レース用HRCカードも生まれた、電子制御システムPGM-IVの拡張性

そのほかでは、最高出力が40psになってしまった(従来型までは45ps)エンジンも実はイイんです。
断然下があって、上までもスムーズに回り、公道では文句なく扱いやすく、リミッターが効くまでは速い!!
1994年型からは電子制御燃料噴射のPGMが進化版のPGM-IVになり、作動を司るCPUは8→16ビット、点火時期制御も16→17区分に(1988年型は8ビット・11区分)進化しています。要するに細かく制御していて、40psの非力さを感じさせません。
最高速が180km/hを超えるようなサーキットなら話は別ですが……。

もう一点、1994年型NSR250Rで話題になったカードキーシステムは、公道での盗難防止策として導入されたんですが「このカードでPGMにアクセスするんだから、点火マップもこのカードキーで変えられるのでは!?」と途中でホンダの開発陣が気付き、別売でSPレース用のHRCカードが作られた経緯があります。
もともとNSR250Rのエンジン出力は、リミッターを効かせて上をカットしてあるだけで、簡単にフルパワー化が可能になっていました。
で、HRCカードを差し込むと、40ps→75psになるという仕組み──。


参考までに、HRCカードにはP-010:アブガス(いわゆるレース用燃料)点火マップ、P-020:アブガスのレイン点火マップ、P-030:無鉛ハイオク点火マップがあって、いずれもオイルポンプを切り、混合ガソリンを使用します。
なおHRCカードでは、公道での使用を防止するため灯火類が使えず、通常スピードを表示するデジタルメーターに水温が表示される設定でした。そして購入時は、廃車証明が必要なレース専用でした(たまのサーキット走行用に欲しいという人もいるかもしれませんが、そんな融通は効かないのが残念)。
このカード、ネットで一部が出回っていた時期がありました。8~10万円とけっこうな高値がついていましたけど……。
で、当時HRCの開発陣はさらに凝っていて「筑波サーキットでの夏場ならコレ」というように、ちゃんとエンジンテストしたチューニングカードをレースごとに作って、エントラントに配っていましたね。
メーカーが徹底したテストで得たデータなので、指定キャブセッティングなら最高のパワー&出力特性が得られるわけです。ズルといえばズルですが、レギュレーション違反ではなかった。当時のメーカーにとって「SPレース」はそれほど重要だったというお話です。
というわけで!?話が公道モデルから脱線してしまいましたが、市販の標準カードキー仕様でも1994年型NSR250Rは、公道では超上質な2ストスポーツです。単なる数値や体感加速だけじゃないってことです。
なので仮に1988年型を手に入れられなくても、1994年型なら十分……いや、1994年型こそ最高でしょう。ただし、足まわりはちゃんと整備してくださいね。キャブ、RCバルブ、チャンバー、サイレンサーなどのお掃除もお忘れなく。







レポート●石橋知也 写真●八重洲出版『モーターサイクリスト1994年1月号』/ホンダ 編集●上野茂岐
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