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【超貴重車!】ドゥカティ・スーパーレッジェーラV4試乗 限定500台、約1200万円、224馬力の公道を走れるレーシングマシン

バイプレーンウイングによるダウンフォースで路面を捕らえ続ける

試乗コースとなったのはMotoGPのイタリアグランプリが開催されるムジェロサーキット。

MotoGPマシンが350km/hを出すホームストレートを全開で抜け、再び1コーナーへ。
ピークパワーは1万5500rpm、ピークトルクは1万1750rpmだが、どこまでも回り続けようとするV4エンジンは1万6000rpmとさらに高回転になり、6速では1万6500rpmでレブリミッターが作動した。
素早く反応するクイックシフターで6速から2速まで一気に落とし、ブレンボ最強のキャリパー・スタイルマで超強力な減速をかける。

330mmダブルディスクにブレンボ製最高峰モノブロックキャリパー・スタイルマを組み合わせたフロントブレーキ。ピストンにはフェードを軽減するための冷却穴も設けられている。

バイクとコースになじんでくるに従ってペースアップしてみたが、「レースB」モードではフロントがまるで地面に固定されたような感覚で、ウイリーする気配など一切ない。ある意味では、Xboxのゲームをしているような感覚だ。スロットルを開ければ、何の破綻もなく、目を見張るような加速で前に進んでいくのみである。

2周目、再び最終コーナーを迎える。減速しつつ、深いバンクでヒザを路面に擦りつけ、そこから滑走路のようなストレートへ。
ただ速いだけのバイクや、サスペンションが貧弱なバイクでは飛んでいってしまうだろうが、巨大な翼を持ったスーパーレジェーラは、むしろ「飛んでいかない」。300km/hの領域では、60kgものダウンフォースが押さえつけてくれるからだ。

2枚のウイングを組み合わせたカーボン製の「バイプレン・ウイング」。パニガーレV4 Rのウイングよりも強力なダウンフォースを生み出す(270km/h走行時、パニガーレV4Rでは30kgのダウンフォースとなるのに対し、スーパーレッジェーラV4は50kgのダウンフォースを発生させる)

相変わらずブレーキはタレることなく超強力だが、このブレーキが限界を迎えるより、先にライダーだ限界を迎えるのではないだろうか。
どれほど遅いタイミングでブレーキングしても、安定した状態を維持しながら確実に減速できるバイクをほかに見たことがない(間違いなく減速時の安定性にはウイングも貢献しているだろうが)。
そして、柔軟性まで備えたカーボン製シャシー、オーリンズ製フロントフォークの動き、ピレリ製スリックが生み出す絶大なグリップ感。言葉では言い表せないほど、完璧の嵐のようなフィーリングだ。

フロントフォークはオーリンズ製のNPX25/30加圧式倒立フォークで、インナーチューブ径は43mm。もちろんフルアジャスタブル。フォークボトムは軽量化のため機械加工によるアルミ製となっている
リヤはオーリンズ製TTX36ショックアブソーバーだが、チタン製スプリングやMotoGPのノウハウが継承された油圧バルブを備えるなど、スーパーレッジェーラV4用にさらに磨き上げられている。

スーパーレッジェーラV4のハンドリングはパニガーレV4Rとは別次元

スーパーレッジェーラV4が「速い」ということは誰もが予想していたはずだ。しかし、ブレーキングやハンドリングがこれほど素晴らしいものだったとは!
ドゥカティは最高のハンドリングを誇る市販バイクのひとつ、パニガーレV4Rを世に送り出しているが、すでに完璧と思われていたものをどうすればこんなに刷新できたのだろう?
パニガーレV4RとスーパーレッジェーラV4とでは、コーナーへの進入から、バンキング、そして立ち上がり……コーナリングの過程、全てが違う。
ブレーキを遅らせたり、意図的に早めに加速したり、エイペックスを逃したり、ラインを崩したりしても、スーパーレッジェーラV4はバイクがそれを補ってくれるのだ。無限のグリップとフィードバックをライダーに感じさせてくれる……と言ってもいい。

ダウンフォース規制が入る直前のMotoGPマシン・デスモセディチGP16のウイング形状が参考にされたバイプレン・ウイング。正面から見ると、その形状・大きさがよくわかる。

勇気と自信が出てきたので「Aモード」に切り替えることにした(転倒して10万ユーロのバイクを「お買い上げ」せざるを得なくなるリスクは常に頭の中から外れなかったが)。
確かに、低速ギヤでシャープな挙動になるのはわかった。「Bモード」のときとは異なり、低速でダウンフォースが効いていないときにスロットルを開けるとフロントタイヤはわずかに浮くが、それも一瞬。とにかく路面からタイヤが離れないのである。
私はこれまで、恐ろしくパワフルなスーパーバイク世界選手権仕様のドゥカティに乗ったこともあるが、スーパーレジェーラV4は驚異的なパワーを考えると信じられないほど寛容で扱いやすい。

ドゥカティ スーパーレッジェーラV4 総評

価格は10万ユーロで、500台しか生産されないということを除いて、欠点はない(ライダーとしては残念だが、500台の内の何台かは一度も甲高いエンジンを鳴り響かせることなく、コレクターズアイテムとなるか、投機目的として購入されるだろう)。
ファクトリーチームのラップタイムの数秒以内に肉迫できる戦闘力を秘めていながら、信じられないことに公道を合法的に走ることができ、かつ簡単に速く走ることができる。
スーパーレッジェーラV4はこれまで20年以上プロとしてテストしてきたどの市販バイクよりも優れていると断言したい。

トップブリッジにはシリアルナンバーが刻印される(オーナー車ではXXXとなっている箇所に数字が入る)。

ちなみに、10万ユーロという価格はバイクそのものの価格とは言い切れない。
オーナーには「スーパーバイクエクスペリエンス」として、スーパーバイク世界選手権に参戦するワークスマシン・パニガーレV4Rに乗ってムジェロサーキットを走る機会も提供されるのだ。
ちなみに、3万ユーロ(約380万円)を追加すると、ペトルッチやドヴィツィオーゾが乗るドゥカティのMotoGPマシン・デスモセディチGP20にも乗ることができる(30名の応募者に限定されるが)。
そのうえ、さらにお金をかけたいという人には、ドゥカティ純正のダイネーゼ製エアバック付きレーシングスーツとアライ製カーボンファイバーヘルメットも用意されている。全財産はたくなら、全部使ったほうがいいかもしれませんね。

ドゥカティ スーパーレッジェーラV4主要諸元

[エンジン・性能]
種類:水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:81.0mm×48.4mm 総排気量:998cc 最高出力:165kW<224ps>/1万5250rpm レーシングエキゾースト装着時最高出力:174kW<234ps>/1万5500rpm 最大トルク:116Nm<11.8kgm>/1万1750rpm レーシングエキゾースト装着時最大トルク:119Nm<12.0kgm>/1万1750rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:── 全幅:── 全高:── ホイールベース:1480 シート高835(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R200/60ZR17 車両重量:159kg(乾燥) レーシングエキゾースト装着時車両重量:152.2kg 燃料タンク容量:16L

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