■フォーク一連の作業を終えたDAXです。ホイールもリム部分を補修して小綺麗になったかと。
ボトムケース下のボルトが外れない!
こんにちは! カメラマンの小見です。
前回は、フォークの脱着までをお伝えしました。その続きです。
「びよよ~ん」とダンパーがまるで利いておらずオイルも漏れたままのフロントフォーク。これは、持ち主である隣のせいちゃんからの当初の要望(12V化やスロットル系修理など)こそ一応片付けたとはいうものの、そのまま返す前に整備した方が良かろう。そう打診してみると、できたら整備してほしいとのこと。
ところが。
実際取り掛かってみると、フロントフォークはボトムケース下側のボルトを外すのが定番セオリーと思ったのに。ネジを外そうにも外れない。しかも締め込んで増し締めしてみる作戦もできなくなってしまったのです。
瞬間的入力で大抵は何とかなるはずなんだけど、なんでだ?と四苦八苦。数日後にご近所のホンダ系列の老舗であるドリームハウスさんにフォークを持ち込み、エアインパクトやら差し込む固定工具やらで回してみても、内部が滑ってダメ。
このままではインナーチューブが外せない!と、一同考え込む事態に陥ったのです。

■このボルトが今回の騒動を引き起こしたプラスネジ。じつは禁断の扉だったのです。油のにじみが無かったら放置しておくべきボルト。

■車体から外してライトステーなどのカバー類を撤去したDAXのフォーク。年式によって違う形式もありますが、このタイプはメッキのカバーがボトムケースにはまっています。

■カバーの中で水分が熟成?されていたようで、オイルシールとサークリップ付近はこのとおり。

■インナーチューブの外側についているスプリングも、下側が特に酷くてこのありさまです(泣)。

■外側はともかく、インナーチューブに接触するであろう内側も丁寧にサビ落としをしてみます。

■ボトムケース下のボルトが抜き差しならない状態に陥ってしまい、ドリームハウスさんに相談へ。やっぱりインパクトを使っても、中に金属の棒でストッパー役を差し込んで固定してみても、緩めも締めもできず一時は「どうしましょう?」状態に。

■パーツリストからの推測でオイルシールを外して抜く決断をしてみると……抜けました。なんか普通のフォークを思い浮かべると足りないような気分です。

■いろいろな特殊工具や治具を出していただいて、ドリームハウスさんにはお騒がせしてしまいました。

■DAXのフォーク、この分解図が原因究明に役立ちました。最初に見ておけば良かったですね。
パーツリストに答えがあった!
ふと、メカニックの木間さんが所有している当該年式のDAXパーツリストを確認してみると、ボトムケース内部にオイルロックピースらしきものが見当たらず、もしかするとボトムケース内にはメーカー製造時に一体化するよう組み付けてある円錐状の部材があり非分解扱いなのでは?……という推測が成り立ちました。
普通の正立フォークであれば、インナーチューブの中にもう一本中空のロッド状のものが入っており、それがボトムケースと下側のボルトで結合される構造。
そのロッド自体が無かったんです。つまり、DAXの場合インナーチューブとボトムケースの結合を解くにはオイルシールのサークリップを外して引っこ抜くだけで良かったのですよ!
昔はそんな事とはつゆ知らずDAXでウイリーしたりして遊んでいたものですが、よく大丈夫だったなあと少しビビリました。ドリームハウスさんのおかげで内部構造の謎が解けたわけです。

■元のフォークがボトムケースがダメになっているので、中古フォーク(2号フォークと仮称)を入手。はたして中身はどんなだろう?

■分解成功後に仮組みした1号フォークと、サビサビの2号フォーク一式(上側)の比較。

■外側は惨憺たる2号フォークでしたが、内側の外式スプリングの程度は悪くありませんでした。こっちを再メッキして有効活用しようかな。

■ところがどっこい2号フォークのメッキカバー。固着していてどうにも外れないので、切断して撤去。この部分は1号フォークのカバーがマシだったので、そちらを使いましょう。

■2号フォークの片側が腐食でやけに汚かったため、ポリッシャーと240番のペーパーで粗削り。けっこうボコボコなのを少し均してから純正風にシルバー塗装ですね。

■2号、もはや勝手が分かったので、オイルシールのサークリップを外してボトムケース単体にするのも簡単です。

■何故だかポコッとした5mmくらいの窪みが気になります。これはアルゴン溶接で肉盛りとかしても内径に歪みが出ては困るので、熱を加えない方法で補修した方がいいのかも。

■硬度があるていど期待できそうなところで、ZZR600でも活用したエポキシ多用途パテ。これを窪みとメッキカバー切断の際に少し削っちゃった傷に盛ります。

■入念な脱脂後、目立つ窪みに多用途パテを盛った図。2日間放置して円筒状に削りました。
DAXフロント周りをもう1セット入手して
さて、分解できたはいいのですが、オイル漏れしてたうえに緩めてしまったボトムケースのボルトをどうしましょう。
緩み止めのロックタイトみたいなものが、数十年の経過で硬化しちゃってこうなったのか?
いずれにせよ、こんな状態ではフォークオイルの注入もできません。別の個体を探さないと再び走らせることができないので、せいちゃんに別途、別個体を落札してもらうことになったのは辛いところでしたが、奇しくも同年代のDAXフロント周りが出品されていたのは幸運でありました。
落札して手元に届いたフォーク、ボトムケースはいちおう大丈夫だったものの表面の荒れが酷くてアルミ地肌の劣化や陥没箇所があり、補修にエポキシパテを併用したうえで再塗装。
塗装前にはポリッシャーでなるべく腐食を落とし、できるだけ均一化してシルバーに塗ったのち、市販のアクリルラッカーのクリヤーを吹いておきました。また外式スプリングは、都合2セット手元にあることとなったフォークのうち程度の良い方をユニクロ再メッキを工場に依頼して表面処理。残る1セット分はサビをなるべく落としたうえでサビ止めジンクスプレーを吹いて処理後せいちゃんにご返却。
フォークのカバー類もアイボリーっぽい缶スプレーで塗装し直したうえで、クリヤー塗装を実施。

■後々を考え、2号フォークのアンダーブラケットもサビを落として再塗装。予備パーツです。

■これまたフォーク分解の合間に、前輪のリムも分離させて補修塗装します。タイヤとの隙間をマスキングしておいての塗装です。タイヤの側面はアセトンで拭き取れば市販の缶スプレーは割と楽に落とせます。

■左は1号フォークのサビが進行していたので予備扱いでジンクスプレーだけ吹いて保管。右の2号フォークのスプリングがユニクロ再メッキを施した後です。キラキラ。

■以前とあまり変わらないヤレ具合というテーマに沿った作業のため、元のカバーはタッチアップ。2号フォーク付属のカバー類を予備用として全体的にサビ落としして軽く再塗装しておいた。

■これらが先々のための2号フォーク予備カバー&ブラケット類。もう、当分安心でしょう。
塩ビパイプを使ってオイルシールを打ち込む
塗装が全部終わったら、インナーチューブを入れて、オイルシールを水道管用の塩ビパイプで打ち込み、サークリップを固定して、オイルを注入です。オイルシール打ち込みに丁度よさそうな水道パイプをホームセンターで見つけたので試してみたら、簡単にオイルシールが入ったのはラッキーでした。
まったく、ボトムケース下のボルトを緩めちゃダメなんて「落とし穴」みたいな構造でしたね。古いDAXでフォークオイルが漏れている方、この点、くれぐれもお気をつけください。
スロットルの戻らない現象や電装の12V化以上に、このフォーク整備には勉強させられました。
オイルを規定量入れて車体を復元させてみると、今度は一応スプリングが利いたフォークに戻って安心感のある作動になりました。フロント周りも小綺麗になって、ちょっと満足。
こうなればリヤ側も、スイングアームの動作確認をしたり、少しキレイに手直ししておきましょう。 (続く)

■塗装まで終えたボトムケースにインナーチューブを組み、「新品オイルシール取り付けの儀」を執り行います。なぜか感慨深いものがあります。

■特殊工具の代わりに採用してみた水道管パイプ。このサイズのパイプ、肉厚もまあまあイケそうな厚みがあったので、上からスポンスポンやってみたらオイルシールが良い感じでハマりました。

■全体像はこんな感じ。塩ビパイプの上からハンマーで軽くゴンゴンたたいただけでOKでした。

■分解当初のサビサビ状態から、やっとスッキリしました。

■ボトムケースに付けるメッキカバーは1号フォークから移植。スムースに接続できました。スプリングを組んでカバーを取り付けたら車体への組み付けです。

■だいぶ小綺麗になったでしょう。いつの間にか感情移入してしまっていますね。

■補修塗りした前輪リムと、表面の酸化皮膜を落とす程度にしておいたハブを接続させます。

■フェンダーの再クロームはコストアップとヤレ具合が変わってしまうことになるので、磨いて現状のままとしておきます。

■手持ちに残っていたヤマハのサスペンションオイル・10番を規定量入れたら作業完了です。オイルシールの慣らしやインナーチューブ&スプリングの接触具合もあるので完成後は少し慣らしをしてもらいましょう。フロント周りの作業、全塗装なしでも長かった~!
レポート&撮影●小見哲彦
取材協力●(有)ホンダウイングドリームハウス
プロフィール●小見哲彦
無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーとしてバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。月刊『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を2021年より依頼されている。
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○取材協力
(有)ホンダウイングドリームハウス
電話:047-368-3332
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