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■イラストはイメージ。実際の白バイ隊員によるマラソン先導とは関係ありません。
白バイによるマラソン先導。その職務中に気をつけていること
マラソン中継のテレビ映像で、先頭を走るランナーの前をゆっくりと走る白バイの姿を見たことがあると思います。また、白バイと聞いて、真っ先にマラソンの先導を思い浮かべる人もおられるかもしれません。白バイは交通取り締まりのイメージが強いですが、マラソン大会や駅伝といったロードレースの先導も、非常に重要な任務のひとつです。今回は、元白バイ隊員としての経験をもとに、マラソン先導の技術、隊員が気をつけているポイント、そして見どころについて詳しく解説します。

テレビで見る限り、白バイはただゆっくりと隊列を組んで走っているだけのように見えるかもしれません。しかし実際には、頭の中を常にフル回転させており、次の動作や周囲の状況に神経を尖らせ続けています。見た目以上に高度な技術と集中力が求められる仕事なのです。
マラソン先導では、複数台の白バイが隊列を組んで走行します。その隊列を美しくかつ安全に保つために、隊員たちはいくつもの点に気を配っています。
■隣りの隊員と同じ速度で走る
先導する白バイは、隣りを走る車両と速度を合わせて走行しなければなりません。単純なようで、これがとても難しい作業です。フルマラソンのトップランナーの速度は平均すると大体15~20km/hくらいですが、無論ランナーの走行ペースは常に一定ではなく、上げ下げを繰り返します。それに合わせて隣りの車両とも速度を揃え続ける必要があり、わずかなズレも許されません。ちなみに、CB1300Pで上記の速度レベルで走る場合ギヤは2~3速を多用しますが、並進走行の場合は、通常左側の隊員は右側の隊員の使用するギヤに合わせます。
■車体を同じ位置にキープし、車両の間隔を空けすぎない
速度だけでなく、車体の位置関係も厳密に管理しています。具体的には、フロントバンパーの位置を隣の車両と揃えることが基本です。前後にズレると隊列全体の見た目が崩れるだけでなく、安全面でも問題が生じます。右側の車両と左側の車両との間隔についても注意が必要です。間隔を空けすぎず、かといって近づきすぎることもなく、適切な距離を保ち続けなければなりません。この間隔の維持も、速度や位置の調整と同時並行で行う必要があり、隊員には高い技術力が求められます。


右側と左側の隊員、それぞれの役割
隊列を組んで走行する際、基本的には右側に位置する隊員の方が階級が上、もしくは先輩であることが多いです。役割分担にも明確な違いがあります。
右側の隊員は、周囲のすべての状況を把握しながら、左側の隊員のことも考慮しつつ走行し、隊列全体を誘導する役目を担います。一方、左側の隊員は原則として右側の隊員の動きにすべてを合わせます。シフトのアップダウンやブレーキのタイミングといった運転操作はもちろん、細かい部分では服装や身だしなみ、さらにはバイザーを開ける・下ろすといった動作まで、右側の隊員に合わせなければなりません。特に式典の際などは、こうした細部までとても厳しくチェックが入ります。
左側の隊員は、右側の動きに何がなんでもついていかなければならないため、それはそれで大変な役割です。しかし、右側の隊員はそれ以上に大変だと言えます。左側の隊員の動きを見ながら、同時に周囲の状況や交通の流れも判断し、運転操作や指示を出し続けなければならないからです。
反対に、左側の隊員は数センチ単位で前後左右の位置を調整し続けなければなりません。極端に言えば、ほとんど前を見ていないと言っていいほど、右側の隊員の動きだけを意識して運転しています。それぞれの立場で異なる種類の負担があり、どちらも簡単な役目ではないのです。
ちなみに、左右の白バイの間隔は、お互いに申し合わせて決めています。コースの幅などにもよりますが、低速の場合は1mくらいもしくは1m以下と接近していたり、高速度の場合は幅を広く取ったりします。イベント等により指示ある場合はそれに従います。そのほか、安全面、見栄え等によって体形を変更するといったこともします(通行区間によって幅を変えるなど)。また、失敗は許されないので、リハーサルを何度も行う場合もあります。
中継車・広報バイク・先頭ランナーとの距離感。沿道の観客への注意
マラソン先導がさらに難しいのは、隊列内の位置関係だけでなく、前を走る中継車や広報バイク、そして先頭ランナーとの距離も同時に見なければならない点です。走行中はこれらの車両やランナーと無線などで通話することができないため、すべて目で見た感覚、いわば目測での間隔で走行しなければなりません。しかも、中継車も広報バイクもランナーも、決められた一定の速度で走っているわけではないため、その調整は本当に難しいものです。
各車両の保持する間隔には規定はありませんが、事前に打ち合わせをしたりします。そして、当然お互いに邪魔にならないような位置を走るわけですが、特に重要視されているのがランナーの走るペースを乱さないように細心の注意を払っています。
とは言っても、ランナーがペースを上げた場面などでは、前を走る中継車がなかなか前に進まず、先導する白バイが前にも後ろにも動けなくなるという事態も起こり得ます。こうした際の瞬時の判断と対応力が、先導を担う白バイ隊員には常に求められています。

先導中は、走行している車両や走っているランナーばかりに気を取られるわけにもいきません。沿道で応援している人たちにも常に注意を払う必要があります。具体的には次のような点を確認しながら走行しています。
●沿道の人がコース内に飛び出してこないか
●応援グッズや物をコース上に投げ入れてこないか
●走行経路上に危険なものが落ちていないか
これらはすべて、ランナーや先導車両の安全に直結する重要なチェックポイントです。
今年の箱根駅伝の大会中に話題になったような、犬がコース上に飛び出してくるといった出来事は、先導する立場からすると特に避けたい最悪の事態のひとつです。当然、飼い主がしっかりと犬を管理し、コース上に飛び出させないようにするのが大前提ですが、万が一そうした事態が起これば、警備にあたる警察の責任問題にもなりかねませんし、事故につながれば大きな問題に発展してしまいます。
ニュース映像などで、白バイ隊員が一所懸命に小さな犬を追いかけている様子が報道されましたが、その様子は傍から見ると滑稽に映ることもあるかもしれません。しかし、もし自分が当時マラソン先導などの任務中にそうした場面に遭遇したらと考えると、正直ゾッとします。実際にその場で犬の飛び出しなどに対応していた隊員には、本当に頭が下がります。周囲が見ている以上に、本人は必死だったはずです。
筆者の場合、幸いにも大きなトラブルには遭遇していませんが、応援が加熱して走路に出て来る観客、車両規制をくぐり抜けて脇道からコースに入ってくるクルマをマイクで注意するといったことはたびたびありました。

マラソン先導の見どころ
マラソン大会の先導をしていると、沿道から「白バイ頑張って」「おまわりさん頑張って」といった声援をいただくことがあります。ランナーへの応援と同じように白バイにも声をかけてもらえるのは、隊員にとってとても嬉しい経験として記憶に残っています。
もちろん、先導や安全確保という任務を遂行している最中なので、その声援に直接反応することは基本的にできません。それでも、心の中では「ありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えています。本来は控えるべきことかもしれませんが、軽く会釈をして応えていたこともありました。
■まとめ
マラソン先導や白バイの隊列走行は、一見するとただゆっくりと走っているだけのように見えます。しかし実際には、隣の車両との速度・位置・間隔の調整、右側と左側それぞれの役割分担、中継車やランナーとの距離感の把握、そして沿道の安全確認まで、非常に高度な技術と集中力が求められる仕事です。
もし街中やテレビでマラソン大会を先導している白バイを見かけたときは、ぜひ応援してあげてください。隊員はきっと心の中で喜んでいるはずです。
文●睦良田 俊彦
睦良田 俊彦(むらた・としひこ)
1986年北海道生まれ 趣味:クルマ、バイク
歯科技工士を経て警察官となり、約15年間勤務(白バイ隊員歴約10年)。警察学校卒業後は約3年半の交番勤務を経て交通部門へ。白バイ警察官として第一線で交通取締りをメインに活動し、ライダーのための安全講習、交通安全啓発イベント、マラソン大会先導、大統領車列先導など、様々な経験を重ねてきた。県警主催白バイ大会での優勝経験もあり、白バイ新隊員の育成などにも携わった後、巡査部長の階級で依願退職。現在は退職後の夢でもあったライディングレッスンなど、ライダーのためになる活動が出来る場を作るべくYouTuberとして、バイクの面白ネタ等を発信する「臨時駐車場チャンネル」ほか、新たにバイクライディング技術等に特化した「元白バイおやじチャンネル」も開設して活動中。バイクイベント等に積極的に参加し、出身の北海道で開催のライディングレッスンで講師も務めている。




























