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今や当たり前だけど「アルミフレーム、FI、倒立フォーク」国産車で初採用のモデルは?【日本車はじめて物語】

■1983年の登場当時、各雑誌媒体向けに紹介されたスズキRG250Γの全部品の分解写真。こうした写真をわざわざ撮影したことからも、同車に賭けたスズキの意気込みが感じられる。

フューエルインジェクション(電子制御燃料噴射):カワサキ Z1000H(1980)

従来からの燃料供給装置だったキャブレターに代わり、フューエルインジェクション(FI)を初採用したのは、カワサキの輸出向けモデルZ1000HとアメリカンモデルのZ1クラシックだった。
当初採用したのはドイツのボッシュ製Lジェトロニックだったが、4輪用メインで使われた同機構の2輪への転用では、機能面のほかコスト、サイズや重量面で課題が多く残された(兄弟モデルのZ1000 MkIIに対して約10kg重くなったという)。

そこで自社開発したのがカワサキ独自のDFI=デジタル・フューエル・インジェクションで、国内販売車で初採用したのはZ750GP(1982)。しかし、当時の技術ではキャブレターの自然でパワフルな特性に肩を並べることが難しく、またコスト高もネックとなった。その後、他社も含めてFIが高性能車に普及し始めるのは、1990年代後半になってからだ。

当時の技術レベルでは、試験的な採用の意味合いも強かったFI搭載車のZ1000H。
4輪では採用実績の高かったドイツ・ボッシュ製のFIシステム「Lジェトロニック」を、二輪用に適正化して採用したZ1000H。しかし、キャブレターを上回る理想的なパワー特性にはならなかった。

■カワサキ Z1000H主要諸元
エンジン:空冷4ストローク並列4気筒DOHC2バルブ ボア・ストローク70.0×66.0mm 総排気量1015cc 
性能:最高出力96ps/8000rpm 最大トルク9.1kgm/7000rpm
変速機:5段リターン
車重:245kg(乾燥)
発売当時価格:──(輸出専用車)

負圧式キャブレター:ホンダ ドリームCB450(1965)

燃料と空気をミックスして、エンジンに送り込む混合気を作るのがキャブレター。従来は、開閉バルブを直接スロットル操作でのワイヤー引きで行う強制開閉式が主流だった。

だが、エンジンのピストン下降時に発生する負圧を利用し、エンジン回転発生時の負圧に合わせてキャブ頭部に設けられたピストンをスライド開閉させるようにしたのが負圧式キャブレターだ。4輪スポーツカー用のSUキャブの仲間でもあり、アクセル操作をラフに行ってもスムーズな回転が得られるほか、マイルドで扱いやすい特性に貢献するのが特徴。

4輪ではホンダS500が最初で、2輪での世界初は1965年のホンダCB450に装備のケーヒンCV型だった。その後1970年のヤマハ XS-1にはミクニ製の負圧型BSキャブを装備。2ストロークのGT750にも、1974年からBSキャブが使われた。

北米市場など、海外向け販売戦略も意識した高性能車だったドリームCB450。国産初のDOHC機構採用エンジンの搭載でも有名。
発表当時のモーターショーで公開されたCB450のエンジンカットモデル。バルブ作動部のトーションバー・スプリングという独自の機構採用も注目を集めた。

■ドリームCB450 主要諸元
エンジン:空冷4ストローク並列2気筒DOHC2バルブ ボア・ストローク70.0×57.8mm 総排気量444cc
性能:最高出力43ps/8500rpm 最大トルク3.82kgm/7250rpm 
変速機:4段リターン
車重:187kg
発売当時価格:26万8000円

アルミフレーム:スズキ RG250Γ(1983)

1980年代を迎える以前、一品モノのワークスレーサーのフレームやスイングアームなどにアルミが使われることはあったものの、量産車で初めてアルミフレームを採用したのは、レーサーレプリカの火付け役として人気が沸騰したスズキのRG250Γだった。

アルミの構造物が量産しにくいのは、熱伝導が良いために溶接時の熱ひずみが大きく、溶接性が悪いことが当時ネックだった。そんなアルミフレーム量産の決め手は溶接箇所を少なくし、極力部品の一体化を進めて造ることだったという。
その後1980年代後半に入ると、国産各社の高性能モデルにもアルミフレームが採用されるようになった。

アルミフレーム初採用のほか、250ccクラス最高の最高出力45ps、カウル装備など、注目装備のオンパレードで人気が沸騰したRG250Γ。
量産化に際して、随所に苦心・工夫が盛り込まれたRG250Γのアルミダブルクレードルフレームを、スズキはAL-BOX(アルボックス)の呼称でアピールした。

■スズキ RG250Γ主要諸元
エンジン:水冷2ストローク並列2気筒パワーリードバルブ ボア・ストローク54.0×54.0mm 総排気量247cc
性能:最高出力45ps/8500rpm 最大トルク3.8kgm/8000rpm
変速機:6段リターン
車重:148kg
発売当時価格:46万円

モノショック:丸正自動車製造 ベビーライラックJF(1953)

リヤ1本サス(モノショック)機構は、意外にもセミスクーターのベビーライラック(87cc単気筒)が、スイングアーム内直立スプリング式で初採用した。製造したのは、今や廃業した丸正自動車製造。同社は戦後間もなくの1948年にオートバイ製造に乗り出し1966年に廃業するが、1950年代に革新的なメカニズムを搭載したモデルを数々リリースした。

またプリロード可変式の同車は、1955年の浅間レース125ccクラスで90cc程度の排気量ながら2位になり走破性の高さを見せた。
一方、油圧ダンパー式のモノショックでは、ヤマハの1972年ワークスモトクロッサー・YZ637(250cc)、市販車では1974年の競技用モトクロッサーのYZ250、公道車では1977年発売のトレール・DT250Mが初採用車になる。

小型バイクのモペッドブームも意識し、女性にも乗りやすい機能性を盛り込み開発されたベビーライラック。シャフト駆動も特徴。

■丸正自動車製造 ベビーライラックJF主要諸元
エンジン:空冷4ストローク単気筒OHV2バルブ ボア・ストローク48.0×48.0mm 排気量87cc
性能:最高出力3.2ps/5500rpm 最大トルク0.45kgm/5000rpm
変速機:2段
車重:76kg
発売当時価格:7万8000円

フロント倒立フォーク:カワサキ ZXR400(1989)ほか

倒立式のフロントフォークはBMWのR25(247cc単気筒)など、1950年代までに多く見られたが、本格的な油圧方式は1982年の米国サスペンションメーカーのサイモン製が初。以後スウェーデンのサスペンションメーカー、オーリンズが製品化し1986年のワークスモトクロッサーのヤマハ YZM500、ホンダ RC250Mに装備された。

その後オランダで創業のサスペンションメーカー、ホワイトパワー(現WP)がオンロード用を開発し、国産の公道量産車では1989年3月発売のカワサキ製レーサーレプリカ・ZXR400、同年4月発売のスズキのトレールモデル・TS200Rが純正で装備した。

F3レーサー・ZXR4のレーサーレプリカとして登場したカワサキ ZXR400。クロスミッション、シングルシート、アジャスタブルリヤサスを装備したプロダクションレース向けのZXR400Rも併売された。
元々モトクロッサーから採用され始めた倒立フォークだが、同じオフ系モデルに初採用という点で言えば、その最初はスズキのTS200R(1989)になる。

■カワサキ ZXR400主要諸元
エンジン:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク57.0×39.0mm 総排気量399cc
性能:最高出力59ps/1万2000rpm 最大トルク4.0kgm/1万rpm
変速機:6段リターン
車重:162kg(乾燥)
発売当時価格;73万9000円

report●小関和夫、阪本一史 photo●ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ、八重洲出版 まとめ●阪本一史

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