「自分、センスないからさ…」
「私、全然上達しないもん…」
教習所の二輪コースを眺めるベンチで、ぽつりと漏らされる小さなため息。
日々教習現場に立っていると、落ち込んでいる生徒さんの姿をよくお見かけします。
そして、そうやって自信を失ってしまった生徒さんたちが、まるで合言葉のように口を揃えて仰るのがこの言葉です。
「私、センスがないからいつまで経っても上達しない。ぶっちゃけ、バイクの運転に向いてないのかも…」
「風を切って走りたい!」「カッコいいバイクで遠くへ旅に出たい!」
せっかく大きな勇気を出して教習所の門を叩き、バイク免許への道を歩み始めたはずなのに。教習を何度受けても思い通りにバイクをコントロールできないと、悔しいですし、気持ちも折れそうになりますよね。周りの生徒さんがスムーズに課題をクリアしているように見えて、焦ってしまうお気持ちも本当によく分かります。

ここで、多くの方が抱く素朴な疑問が浮かび上がります。
「果たして、バイクの運転に向き・不向き(センスの有無)は本当に存在するのでしょうか?」
そして、今まさに教習所で奮闘している方はもちろんのこと、すでに免許を取得して公道を走っているライダーの皆さんにとっても共通する「ライディング技術を飛躍的に向上させるための最短ルート」とは一体何なのか――。
こんにちは!現役の二輪教習指導員として日々教習現場で多くのライダーの卵たちと向き合い、YouTubeチャンネル『VREAST(ブレスト)』では“バイクの楽しさや魅力を伝える動画”を日々発信している「ばく」です。
今回は「バイクの向き不向きの真相」と「誰も教えてくれない上達への最短ルート」について、分かりやすくじっくりとお話ししていきたいと思います!

運転は「頭の回転スピード」がモノをいう?
バイクに限らず、四輪車(クルマ)の運転でも全く同じことが言えるのですが、いわゆる「運転が得意な人」「センスがあると言われる人」には明確な共通点があります。
それは、走行中に絶えず変化する周囲の状況に対して、以下の3つのプロセスを驚くほどのスピードと正確さで処理しているということです。
1. 【認知】 道路状況や障害物、走行ラインの選定、など、必要な情報を正確かつ素早く見分ける
2. 【判断】 得た情報をもとに「危険はないか」「どう動くのがベストか」を瞬時に分析する
3. 【操作】 判断した結果を、アクセルやブレーキ、クラッチ操作、体重移動といったライディング操作に的確に反映させる
この【認知 ➔ 判断 ➔ 操作】という一連のサイクルが素早く正確にできる人こそが、世間でよく言われる「運転に向いている人」の正体です。
……と、ここまで聞くと、こう不安に思う方がいらっしゃるかもしれません。
「えっ…じゃあ元々の頭の回転が速くないと、バイクに向いてないってこと!?」と。
答えは、断じて「NO」です!安心してください。
この「認知・判断・操作」のスピードは、決して生まれ持った天性のセンスではありません。
これは、「走行経験を重ね、頭の中に『判断材料(データ)』をたくさん蓄積し、正しくトレーニングしていくこと」で、後からいくらでもスピードアップさせることができる能力なのです。
最初から完璧にできる人なんていません。重要なのは、日頃の走行時から意識的にしっかりと目を動かし、危険や道路の情報をひとつでも多く取り込むこと。「今どう走るべきか?」を頭で考えながら走る習慣をつけること。要するに“目線”が肝です。この小さな意識の積み重ねこそが、安全走行への近道であり、上達への確実な第一歩となります。

上手くなるために“最低限”必要なこと
では、経験値を効率よく積み上げ、一刻も早く上手くなるためには何が必要なのでしょうか?
僕が日頃の教習現場で、生徒の皆さんに「口が酸っぱくなるほど徹底的に伝えていること」がひとつだけあります。
それこそが……【正しい運転姿勢(ライディングフォーム)】です。
「どれだけ練習しても、なぜかクランクやスラロームが上手くできない」
「自分の意図した通りにバイクが曲がってくれない」
もしあなたがそんな壁にぶつかった時は、どうか「自分にはセンスがないんだ」と悲観しないでください。センスを疑う前に、まずは一度、ご自身の「運転姿勢」を客観的にチェックしてほしいのです。
人間の身体とバイクは密接に繋がっています。土台となる運転姿勢が崩れていれば、あなたの身体は思い通りに動かず、身体からの命令を受け取るバイクも正しく反応することができません。

【チェックポイント】あなたのフォーム、こうなっていませんか?
教習所で上手くいかない方の多くは、無意識のうちに以下のようなフォームの崩れを引き起こしています。
・骨盤が前に倒れすぎている、あるいは後ろに寝ている
➔ 体幹の軸(重心軸)がズレてしまい、バイクに荷重がうまく伝わらず、車体の反応がワンテンポ遅れてしまいます。
・手首が上がってしまっている
➔ セルフステア(バイクが自然に曲がろうとする力)を邪魔してしまい、ハンドル操作を「腕の力」だけで抑えつけようとするため、上半身がガチガチに力んでしまいます。
・グリップを「親指と人差し指」で強く握りしめている
➔ 腕の筋がピンと張ってしまい、路面からのショックを吸収したり、細やかにハンドルを操作したりする柔軟な腕の動きが完全に損なわれます。(※グリップを握るベストな基本は、「小指と薬指」をメインにして軽く添える程度に握ること)
※各ポイントについては過去の記事で詳しく解説しております。
つまり、「自分にはバイクのセンスがない」と思い込んでいる人の9割以上は、センスが無いのではなく「単にバイクが素直に動いてくれる正しい姿勢が作れていないだけ」というのが、教習現場における紛れもない事実なんです。

まとめ:正しい姿勢を知ることこそが、最高のショートカット!
当然ですが、ライダーの体格や筋力、乗っているバイクの車種やハンドル位置によって、ベストなライディングポジションは一人ひとり異なります。
1. 自分の体格と愛車に合った「正しい姿勢(フォーム)」を正しく知ること
2. 走る時は常にその姿勢を意識してコントロールすること
回りくどい練習を延々と繰り返す前に、この「土台」をしっかり固めることこそが、無駄な遠回りを一切せずにライディング技術を爆上げするための「唯一無二の最短ルート」と言えます。
「自分には向いてないかもしれない…」と諦めてバイクを嫌いになってしまう前に、まずは次のライディングでご自身のフォームから見直してみませんか?正しい姿勢さえ身につけば、バイクは驚くほど素直に、そして軽快に動き始めてくれますよ。
次回も一緒に、安全で最高のバイクライフを目指していきましょう!
以上、現役二輪指導員YouTuber『VREAST』の「ばく」でした!
文●ばく

二輪指導員歴19年。現在も教習所でライダーのタマゴたちを育て、日々の教習で自身も学びながら生徒たちと共に成長を楽しんでいます。
YouTubeでは相棒はなちゃんとVREAST(ブレスト)というチャンネルで、“教習所課題でわかるバイクの本質”をテーマにバイクのインプレッションやツーリングやメンテナンスで“バイクの楽しさ”を伝えています。
愛車はKAWASAKI900super4 Z1・F.B Mondeal SMX125・HONDA TLM200
YouTube:@VREAST




























