2020年モデルとして発売された、パニガーレV4系モデルの最上位モデル・スーパーレッジェーラV4。
世界限定500台生産の超貴重なマシンを、レーシングライダーでもあるイギリス人ジャーナリストのアダム・チャイルド氏がドゥカティのお膝元、イタリア・ムジェロサーキットで全開テスト!
超軽量の名を持つスーパーレッジェーラV4とはどのようなマシンなのか?
ドゥカティのMotoGPマシンを上回るダウンフォースを生み出す「バイプレーンウイング」を備え、スーパーバイク世界選手権に参戦するファクトリーチームのパニガーレV4Rよりも軽量。レース用エキゾーストに換装すれば、998ccのV4エンジンは234馬力を叩き出す。
にもかかわらず、お店で買えて、家まで乗って帰ることができる。それがドゥカティ・スーパーレッジェーラV4というバイクである。
生産台数は世界限定500台となるが、世界最高の市販バイクと言っても過言ではない。
まずは驚愕の事実を紹介しよう。
価格は10万ユーロ(編集部註:日本国内では1195万円の価格設定。なお既に完売)である。
レーシングマシンではなく、ヘッドライトやミラーが装備され、公道を走れるバイクである。ショッピングに行くことも可能だ。
乾燥重量は159kgで、ベースとなるスタンダードのパニガーレV4と比較して16kgも軽い。
最高出力は通常224馬力で、付属のレース用エキゾーストを装着した場合は234馬力となり、この数値はスーパーバイク世界選手権に参戦するファクトリーチームのパニガーレV4Rより「たった」10馬力低いだけ。にもかかわらず、メンテナンスサイクルは普通に7500マイル毎(1万2000km毎)である。
巨大なバイプレーンウイングが生み出すダウンフォースは、ドゥカティの最新MotoGPマシン・デスモセディチGP20を上回る。
ただ、一番の凄みは軽量さだろう(編集部註・「スーパーレッジェーラ」という言葉自体が「超軽量」の意である)。
それもそのはずと言うべきか、スーパーレッジェーラV4は世界で唯一のカーボン製シャーシを採用した公道走行可能な量産市販バイクなのである。
フレーム、ホイール、スイングアームにカーボン素材が活用されているほか、もちろん、カウリングやウイングなど各種外装パーツにもカーボン素材でまとめられている。
レースキット装着、フルパワー234馬力のスーパーレッジェーラV4を走らせる
試乗コースは、世界で最も素晴らしいコースのひとつであるムジェロサーキット(編集部註・MotoGPのイタリアグランプリが開催される、イタリア・トスカーナ州フィレンツェにあるサーキット)。
イギリス人として初めてスーパーレッジェーラV4に乗ることを許されたといこともあり、背筋がゾクゾクしてくる。なお、ドゥカティ関係者以外で試乗したのは私が2番目だという。
ライディングモードを「レースB」に。1速と2速のトルクを抑えるもので、コースに慣れてきたら全ギヤ全回転フルパワーの「Aモード」に切り替えるつもりだ。
レース用エキゾーストに換装されていた試乗車は、234馬力のフルパワー仕様。スロットルを数回あおると、銃声のようなすさまじい残響音が響き渡る。そしてコースイン──。
ピレリのスリックタイヤはウォーマーで管理されていたので、無難な走りをする必要はない。
第1コーナーを出て、次の左右シケインに備える。この時点でスーパーレッジェーラV4のカーボンシャーシはすぐに曲がりたがり、軽く、正確で、速い反応を見せる。
シケインではヒザのスライダーを左右両方擦るという驚異的な切り返しができ、続くコーナー群も凄まじいコーナリングスピードで駆け抜けていく。
もちろん、コーナーではライダーの操作によってある程度パワーとトルクを制御する必要はあるが、このスーパーレッジェーラV4はスーパーバイク世界選手権に参戦するファクトリーチームのマシンに匹敵するパワーを持ちながら、そのパワーは使い勝手がよく、操作感はじつにスムーズだ。
最終コーナーからホームストレートへ。
V4エンジンにフルパワーを発揮するよう指示すると同時に、スクリーンに体をうずめ、シートストッパーにお尻を押し当て加速に備える。左足を動かすたびに滑らかにシフトアップし(感覚としては、秒単位でギヤを変えていたような気がした)、パワーの波がシフトアップの都度、私の頭を叩きつける。
ムジェロサーキットは全長5km以上あるが、1周をこれほど短く感じたことはなかった。
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