お買い得なツインエンジン・ネイキッドに興味が湧き……
250ccクラスのバイクも新車価格が上がり、100万円近いモデルも珍しくない昨今だ。そんな状況下で懐が決して暖かくない中年ライダーにとって、油冷単気筒搭載のジクサー250シリーズに次いで買い求めやすい63万2500円という価格設定が魅力的に思えたのが、ヤマハのツインエンジンモデルMT-25である。
今回は、個人的な興味も大いに含め、軽二輪クラスでお買い得感の高いMT-25と、共通の車体で排気量を拡大した兄貴分MT-03(価格は68万7500円)を比較試乗し、それぞれのキャラクターの違いや魅力を確認してみた。




ライディングポジションと車格は共通。長距離も快適
両モデル共通の車格だが、身長173cmのライダーが跨ると、ステップが干渉せず両足が素直に地面に下ろせ、両足のかかとまでべったりと接地。膝にはまだ少し余裕があるほど足着き性は抜群だ。それでいてステップ周りが窮屈ということはなく、スポーティランにも対応する。ハンドル位置も比較的近くて高く、無理のないアップライトなポジションが作れる。

少し気になったのは、シートの座面がやや前下がり気味で、第一印象ではお尻後部への面圧が強めにかかる感触だったこと。しかし、実際に200kmほど走行してみるとお尻が痛くなるようなことはなく、結果的にまずまず快適なシートであることが確認できた。

エンジンフィーリング:荒々しさの03、滑らかさの25
約70ccの差がある排気量違いの2台を乗り比べて最も印象的だったのは、やはりエンジンフィーリングの違いである。まずは一般道での走りから。




【MT-03:排気量320cc、最高出力42ps/10750rpm、最大トルク3.1kgm/9000rpm】
最高出力42psは、一般的な250ccとは明らかに違う「プラス感」を乗り出しから感じさせてくれる。この数値、高性能な250ccモデルのZX-25RR(並列4気筒:46ps)だとその上を行くし、CBR250RR(並列2気筒:42ps)も比肩するものだが、それら2車よりも低い回転数から力強い加速が味わえる点に、70ccの差を実感できるだろう。
低中回転域では、粒の大きい明確な鼓動感を伴いながらキビキビと加速する。そして4000rpmからは生きのよい加速を見せ、9000rpmを超えた付近まで力感を伴いながら淀みなく回る。 ちなみに、街中を60km/h前後で走行する際は、トップ6速(回転は3700rpm前後)だと加速がややぎくしゃくするため、5速に落としたくなる場面もあった。一般道での速度レンジでは、4~6速を多用しつつ走る感じになるだろうが、それも特別苦なわけではない。
【MT-25:排気量249cc、最高出力35ps/12000rpm、最大トルク2.3kgm/10000rpm】
一方のMT-25は、振動の粒がきめ細かく、回転が滑らかなのが好印象だ。パワーの出方も素直なフラットトルク特性で、バランスが良い。説明が難しいが、上昇していく回転フィーリングが、綺麗に整っている印象なのだ。 市街地での55~60km/h走行時は、トップ6速に入れたまま走ることができる。使用回転数が03より高い分、一般道での25は6速ホールドのまま走れる範囲が広いという意外な発見があった。
高速道路での巡航性能とピーク性能の差は?
高速道路にステージを移すと、排気量の差は数値として表れる。 各速度域におけるトップギア(6速)での、エンジン回転数は以下の通りだ(あくまで目視した範囲での数値だ)。
■80km/h巡航:MT-03=約5000rpm/MT-25=5900rpm
■100km/h巡航: MT-03=約6300rpm / MT-25=約7400rpm
■120km/h巡航: MT-03=約7600rpm / MT-25=約8900rpm
そして最高速付近へ向かう伸び方も異なっている。MT-25は140km/hまでは素直に出そうな感触で、想定できる最高速は150km+αだろうか。対するMT-03は、140km/hまでは軽く到達しそうでトップスピードはおそらく160km/h+αだろう。10km/h程度の最高速差はありそうだが、前述のような高速での非合法な速度域では、ネイキッドスタイルの両車はともに風圧との戦いになるはずだし、実用的な速度域とは言い難いだろう。

そして、120km/hまでの速度域で言えば、03に対して1000rpm+α高い回転を使う25だが、その回転感の滑らかさゆえに非力で物足りないといった印象はなく、03よりも+2000rpmほど高くまで回り切ることが体感での性能差を補っていることも付記しておきたい。

低中速ワインディング&足回り性能:どちらもリッタークラスを追走可能
高速を下り、一般道をしばらく進んで奥多摩のワインディング(上り)に持ち込んでみたが、両車ともに軽快に切り返せる車体と相まって、パワーの盛り上がる回転域をしっかりとキープすれば、リッタークラスについて行けるポテンシャルを秘めている。
無論のこと、比較すればMT-03はトルクを活かして力強く登れる一方、MT-25は6000~10000rpmの間でエンジンをシャープに回し、美味しい領域を駆使して走る楽しさがある。そして、どちらもシフトフィーリングの節度がよく「シャキシャキ」と小気味よく変速できるのも印象深い。クラッチレバーの軽い操作感と相まって、細かい変速操作が苦にならないのだ。


ところで、03と25で装備差をつけているのがタイヤである。サイズはまったく同じながら、MT-03には前後ラジアルタイヤ(ダンロップ・GPR300)、MT-25にはバイアス(IRC・RX-01)が装着されている。パワーの出ている上級グレードのほうに、食いつきのいいタイヤを奢るという唯一の差別化を図っているのだ。




比較すれば、確かにMT-25の方が轍や凹凸通過でゴツゴツとした感触があり、車体は跳ね気味ではある。だが、すごく大きな性能差を感じるほどではない。とはいえ、もし25に乗っていて路面追従性と快適性で少し不満を持っているなら、03標準のラジアルへ換装すれば、少し上質な乗り味になるだろう。ちなみに、ブレーキは両車ともコントロールしやすく、必要十分な制動力を持っている。
燃費性能:意外にもMT-03が有利!?
結局、2台とも一般道から高速、奥多摩のワインディングという200kmほどの行程と、2回ほどの通勤で都合300kmほどをほぼ同じように走行したが、今回の試乗での実燃費は、以下となった。
●MT-03: 33.6km/L
●MT-25: 32.1km/L

排気量の大きい03の方が燃費が良いという逆転現象(?)が起きた。とはいえ、03は一般道で常用する回転域のほか、高速巡航時の回転数も25より若干抑えられたことが好燃費に繋がったのかもしれない。逆に25は、小排気量ゆえに常用する回転数が高くなり、結果として燃費が少し落ちたと考えられるが、大差ではない。両車ともほぼ同じで、ワインディングを含みつつツーリングペースで使用すれば、30km/L台の燃費はマークできるだろう。
そして、共通の14L燃料タンクによって、少なくとも350km以上の航続距離を確保しているから、ツーリングマシンとしてもなかなかのロングラン性能を持っている。
総評:「それぞれのオーナーは乗ってどう感じるか?」…… を夢想
もし03のオーナーが25に乗った場合、意外にも25のエンジン回転の滑らかさに好印象は持つかもしれないが、03の力強さも捨て難く、軽二輪の利点はあるとしても乗り換えようとはおそらく思わないだろう。 逆に、25のオーナーが03に乗った場合、パワーの違いは感じつつも「滑らかさと全体のバランスの良さで、やっぱり自分の25の方がいい」と再確認するかもしれない。


個人的な感想も多分に入っているが、そう思わせるほどに、MT-25のエンジンは回転とパワーのバランスのよさで、完成度が高く感じられたのだ。
気になった部分、気に入った部分

■リヤ周りはすっきり短くデザインするのが昨今の主流だが、MTも同様の意匠だ。リヤシート周辺にフックはなく、荷物をドローコードで固定することはほぼ考えられていない。そして「気に入らない人はフェンダーレス化して下さい」と言わんばかりに取って付けた感の強い尾灯、ウインカーの位置が個人的には好みではない。フェンダー周りを含めた統一感あるデザインにできないものか?

■「根元の付き位置が内側過ぎるのか?先端の接地位置の張り出しが足りないのか?」サイドスタンドに車体を預ける際、剛性感が物足りない。

■キーロック式で取り外せるリヤシート下は、底の浅いミニマムな収納スペースがあるが、ぎりぎりETC車載器が入る程度で、ほとんど収納力はない。車載工具は両頭のオープンレンチ、+−ドライバー、六角レンチ各1本、リヤサス用レンチなどを装備。

■シフトペダルの操作性は、シャキシャキとしたタッチで節度がよく、非大排気量車で欠かせない小まめな変速を楽しくする。スリッパークラッチ機構装備の恩恵でクラッチレバー操作も軽い。
おまけの考察:名車「RZ250」の4スト版再来に期待
ところで、 MT-25の「最高出力35ps」という数値を見て、ベテランライダーなら記念碑的名車「RZ250(水冷2スト並列2気筒)」を思い出すかもしれない。
現在、ヤマハの250ccネイキッドスポーツはこのMT-25のみとなっているが、同車のコンパクトで扱いやすい車体と並列2気筒エンジンをベースに、丸目ヘッドライトやティアドロップタンク、フラットなシートを備えた「RZ風のレトロネイキッド」が登場したならば……とも夢想する。間違いなく新たな人気を獲得し、この優れたエンジンがさらに長く愛されるきっかけになるのではないかと……。MT-09に対してXSR900が派生したように、MT-25に対するヘリテージモデルが生まれたっていいはずだ。


MT-03/MT-25 ABS主要諸元
< >内はMT-25 ABS
■エンジン 水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク68<60>×44.1mm 総排気量320<249>cc 圧縮比11.2<11.6> 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力31kW(42ps)/10750rpm<26kW(35ps)/12000rpm> 最大トルク30Nm(3.1kgm)/9000rpm<23Nm(2.3kgm)/10000rpm> 燃費26.4<26.5>km/L(WMTCモード値)
■変速機 6段リターン 変速比1速2.500<2.666> 2速1.823<1.882> 3速1.347<1.454> 4速1.086<1.200> 5速0.920<1.037> 6速0.800<0.920> 一次減速比3.043 二次減速比3.071
■寸法・重量 全長2090 全幅755 全高1070 軸距1380 シート高780(各mm) キャスター25°00′ トレール95mm タイヤF110/70R17<110/70-17> R140/70R17<140/70-17> 車両重量167kg
■容量 燃料タンク14L エンジンオイル2.5L
■価格 68万7500<63万2500>円
レポート&フォト●モーサイ編集部・阪本一史
ヤマハ発動機
TEL:0120‐090-819(カスタマーコミュニケーションセンター)
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/



































