向のモデルとして、カワサキがドラッグレーサーに活路を見出したのは自然な流れだったのかもしれない。

なおフルカウルスポーツモデルの派生機種と言えば、昨今ではネイキッドが定番になっているものの、1980年代中盤のカワサキが販売したその種のモデルは、GPZ400RがベースのFX400Rのみで、GPZ900Rのネイキッド仕様は試作段階で却下されている。フルカウルの進化が急速に進んでいた当時の2輪事情を考えれば、カワサキがネイキッドに力を入れないのは当然のことだったのだ。

どうしてシャフトドライブなのか?

スタイルと同様に、筆者が以前から初代エリミネーターに抱いていた疑問は、ドラッグレーサー的でありながら、400cc以上の後輪駆動をシャフトドライブとしたこと。既存のZ-LTDシリーズにもシャフトドライブ仕様は存在したけれど、基本はオーソドックスなチェーンドライブだったし、静粛性と耐久性に貢献する一方で、ファイナルレシオの変更が困難なシャフトドライブは、どう考えてもドラッグレーサー向きではないのだから。
事実、ノーマル状態でのゼロヨン加速は相当に速かったが、当時のドラッグレースで初代エリミネーターが人気車になったのかと言うと、必ずしもそうではなかった。

ちなみに、ドラッグレーサー的なスタイル+シャフトドライブは、同じ1985年にヤマハが発売したVMAXも同様だったものの、VMAXの場合はパワーユニット(1200ccV型4気筒)の元ネタとなったベンチャーロイヤルの後輪駆動をそのまま踏襲した結果として、シャフトドライブになったのである。一方の初代エリミネーターは、GPZ-R系各車のチェーンドライブをわざわざシャフトドライブに変更したのだから、そこには何らかの意図があったのだろう。

と言っても、筆者にはその意図がどうにも推察できないのだが……。あえて言うなら、シャフトドライブに可能性を感じつつ、250~500ccクラスを中心にベルトドライブ採用車を増やしていた当時のカワサキは、後輪駆動の理想形をいろいろな角度から探っていたのかもしれない。

1984年に輸出専用車として発売されたGPZ900R。新開発の908cc水冷並列4気筒DOHC4バルブエンジンは最高出力115馬力で、量産市販車の最高速は240km/hが限界と言われていた当時、最高速250km/hの性能を叩き出した。
一番最初にエリミネーターの車名を冠したのは、1985年型の輸出専用モデル「エリミネーター」(写真)で、当初は車名に「900」という数字は付かなかった。GPZ900Rより中低速重視のセッティングとしたエンジンは最高出力105馬力。

どうして大排気量モデルの販売をわずか数年で止めたのか?

400/600(海外向け)と250が1990年代後半まで生産が続くロングセラーになった一方で、1987年に排気量を909→997ccに拡大した輸出仕様のフラッグシップは翌1988年に生産が終了し、日本仕様の750はわずか1年で市場から姿を消した。その最大の理由は、前述したVMAXに迫力でもパワーでも勝てなかったからという説もあるが、いくら何でも見切りが早すぎないだろうか。

まあでも、水冷Vツインを搭載する王道路線の本格派クルーザーとして、1985年にVZ750ツイン、1987年にバルカン88(1500cc)がデビューしていることを考えると、初代エリミネーターのフラッグシップの早期撤退は、カワサキにとっては規定路線だったのかもしれない。

もちろん、エンジンを除くほとんどの部品を新規開発しての早期撤退は、非常にもったいない話である。とはいえ、おそらく当時のカワサキは、Z-LTDシリーズが人気を誇っていた1976~1980年代初頭とは異なり、当時の市場が大排気量並列4気筒クルーザーを欲してないことを、初代エリミネーターの評価を通して実感したのだろう。

1985年に発売されたGPZ400R。カワサキ初の400cc水冷並列4気筒エンジン搭載車で、最高出力は59馬力。レーサーレプリカではなく、スポーツツアラー的な存在だった。
1986年に発売されたエリミネーター400。GPZ900Rとエリミネーター(900)の関係と同様で、GPZ400Rベースのエンジンを専用設計の車体に搭載、駆動方式はシャフトとされた。エンジンは中低速重視となっており、最高出力は54馬力。

大排気量並列4気筒エリミネーターが復活する可能性は……?

改めて歴史を振り返ると、フラッグシップに関してはなかなかいい話にはならない初代エリミネーターだが、あれから40年近くが経過して400ccの新型エリミネーターが注目を集めている現在、大排気量並列4気筒を搭載するエリミネーターの復活を期待しているライダーは少なくないと思う。

例えばスーパーチャージャーを装備するH2系、あるいはニンジャZX-10Rの1000cc4気筒エンジンを転用したら、相当に魅力的なエリミネーターの旗艦が作れるんじゃないだろうか。もっとも新型エリミネーターのキャラクターを考えれば、新世代の大排気量並列4気筒エリミネーターに最適なエンジンは、フレキシブルなニンジャ1000SX/Z1000用かもしれない。

レポート●中村友彦 写真●八重洲出版 編集●上野茂岐

  1. お店で買える! “かわいい”が詰め込まれた特別仕様車 『スーパーカブとハローキティがコラボ!』

  2. 【比較】『GB350 S』や『GB350 C』 とスタンダードモデルの違いって? 空冷シングル『GB350』シリーズはどれが人気?

  3. 初心者ママライダーの感じたRebel 250 E-Clutchの魅力。「私の心を落ち着かせてくれる存在です」

  4. 【わかる?】車検のある400ccクラスで発売からもう4年……だけど2024年まで『ベストセラー』を誇ったHondaのバイクってどれだと思う?

  5. 【え?空冷?】新型『CB1000F』を「予備知識ゼロ」でレビューすることになった→聞いてた話と違うじゃないか!?【Hondaの道は1日にしてならず/CB1000F ①第一印象 編】

  6. 【驚異の価格】新型EVスクーター『ICON e: (アイコンイー)』は26Lのシート下収納スペースありで充電もラク!【Honda2026新車ニュース】

  7. 徹底解説!レブル250の「Eクラッチ」が圧倒的に支持される「7つの理由」って? 【Honda E-Clutch/Rebel 250 S Edition編】

  8. 【質問】このバイクの車名ってわかる? Rebel 250(レブル250)じゃないよ!DAYTONA×Dope製のCL250向け『カスタム』です!

  9. ツーリング好きの私が年甲斐もなく『峠の走り』に夢中になってしまったバイクの話【Hondaの道は1日にしてならず/GB350 S インプレ・レビュー 前編】

  10. バイク歴18年のライダーはGB350 Cで初のMT車デビュー「これにしかない良さがあります」

  11. CRF1100L Africa Twin(アフリカツイン)が予想外のニューカラー!?新型モデルからは『MT』と『<S>』が無くなり『DCT』のみに!

  12. GB350はモトクロスの女王、川井麻央選手も絶賛「GBがいいヤツすぎて仲良くなりました」

  13. 【新車】125ccスクーター『LEAD 125(リード125)』がニューカラー2色追加で新発売! シート下スペース約37Lでスマートキー&USBソケットも標準装備!

  14. 10年、20年後も色褪せない「控えめに言って最高」GB350 Cを全力で絶賛する理由

  15. 大排気量ツアラー一筋だったベテランライダーがXL750 TRANSALPに乗って感じた自由と楽しさとは?

  16. のんびりツーリング最強の大型バイク『CL500』がアップグレード!新色にも注目です!

  17. 通勤・通学、二人乗りもOKの遊べる125cc『ダックス125』は初心者の人も安心!

  18. 50歳からライダーデビュー。エネルギッシュな女性ライダーが考える悔いのない人生

  19. 新型『NX400』ってバイク初心者向けなの? 生産終了した『400X』と比較して何が違う?

  20. 定年後のバイクライフをクロスカブ110で楽しむベテランライダー