■せいちゃんは、やれ感そこそこ+足周りが綺麗になったダックスに、めっちゃ喜んでくれました。
急ぎ、リヤを……
お隣のせいちゃんから預かったダックス70。分解してから、すでにだいぶ経ちました。
ようやく難解だったフロントフォークのトラブルを片付けられてほっとしました。ですが、前側だけきれいになってしまうと、こんどは汚れの激しいリヤ周辺も気になってしまいます(人情)。そしてその頃になると陽気のせいか、せいちゃんも乗りたくなってウズウズしてきたらしく、
「完成まで、あとどのくらいかな~」と。
ならば作業を急ぎましょう!
リヤ周りをバラしてみると動きが渋い!スイングアームが動かない
大きめのネジを軽く緩めてから車体をジャッキで浮かせて、まず後輪を外しました。ブレーキロッドやトルクロッドに相当する部分は後から外すとして、スイングアームからバネとダンパーのショックユニット下側を外してみたんですよ。普通なら、スイングアームは自重で下がるはずですよね。ところが、ショックを外してもスイングアームは元の角度のまま。動きがシブいのは一目瞭然で、「やっぱりリヤも点検してよかったわー」とひとり納得。
そこから先は、ドラムブレーキの点検。フロントのように油が染み込んではいなかったのと、摩耗具合がそれほどでもなかったので、ハブ内部の脱脂と清掃だけで良しとしました。
スイングアーム自体はサビが案外深くまで浸食していました。サビがひどい部分は少し深く削り、ほかは元の下塗りを残すように全体を研ぎました。もう、ここは塗装しちゃいます。
■フロントフォーク周辺が美化されたのに対して、リヤ周りのこのサビと汚さはいただけないですね……。
■もう、思い立ったが吉日とばかりに、とっととリヤホイールを外しちゃいます。
■ホイールを外して、ショックユニットの下部を左右両側外したんですよ。何でスイングアームは下がらないんでしょう(普通は下がる)?
■この時期、強風も吹き込むので作業できない日に転倒を防止すべく、屋根の足場パイプからベルトを通して安全策を講じておきました。
■ピボット部分のシブいところを解消させ、美化運動開始。亀裂みたいなサビ跡がイヤなので、なるべくそこは深く研いで再発防止を。バリも削りました。
■片側がある程度終わったので、アセトンで1回目の脱脂。
■しつこく研磨と脱脂を繰り返し、アクリルラッカーのベージュで再塗装。
■ピボットのボルトはスルスルに復活。組み付けたときにたっぷり高性能グリスを塗布。
■リヤホイールの仕上げが部位によって違うので、締結ボルトを外して分離。
■ハブの汚れを半分落としてみると、油分の残る右側とこの違い。アセトンで全面清掃。
■ホイール外周の鉄部分はサビの侵食があったのに対処して再塗装。このシルバーの塗料、やけにメタル感が強いですね。
ホイールやブレーキの各パーツを磨いて塗装など
一方、全体が汚いホイールは、ハブとホイール外周部を分離させて処理を変えてみました。
ハブの外側は何か味のあるシルバーの塗料が残っている上にチェーンの油分がコーティング状態となっていたのでサビはなし。きれいに脱脂して磨いて終わり。
ホイールの外周はサビていたので、ペーパーで研ぎ、スプレーで全体をシルバー&クリヤーに塗装しておきました。
ブレーキのドラムパネルも純正のクリヤー層の下まで、びっしり模様が入っているかのように傷んでいたので、ひと皮剥いてからシルバーで表面保護的に塗装です。
だいぶ見栄えが良くなってきました。筆塗りされていたショックユニットは、スプリングのサビ落としも含めて、アクリルラッカーで塗装し直しておきます。それにしても、せいちゃんの前のオーナーはなぜ筆塗りで補修したんでしょうね。単純に、部品を外してスプレー塗装するのが面倒だったんでしょうか。
スイングアームはピボット部分の内側、ピボットボルトも表面の傷みを修正&グリスアップ。滑らかに動くようになったので、ショックユニットを含めてホイールと一緒に組み立てました。
やっとチェーンやガードを付ける手前まで復元できました! 油汚れのなくなったリヤホイールを見ると、妙に嬉しくなります。まるで自分のバイクのようです!
■ドラムブレーキの外側パネルの腐食はヒドイ! 本気でやるなら徹底的にブラストして完全にヒビ的傷みを落としたいのですが、ヤレ感少し残しの要望ゆえ、軽度に処理。
■軽く再塗装。垂れたところは修正して、「数回塗っては乾燥」を繰り返します。
■ドラムパネルが、当初より「普通」に戻りました。
■リヤのシューは厚みにまだ余裕があり、油分が入り込んでおらず、研いで連投。
■スイングアーム、ホイールを仮り付け。今度はちゃんとスイングアームが下がります。ピボットボルトの締め付けトルクには気を遣いました。
■筆塗り補修されていたリヤショックユニット、これまたサビの深くまで入っているところを研磨。上側のアルミ部分はこのあと軽く研いで保護塗装。ここも脱脂は入念に。
■逆側のリヤサスをご覧ください。これぞ過去の筆補修の痕跡。研磨して塗り直したくなるでしょう?
■カバー部分がきれいになってくると、スプリングもどーにかしたい! 片側(写真では上側)を「さびとりつや之助」でしつこく磨くと、まあまあ復活。
■ここまで復活させたので、あとは上側のアルミ部分を軽く磨いたらヨシとします。
■ブレーキペダルのサビを落として黒を再塗装。ブレーキロッドもサビを落とし、クリヤーを何度も乾いては塗り、塗っては乾かし……で保護措置。ユニクロめっきしたかったですね。
■足周りは缶スプレーでの処置が多くなりましたが、フレームのやれ感を残した補修には水性の塗料を薄めにして筆塗りでタッチアップしてみました。元の車体色が褪色していたのもあって、厳密に同じ色を出しにくかったためです。
■タンデムステップまで取り付けて、各部ピボットボルトを確認。だいぶいいぞ!
■リヤホイールが付いたので、上からつっていたベルトを解除。もう動かせます。
エアクリーナーボックスをセメダインで補修
数日後。残る作業は、インシュレーターが外れて捻くれたエアクリーナーASSYの修理と、バルブのタペットクリアランス調整の確認、キャブ内部の点検清掃。これらに取り掛かります。
エアクリーナーボックスの後部に接続されているべき太い「ゴムのチューブ」。ここは12V化する際にイエローの配線を隠していたにっくき部材……じゃなくって、フレームの内側から空気を吸って、吸気に雨水が混じらないようにする大事な部材と考えるんですよね。
円筒形のエアクリーナーにちゃんとくっついていないとダメなのに、外れたままにしておいてしまいました。
ブローバイの油分がたっぷり残っていたので、しつこく脱脂してから、弾力性が乾燥後も残る接着剤=セメダイン・スーパーXをたっぷり塗って接続し、数日間乾かしてみました。今度は簡単には外れません。雨水にもしばらくは耐えてくれるはずです。
■この部分が外れてパイプ部分だけフレーム内に取り残されていたんです。なんで捻れて外れていたんだろう?
■捻れていた部分を気長に少し戻し、エアクリーナーボックス本体への再接続を行います。ブローバイの油分浸透に悩まされました。油分がなかなか落ち切りません。
■スーパーXをたっぷり塗って再接着。数日養生しておき乾燥させました。
■車体にエアクリーナーボックスを取り付けます。今度はちゃんとパイプ部分がフレーム内部へ。
キャブ清掃と、タペットクリアランス調整で、燃焼も良くなるハズ
エアクリーナーをフレームにねじ止めしておいて、キャブの清掃をしてみました。燃料コックと一体化したキャブです。純正のOリングを取り寄せておいてから各部を外していき、全部分を清掃し、中に溜まっていた汚れを落として復元。以前、自分のバイクの改造でJAZZをしばらくいたずらしていたころに見ていたキャブとあまり構造が違わないなぁと感心。ダックスの方がよほど古いはずなのに、フロートチャンバーを外してみるとほとんど同じようなものです。
各部の点検を終えてキャブを復元し、エンジンとエアクリーナーに接続して燃料ホースを繋いだら、ここはOK。
さて、エンジンをかける前にタペットキャップを外してタペットの状態を見てみます。クランクを回してエンジン左側を覗き、圧縮上死点で合いマークを合わせてシックネスゲージでインレット側とエキゾースト側それぞれのクリアランスを調整して、アジャスターをロックしたら終わり。
ノイズはあってもよく回っていたエンジンなので、狂いは多くなかったようです。
さあ、洗って給油しておいたチェーンをスプロケットに掛け、チェーンカバーとチェンジペダルを付けたら、修理・調整はこれでOKでしょう。最後にエンジンオイルを新しいのに交換して完成です!
■ヘッドは開けていないので、ともかくタペットの確認。Tマークを合わせます。
■古くて傷んだシックネスゲージを新品に買い直し、タペットのクリアランスを規定値に調整。
■合理的といえば合理的なキャブ。最初は隅々に汚れが固まっていました。
■フロートチャンバーの底の汚れはイヤですね。落とせるだけ落としてメイン&パイロットジェットの通りをエアで確認&清掃。油面その他に問題なし。
■燃料コックを開けてみると内部に汚れアリ。清掃してOリングも交換。
■作業開始の初期に固形汚れを落としておいたチェーンを掛けます。フロント側のスプロケットもいちおう小綺麗にしておきました。
■チェーンケースは塗り直し、チェンジペダルは「さびとりつや之助」でサビ落とししておきました。
やることはやった! 作業項目、多かったなー!
せいちゃんのダックス70、当初の予想よりも作業すべき点が数倍ありました~!(ホント)
せいちゃんに連絡すると、日にちをおかずに引き取りにきてくれました。エンジンはあっさり始動。ブレーキは少しアタリが出れば大丈夫でしょう。
当初主題であったライトの暗さやスロットルの戻りは解消したし、サスの動きも一応まともに(笑)。喜んで乗って帰ってくれた数日後に様子はどうか連絡してみると、ブレーキの利きが格段に良くなったと。そりゃそうでしょ、ドラムの中にフォークオイル染み込んでたんだもん!
せいちゃんにはだいぶ待たせてしまいましたが、めでたしメデタシでした。
しばらくZZR600を出せない状態に陥りながら、ダックス君との奮闘はこれで無事終了です。 ところが。こう入れ込んで作業をしていたらJAZZ再生&改造以来の「いじりたい病」が再発。なんかいい素材ないかな~!と、悪い虫が目を覚ましてしまったのです(ガガーン)!
■これでリヤ周りも小綺麗になりました。まさかスイングアームの動きがシブシブとは思いませんでした。分解してみてよかったです。作業、完了!
レポート&撮影●小見哲彦
プロフィール●小見哲彦
無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーとしてバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。月刊『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を2021年より依頼されている。
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