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2022年末は全国で記録的な豪雪に見舞われました。もともと雪が降りやすい地域だけでなく、例年だとせいぜいうっすらと雪化粧になる程度の地域でも5~10cmの雪が積もる異常事態です。雪道の運転に不慣れであったり、積雪や路面凍結に対する装備が不十分であったりして、車が動かなくなってしまうことも想定されます。
当然、ドライバーとしては想定外の緊急事態なので「どうしよう……」と焦ってしまうわけですが、たとえばどうしてもスタックから抜け出せないので車を放置したり、渋滞で動けない状態で携帯電話・スマホを使ったりしても違反になるのでしょうか?
積雪や路面凍結で車が動かなくなっても、法律上は駐車・駐停車違反になるが……
冬場は雪や凍結に備えてスタッドレスタイヤに交換したり、チェーンなどを常備したりと装備を整えるのは常識でしょう。ただし、これは雪・凍結が想定される地域の話です。
例年、降雪がほとんどない地域や、凍結路を走る機会のない地域に住んでいる方だと、冬装備はほぼ無縁かもしれません。長年車を運転していても、太平洋側の沿岸部に住んでいて日ごろ市街地しか運転していないと「チェーンなんて着けた経験がない」というドライバーも少なくないはずです。
そんな冬装備に無縁の地域でも、この冬は想定外の雪に大苦戦! 雪や凍結でどうしても車が動かなくなってしまい、車を放置するしかないという状況に陥る事態も想定されます。ここで気になるのが、雪や凍結で動けなくなってしまった車を放置しても駐車違反や駐停車違反になるのかという点です。
法律上の定義によると、駐車とは「車両等が客待ち・荷待ち・貨物の積卸し・故障その他の理由によって継続的に停止すること」または「車両等が停止し、かつ運転者がその車両等を離れてただちに運転することができない状態にあること」とされています。
そして、用務中のパトカー・救急車などの緊急車両や特別に許可を受けている場合は規制から除外されますが、雪・凍結といった悪天候や自然災害は除外対象に含まれていません。このルールに照らすと、雪や凍結によってその場から動けない状態で車を放置すれば違反です。
また、放置して車を離れるのではなく、車に乗っていても身動きが取れなければ駐車となり、禁止場所では違反になってしまうおそれがあります。「動けないから仕方ないじゃないか!」と感じるかもしれませんが、これが法律の定めです。
もっとも、雪や凍結で立往生しているからといって、ただちに駐車・駐停車違反で取り締まりを受けるかといえば、そんなこともありません。とくに災害級の降雪・凍結に巻き込まれて車が動けなくなった状況だと、法律に照らせば違反だからといって取り締まるのは妥当性を欠くので「はい、動けないなら違反ね」なんてヒドイ扱いは受けないでしょう。
かといって、何の事情もわからないまま車が放置されていると、警察としても何らかの法的な措置を取らざるを得ません。
まずはその場の状況を解消するためにロードレスキューを依頼し、加えて警察にも通報して交通整理をしてもらいながらロードレスキューを待つのが最善です。
緊急事態! 駐停車禁止場所でチェーンを装着しても大丈夫?
走行中、雪や凍結で危険な状態になったので、どこかで車を停めてチェーンを装着するというシーンも多くなるでしょう。当然、そのまま走るよりもチェーンを装着するほうが安全なのは間違いありませんが、どこかしこで駐停車してもいいわけではないので注意が必要です。
チェーン装着のための駐停車も除外規定に含まれないので、標識で規制されている場所のほか、交差点内や坂の頂上付近、勾配の急な坂の途中、トンネル内、バス停などは標識がなくても駐停車してチェーンを装着していると違反になります。
チェーンは前もって装着できなかったとしても「ここから先は走行が難しくなるな」と感じたら退避場所などに車をとめて装着してください。スタックしてから装着するようでは手遅れです。これは、法律で禁止されているからというだけでなく、禁止場所でチェーンを装着していると後続車に轢かれてしまったり、多重事故の原因になったりするからだと心得ておきましょう。
とくに、急こう配の坂の途中は車が停止してしまいやすい箇所ですが、チェーン装着中に車が滑りだして大けがになってしまうおそれがあります。パーキングブレーキを引いていても滑りだすと止まらないので、ジャッキアップ不要のチェーンでも作業中はしっかりと輪留めをかけておきましょう。
雪・凍結で大渋滞! 運転席での通話やスマホで渋滞情報を調べても違反になる?
雪や凍結で通行制限や速度規制がおこなわれていると、大渋滞が発生します。装備が不十分で立ち往生している車がいたり、事故が起きていたりすると、何時間もまったく車が進まない状況になるケースもめずらしくありません。大渋滞に巻き込まれると、家族や会社に連絡したり、携帯電話・スマホを使って渋滞状況や事故情報を調べたりしたいシーンも増えるでしょう。
こんなとき気になるのが、雪や凍結で大渋滞していても携帯電話・スマホを使っていると違反になるのかという点です。渋滞に巻き込まれて家族に「帰りは遅くなりそうだよ」と電話しているとき、パトカーが真横に来るとドキッとしてしまうでしょう。
法律の解釈に従うと、携帯電話・スマホは車の「停止中」なら使用可能となり、違反にはなりません。つまり、車がまったく動いていない状況なら、通話やメッセージのやり取り、インターネット検索なども合法です。また、けが人の救護や公共の安全の維持の目的がある場合は規制から除外されるので、たとえ走行中でも「事故が起きています」と110番通報したり、落下物をみつけて道路管理者に連絡したりといったケースは違反になりません。
一方で、車が少しでも動いている状況なら停止にはならないので、ごく低速であってもスマホを使用すれば違反です。停止中なら違反にならないといっても、渋滞時はほんのわずかに進んですぐに停止するといった状況が繰り返されます。注意が散漫になっていると前の車に追突してしまうかもしれません。とくに、雪や凍結による渋滞時は急ブレーキが効きにくいので、渋滞の原因とは関係のないところで追突事故を起こしてしまう危険が高まります。
携帯電話・スマホはできる限り使用を控えるか、最低限の連絡にとどめておくべきでしょう。停止中で使用可能でも、ホルダーとハンズフリー機器の使用をおすすめします。
レポート●鷹橋公宣

元警察官・刑事のwebライター。
現職時代は知能犯刑事として勤務。退職後は法律事務所のコンテンツ執筆のほか、noteでは元刑事の経験を活かした役立つ情報などを発信している。