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2021年は新車の納期が大幅に延びた一年となった
2021年は二輪車・四輪車を問わず「新車が買えない」一年となりました。その理由のひとつには新型コロナウイルスの影響によるサプライチェーンの分断があります。
特にロックダウンを実施した国でパーツを作っていたりすると、その部品がないだけで車両の生産が止まってしまうケースもありました。ほかにもコロナの影響で物流が寸断されたため、部品が届かず思うように生産できなかったケースもあると聞きます。
たとえば、日本の熊本工場で作っているホンダのスーパースポーツ「CBR1000RR-R ファイアブレード SP」にはイタリアのブレンボ製ブレーキが標準装備されていますが、新型コロナウイルスの影響が欧州で猛威を振るっていた頃に、物流が途絶えてしまい日本での生産が思うようにならなかったという話もあります。
また、完成車の物流についても新型コロナウイルスの影響が出ています。二輪車・四輪車ともにグローバルに生産拠点を持つ時代ですから、物流の滞りはとにかく新車を作りたくても作れない状況に繋がってしまったといえます。
もうひとつの新車販売における大きな問題は、各メディアなどで報道されているように半導体不足の影響です。いまどきインジェクションでないエンジンを使っているモデルはほとんどなく、大型モデルになるとトラクションコントロールなど様々な電子デバイスを搭載しています。
このように半導体の利用箇所が増えているということは、半導体不足の影響をモロに受けることになります。
2021年は中古車価格も高騰を続けた
こうして新型コロナウイルスと半導体不足のダブルパンチによって、どのメーカーも思うように新車が作れない一年となってしまいました。
正直、コロナ禍によって需要が沈んでいた時期には目立たなかった新車の供給不足は、2021年になり景気が回復してくる中で顕在化してきたといえるでしょう。
新車の供給が減るということは、中古車市場に流れる車両も減ることになります。それだけでも需要と供給の関係から、市場価格が上昇することは経済の仕組みにおいても基本的な流れといえます。
しかし、新車の生産が滞ってしまい納期が伸びていることから、すぐにでも乗りたいユーザーにとってある意味では、名義変更さえすれば乗れる中古車は納期という点で新たな価値を生みます。こういった背景も中古車価格の上昇に繋がっています。
2022年はどのような市場になるのか?
はたして、こうした状況は2022年にも続くのでしょうか。それとも改善するのでしょうか。
少なくとも、年初から状況が良くなることは考えづらいのが正直なところでしょう。半導体不足については解決の目途が立っていませんし、新型コロナウイルスにおいても感染力の強い変異株の発見が世界各地で報じられています。
コロナ禍・半導体不足のダブルパンチ状態は、まだまだ続きそうです。つまり、新車の供給が十分に回復せず、相変わらず中古車相場も高値安定という傾向は変わらないと予想されます。
ただし、いずれの要素においても影響を抑えようと社会も業界も動いています。
新車の生産については、サプライヤー(部品メーカー)も含めて供給量を確保する方向で動いています。
なにしろ、工場を稼働させて新車を作らないことにはビジネスは成立しないのが自動車産業です。基本的に大量生産前提のビジネスですから、希少性で価値を上げてそこで稼ぐことはあり得ないのです。
それでも最近では、新型車が出ると発売前の段階で予約するというユーザーが増えている印象があります。新型車の試乗をして、ライバルと比べて……などと検討しているうちに納期が一年先になってしまうといったケースが増えていることから、ユーザーが欲しいと思った魅力的なモデルについては早めに予約すことができる流れにもなっています。こうしたトレンドから新車購入をするユーザーにとっては、情報収集力が重要となっていきます。
一方、中古車市場においては相場が上がり過ぎた感は否めません。いくら供給不足だからといっても、新車価格を超える値付けが当たり前になっているのは異常な状況です。
では、中古車価格が上がり過ぎると何が起こるのか。適正でない価格ではさすがに財布の紐は固くなってしまいますし、そもそも手の出せない価格帯ではユーザーは諦めてしまいます。
そうなると中古車屋さんとしては高価な在庫を抱えるだけの状態になります。中古車ビジネスというのは在庫を現金化して、その現金で次の在庫を仕入れて、売値と仕入れの差額で稼ぐというビジネスモデルです。
高価な在庫を抱えているだけの状態は、一見すると儲かりそうな様子に見えますが、それが売れなければビジネスは回っていきません。
おそらく、2022年にはいよいよ在庫を抱えているだけではどうにもならなくなった中古車業界が全体的に相場を下げてくることになるでしょう。期末の決算期には、そうした動きが目立つようになってくると思われます。ひとまず2022年の中古車相場状況に要注目です。
レポート●山本晋也 編集●モーサイ編集部・小泉元暉