バイクライフ

お隣のセガレから要請「ライト暗いの、何とかして~」【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■見た目はただの走り込んだ古いダックス。とくに違和感はありません。

「暗いから」と12V化を気軽に引き受けて……

カメラマンの小見です。
いつものように難題マシンに挑みます。

以前は実家の隣に幼なじみがいたんです。ウチの妹と同じ年、私とも近い年で、当然アラ還。古いワーゲンの愛好家という趣味人です。名前をとりあえずは「せいちゃん」としておきましょう。
そんなせいちゃん、私がZZRやKLXを整備していると、よく車庫に遊びに来てはクルマの話をしていました。
今は少し離れた地域で一軒家住まいとなっていますが、今年に入り「相談に乗ってほしいんだけど」と、せいちゃん。
聞けば、古いダックス70でたまに実家に来ているのだが、ライトがあまりに暗すぎて、夜になって自宅まで帰るときなど怖いのだそうな。
そういえば、6V時代の原付なんてしばらく見てないなーと、実際にダックスのエンジンをかけて点灯してもらってみますと……うん、こりゃ暗い。前に自分が改良したJAZZ以上に暗い。
どーする?と聞きますと、12Vにしたら変わるよねー?との回答。
12V化は、比較的簡単に対処するなら、今や王道ともいえる措置でしょう。
「キットを用意してくれて、ヒマなときでいいならやってあげる」と軽い調子で引き受けたのが……のちの苦難を味わう発端となったのでした。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■サイドスタンド側から見たダックス君。シートの破れが気になるくらいで全体のヤレた感じは年式を思えば自然といえば自然。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■せいちゃんの最大の希望は、このボワ~ンと点灯するヘッドライトの照度アップ。今どきのスポーツサイクル用の高性能ライトとは比較にならないほどの暗さです。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■フロント周辺を観察してみると、オプションなのかカゴが付いています。ライト周辺の脱着に一手間よけいにかかるなーと少し面倒がる私。カゴも塗り直しますか。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■ライトが暗すぎて、やっぱりせいちゃんも自転車用のライト?を追加していました。

どこもかしこもガタガタなんですけどー!

せいちゃんがダックス70を持ってきて、いざ預かって観察をしてみると、電装の12V化に関係する部分のヤレはおおよその予想がつくとしても、他の各部も豊富なオイル漏れなんやら、スゴい箇所を発見。
さらに、独特の構造を持った昔のスロットルが「戻したときに自然に戻らないのも何とかしてほしい」とのこと。試しにスロットルを開けて手を離してみると、そのままの位置で動かず、エンジン回転は下がらない……。
「おぉ、クルーズコントロールじゃないか!」なんて感心している場合じゃなくて、ここも必ず対処しなくちゃダメでしょう。
そして何といっても外観でもっとも気になったところは、漏れたフォークオイルが下周りに伝って、フロントのドラムブレーキ全体が黒っぽくオイルコーティングされていた光景ですよ!
「これでブレーキ、利いていた?」とせいちゃんに聞くと、当たり前のように「なんか利きがすごく甘いんだよね~」と言います。
なるほど。ブレーキシューを洗浄で復帰させられるか分からないし、新品に変えたほうがのちのち確実だろうと、この時点ですでに予算計算に入ります。
ゴルゴ13の仕事よろしく、かかった経費はその都度精算してもらうとして、ともかく直すということに。
スロットルワイヤーも途中で折れた箇所があるし、こちらも新品にすべきなんて考えて……現行のダックス125など「普通」のバイクと少々違った昔の車体構造を、このときはまだ知るよしもなかったのでありました。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■もうひとつの要望は、ひねって回転を上げたあとに手を離しても戻らないスロットル。構造が今どき風じゃないのは知っていたので、当初は楽観視していたのですが……。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■エンジン付近を眺めてキャブレターを見ると、キャブ本体と燃料コックに滲みと汚れ。ここらへんはせいちゃんの要望にはないけれど、ガソリン漏れや引火はまずいのでチェック。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■チェーンの堆積汚れとホイールの汚れも、外観観察で気になったところ。ここらへんも全部外してスイングアームの作動も確認すべきでしょうね。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■電装系に手を入れるためシートのロックレバーを作動させるとこんな風に開く。燃料タンクの取り付け座に浮いたサビが気になるが、内部のサビがなければ気にしません。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■ネット注文でせいちゃんが取り寄せておいたミニモトの12V化キット。このシリーズは私もJAZZの12V化に使用して動作に問題がありませんでした。妥当な選択でしょう。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■12Vコンバートキットの箱を開けてみると、MFバッテリーにウインカーリレー、レギュレーターなどが入っています。これ以外には電球があればOKです。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■「別売りの12V電球セットも忘れずにね」と言っておいたので、こちらもきちんと入手できてOK。ただし、クリヤーウインカー用のオレンジ球だったのがちと誤算。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■元のヘッドライト、テールランプの電球を外して12V用に交換します。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■ほら。クリアーウインカー用の球ですけどノーマルのオレンジウインカーに付けてみるしかありません……あとで点灯させてみると、そう問題はなかった。

ともかくいったんバラして、ネジ類の整備もやってみまして

固着したネジを外す作業。時に途中でネジが折れて、心まで折れそうな瞬間を味わうのが旧いバイクの整備ではよくあること。
ヤレた状態そのままでさりげなく愛用しているスタイルのせいちゃん。あちこちの塗装面にサビが浮いていようとメッキ部品が曇ろうと、あまり気にしていないようだったので、まずは全体の掃除から開始。
次に、簡単に外せる部品から外して、徐々に内側の様子を見ていきます。
幸か不幸か、このダックス70はオイル漏れ箇所が多かったため、外れないネジが少なくてすみました。スイングアームやアクスルシャフト以外、ほとんどが簡単に外れるという緩仕様(良いのか?)。
まさに「規定トルクって何ですかぁ?状態」です。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■いろいろと他の作業もあるので、邪魔になるカゴを真っ先に外しておきます。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■ヘッドライトの球を変えて、ついでにメーターの電球も12Vに交換する前の図。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■メーター球の交換ついでにゴム部品を掃除して、差し込みしやすいようにポリメイトで拭き拭き。掃除&保護措置もしておきました。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■前オーナーが書いたのでしょうか、ワット数をマジックで書いてあったテールランプの反射面。ここも12V電球に交換です。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■コンバートキットへの交換で、これまでの6Vのバッテリーはお役御免になります。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■銀色の筒状の物体はノーマルの6Vウインカーリレー。古き良き時代?の電気部品っぽい造りで、長年ご苦労さんといった雰囲気。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■左が12V仕様のウインカーリレーです。これを古いリレーから差し替えるだけ。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■古いバッテリーを外し、12Vのバッテリーまで接続したところ。まだ繋ぐべき配線があるのに何故か黄色の配線が見つからなくて、困りました。

見つからない黄色配線……どこに?

ふだん使いの部品への給油などを行いながらなので、時系列が実際と少し異なりますが、まずは電装12V化仕様変更の記録をご覧ください。
ネット販売で入手可能なミニモト製のキットを使用しながら、汚れていた配線などの掃除やバッテリーケースのサビ落としと塗装を実施。結果は、元の状態と比べれば随分と明るくなりました。
じつは、配線の途中にあるべき黄色の線が見つからず、思わぬ奥地に隠れているのがわからなかったために一時頓挫……しばらくしてから電気に詳しい友人に回路図から追ってもらうという事態が発生。
後でわかったのですが、キャブのインシュレーターがフレームに刺さる部分で、発電部から立ち上がる配線がその下敷きになって隠れていたのです。エアクリーナーとゴムのインシュレーターの接着外れに気づいて修理という段階で、やっとそれがわかったという始末。気がつくまで、結局ひと月ほど他の作業を進めつつ逃避してました(恥)。
楽しいながらも、少々頭を悩ませる古いダックス号。気軽にせいちゃんの要請に応えたのはいいのですが、このあとも予想外に大変なことになりそうな現代設計との違い。これが思い過ごしではなかった……。(以下、次回)

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■取り外したバッテリーケースの内側と金属部分を分離してみました。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■バッテリーケースのサビ落としをして、電装部品の懸架ゴム材を差し込む部分のバリ取りもしみじみと実施。他の箇所もエッジの鋭い箇所にはサンドペーパーを当てておきました。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■サビ取りをおおかた終えて地肌になったバッテリーケース。黒に塗装しておこうかな?

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■せいちゃんに連絡してみると、サフの状態にしておいてとのこと。サフを吹いて少し乾燥。寒い時期だったのでキャンプ用バーナーで軽く炙って「なんちゃって焼き付け」。おまじないレベルの工作です。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■12V化を9割終えたところで、黄色配線がまだ行方不明な状態のまま、出張仕事が連発。シートは閉じてこの状態に復元。しばらくの間、作業は中断です。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■電気に強い仲間が来てくれたので、配線図で追ってもらいました。

【プロカメラマン】ダックス70に七転八倒 1回目 6V編

■この頃にはキャブ周辺の手入れを開始していて、フレームに差し込むインシュレーターを外せる段階でした。こんなところに黄色配線、いたじゃん! おかげで12V化が完結。やれやれです。

レポート&撮影●小見哲彦


プロフィール●小見哲彦

無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーとしてバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を2021年より依頼されている。

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