目次
■クランクケース上面に付いていたガソリンの痕跡や、その他の汚れをクリーンナップ。燃料漏れの対処も、この際しっかりやっておきました。
ブレーキ周りとガソリン漏れ対処を優先して作業!
カメラマンの小見です。寒くなりましたね!
先に1回目のお話で、実家のお隣のセガレ=せいちゃんのダックス70の初期状況をお話しました。灯火類の暗さと、本人が気にしていたのはスロットルの戻りの悪さ。これが主題でした。
そのため、実際の作業順序とは前後しますが、ライトの明るさを改善する過程を最初に掲載しました。でも実はその間に、もっと多量の作業があったのです。
汚れで真っ黒な前ドラムは分解整備が必要
灯火類で接続する配線の一部が当初どうにも見つからず、若干現実から逃避気味になっていた際に手をつけたのがフロントのブレーキドラムの分解点検です。何しろ、構造のよく分からないフォークから漏れたフォークオイルがブレーキ周辺に飛散して、ドラムブレーキ全体にオイル飛沫や長年くっついた埃が黒く変色してベタついていたんです。まんべんなく。
一見しただけで、ドラムブレーキ内のブレーキシューも無事であるとは考え難い状態でした。
たとえ灯火やスロットルが好調になったとしても、ここらへんを放っておくわけにはいきません。
もうほとんど怖いもの見たさ的な好奇心すら芽生えた私は、脱脂処理をしながらこのブレーキを分解して整備してみようと思ってしまったわけです。
古い純正ホースを生かして燃料漏れを止める
ブレーキの汚れだけでなく、燃料の漏れがキャブ周辺に見受けられたのも、安全上の重要ポイント。
たとえ自分のせいでなくとも、もらい事故なんかで万一漏れたガソリンに引火でもしたら、そりゃマズイ。
古い個体ゆえ燃料パイプの劣化も十分疑わしかったので、燃料の微量漏れから対処を始めてみました。クリップを緩めて燃料ホースをコックから抜いてみても、不思議とホースの劣化は目立ちません。ただし接合部の断面に亀裂が入っています。これが漏れの原因のようです。
予備のホースは手持ちであったのですが、それは赤っぽいクリアのホース。ヤレていたとしてもオリジナルっぽさを重視するせいちゃんの好みにはちと合わないかも?
そこでいったん、純正ホースの端、劣化して亀裂のある断面部分を切り落としてみます。これでもホースの長さにはまだ余裕があります。
燃料コックに接続してクリップで固定。コックやキャブ周辺とクランクケースをしっかり掃除してからエンジンを始動させ、しばらく様子を見ます。
結果は、たったこれだけで燃料の滲み漏れは解消。色違いの新品ホースへの交換は、後々せいちゃんと相談です。
■全体の汚れの中、せいちゃんのリクエスト以外で特に気になったのがココ。燃料が滲み、ジワジワ垂れていたと推測される部分です。
■近づいて見ると、下側の燃料ホースが疑わしい感じ。なぜかホースの種類も違う。クリップをラジオペンチで挟んで緩め、後退させてクリップ跡の凹み具合も見て、ホースのヤレを確認します。
■白いティッシュペーパーで汚れの種類もそれとなく見てみます。ガソリンですよね。
■下側のホースの長さに余裕があったので、クリップで凹んだ部分まで2段階でカット。ゴムの弾力性はちゃんと残っていたので、このまま様子を見てみることに。燃料コック全体の清掃も行い、エンジンをしばらく始動させたのちにチェックすると、滲みや漏れは解消していました。
エアクリのボックス内部も清掃
燃料コック周辺にひとまず安心感を持てたので、エアクリーナーボックス内のエレメントの様子も見てみました。
ブローバイの影響なのか、エレメントのスポンジ状の部品にオイル分が多めに付着していましたので、ウエスで絞って油分を吸い取るのと同時にクリーナーで清掃してやります。
エアクリーナーの筐体の内側もしっかり掃除をして復元しておきます。ボックス内に変な虫やら植物の種などが入っていないのは、年式を考えると不思議な感じです。郊外にはあまり行っていなかったのかな?
■吸気系の状態を見るため、エアクリーナーケースの丸いメッキカバーを外し、エレメントを外してみます。
■スポンジ状のエレメントが出てきました。クランクケースから上がってきたブローバイの油分が溜まっていたのか、オイル成分がだいぶ染み付いていました。これはワコーズ「メカタオル」のようなペーパータオルに移し取って、余分な油分を暫定除去。
■エアクリーナーケースの内側もパーツクリーナーを染み込ませたティッシュでそっと清掃。余計な細かい紙クズなどが吸気系に入らないように留意します。
脱脂と新品シューの組み付けで生き返った前ドラム
そして、後日行ったフロントブレーキの分解整備。エンジン下に木材とジャッキを噛ませて姿勢を安定させ、フォークからフロントホイールを外すと、すぐに両手が黒くなりました。予想どおりです。
ブレーキワイヤーとスピードメーターケーブルも事前に外して点検。幸いワイヤーの傷みはほとんどなく、それが不思議です。組み付け時までこのまま保管しておきます。
油っこいドラムパネルの内側に取り付けられているブレーキシュー(たぶん純正)は変色していて、ハブ内側の油脂によりコーティングされている感触です。薄手の手術用手袋をはめて作業をしていますが、外す際にもできるだけシューの当たり面には触れずに分解していきます。シュー、ハブ両方の当たり面をとりあえず徹底的に脱脂して様子を見てみました。脂っ気のないウエスで拭き取ってみると目立つ傷はないようです。ハブの方はさらにアセトンも使って徹底洗浄しておきました。
ブレーキシューも脱脂してみると油っぽさはなくなりました。ですが、ここだけは慎重策を取るべき部品なので、新品のシューを手配。過去、重量車のブレーキパッドのテストで優秀だったデイトナの「プロブレーキシュー」をネット通販で選んで、ポチ。程なく到着したシューを組み、スピードメーターギヤも含めてハブ内の清掃とグリスアップをしてブレーキを復元。
フォークの分解整備はあらためて実施するとして、近所を軽く走ってみると、ブレーキの当たりがつくまでの感じは新車のドラムブレーキの感触のよう。うまく整備できたようです。
ここでサスは深くストロークさせず、フォークを安静にさせておきました。フロントフォークには新たなオイルの漏れが増えないような措置をして、オイルシールなどの部品を発注し、分解整備の準備をしておきます。フォーク周辺のカバー類は、車体色と同じペイントなのにピンホール錆が多発しています。この際、部分的な塗装もしておいた方が長持ちするかな? ……というところまで考え、作業すると相当な時間がかかると踏んでいます。
■どうでしょう、オイルがふんだんに飛散した形跡がありありなドラムブレーキ。ホイールにも油分の付着が見て取れるとなると、ブレーキ内部に浸透している確率は高い。
■フォークから外したフロントホイール&ドラムブレーキです。ドキドキしますね!
■外してみたら、こんな感じでした。ハブの内側・奥にまで微妙にオイル分が残留。ブレーキシューとハブのブレーキの当たり面は制動熱?のせいか油分残留は些少。
■ブレーキドラムから外したシューをひとまず240番のサンドペーパーで当たり面と側面を少し研磨してみました。でも、このシューを再利用するのもいかがなものかな?
■ドラムパネル内側は浸透していたであろう油分で、逆に綺麗なものです。
■後日、デイトナのブレーキシューをネット通販で調達。これで安心でしょう。
■ドラムブレーキのシャフトやレバー類も全て清掃。薄~くグリスアップをしてシューの組み付け。これで余計な油分も除去、シューの残量の心配もありません。
前サスは、オイル漏れを止めれば復活する?
ここで、フロントフォークがあまりにもフニャフニャ……という疑問に対して、実験をしておきました。後で漏れてしまうかもと考えて少なめにですが、フォークオイルを足してみたら、ダンパー効果は復活するのか?と。
友人から分けてもらったヤマハのフォークオイルを少量足してみて、サスを作動させてみました。そうしたら若干のダンパー効果らしき感触はありました。分解の価値はありそうということで深追いせずに保管しておきます。
■スカスカだったフォークに若干量のオイルを入れてみて、どのくらい漏れるのかを試してみます。フォークオイルは手持ちになかったため、友人からヤマハの使いかけを分けてもらいました。
■あんまりドバドバ漏れても困るので、オイルは50cc程度をフォークのトップボルトを緩めて注入して作動をチェック。これでも微妙に作動感は上がるのが分かりました。フォーク分解も後日、ちゃんとやっておこう。
キタナイチェーンを洗ってみると、あら不思議
ほかにも、あまり時間がかからなそうな作業を、このタイミングで実行してしまいます。謎の蓄積汚れ?でコーティングされたかのようになっていたチェーン。なんと言いましょうか、戦車のプラモでウェザリング(風化を表現する塗装)でもしたかのような汚れの溜まり具合なのですから、洗浄後の様子も予想がつきません(笑)。
前線から戻ってきたミニ戦車のキャタピラーを洗浄するような気分とか?
クリップを外して、コンクリを混ぜる大きめなバットにチェーンを置き、手持ちの塗装洗浄剤(うすめ液)をドバー。続いて歯ブラシで各コマの透き間をゴシゴシとやってみると、どす黒い汚れが落ちる落ちる!
洗浄剤がみるみる黒くなるのとは逆に、オイル&汚れコーティングされていたチェーンの地肌がはっきり見えてきました。遺跡調査か発掘か?なんて笑って作業していましたが、なんと錆があまり発生していなくて、そんなに程度が悪くないという意外な結果に!
普通の中古車並みにきれいになったチェーンから洗浄剤をしっかりと拭き取り、チェーンオイルをまんべんなく吹き付け、再度丁寧に拭き取り。
横方向のヤレを見るとそれなりにしなっていたものの、伸びはそんなに酷くないようです。
まだしばらくは使えるかも?と、せいちゃんに連絡をしてみると、チェーンは当面それでOKとのこと。
古いくせにどこにも変な曲り癖や引っ掛かりがないのが不思議なこのチェーン。今後伸びたときに換えることになりました。
ちゃんとシャッターの付いたガレージに保管しておいたのが功を奏したということなのでしょうね。
雨ざらしの車体だったらチェーンはもっとうんと悲惨な状態になっていたはずですから。チェーンの取り付けは、また後日。その前に後輪側のブレーキを分解したり、スイングアームの点検をします。
■オフロードを走った痕跡はないけれど、長年の埃がチェーンオイルに付着した結果、黒っぽいコーティングのようになったチェーン。よく見るとチェーン引きのナットも締まってなかった!
■いったん粘度の低いCRC「5-56」を吹き付けてウエスで軽く清掃。でも、内側やローラーの外側にも汚れが豊富に蓄積されていますねー!
■車体からチェーンを外した状態でのクローズアップ写真です。汚れが面白いくらいに固まっています。
■灯油を使うかアセトンにするか迷いましたが、ラッカー用うすめ液で洗ってみました。これでも洗浄力は十分でしょうということで。
■汚れを根気よく歯ブラシでゴシゴシ。アセトンなどより揮発性が低いので、ラッカー用うすめ液で丁度良かったかも? 透明だった液がみるみる黒くなっていきます。
■なんということでしょう。街なかで見かける通勤用バイクか、それ以上にきれいなチェーンになってしまったか!? これぞ積年のオイル汚れコーティングの威力(笑)!
■とは言え、流石に外側のプレートには若干の錆はありました。うすめ液で洗浄したあとはちゃんとしたチェーンオイルを吹き付けて、念入りに拭き取りをして保管です。
本題のスロットルは、グリップ内部をお手入れ
さてさて。
フォーク分解で使いたい部品が届く前に、本来の課題であったスロットルグリップの観察です。
古いダックスなどに使われていたスライド式のスロットルグリップ内の構造は、以前から概要を知っていたので分解の見当は付いていました。
グリップのスイッチボックス側の下にあるボルトを外すと、スロットルのアウター(グリップゴムと一体化)のホルダーが外せるようになっていて、ワイヤーのタイコも外せる構造です。
なので、組み立てに気を使いそうな構造を忘れないよう覚えておきスロットルを分解してみました。ウインカースイッチ近くにある丸いリングみたいな部品の内側にスロットルワイヤーのアウターとインナーが通り、アウターはその中に別部品で固定されているといった構造です。ハンドルの内側にワイヤーを通す、昔のバイクらしい構造になっています。
そこまでは予想どおりなので、まずは斜めに、グリップ内側の構造に沿ってスライドする部品の研磨を考えながら外してみました。スロットルワイヤーはタイコ付近や他の部分にも曲がり癖が付いていて、動きが今ひとつ渋い感じです。新品を注文しました。スライド部品は自室でモデルガンのトリガー部品の研磨さながらに、600番を基本に細かいペーパーでシコシコと磨き込みに集中……。
これでスロットルの戻りはバッチリっしょ(笑)と、このときは簡単に考えていたのですよ。(続く)
■本題その2のテーマ、スロットルグリップの戻り不良の序盤です。まずはワイヤーを緩めるためキャブレターの上を外して、スロットルバルブに付いたワイヤーのタイコも外します。これでスロットルワイヤーはキャブのスプリング張力からフリーになります。
■こんなところにネジがあるんですよ、古いダックスって。接触抵抗低減のためかゴムを切り欠いた痕跡がありますね。このグリップは本当に純正なのかな?という疑惑を持ちつつ、夜作業で小ネジをなくしても困るので作業は翌日へ。
■昼間になってから小ネジを外してみたところ。なかなかの汚れ具合ですねー!
■錆と金属粉が入り混じったような絶妙な色合い。グリップを外してビックリ。実に掃除のしがいがあります! まだスロットルワイヤーは外していない状態です。
■クリーナーとウエスで汚れを拭き取ってみると、こんな感じです。親指の先にあるのがスライド部分で、これを軽く引っ張ってワイヤーのタイコを外せば分解できます。
■スライド部分からワイヤーを外し、軽く清掃したところです。ここ以外、ハンドル本体内側の接触部分もサンドペーパーを当てて磨いておくのがいいかな。
レポート&撮影●小見哲彦
プロフィール●小見哲彦
無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーとしてバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。月刊『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を2021年より依頼されている。
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