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日本では初代!カワサキ エリミネーター750【1986年新車時試乗レポート】GPZ750Rエンジンのスポーツクルーザー

エリミネーター 750 カワサキ

日本のエリミネーターシリーズは1986年型の750からスタート

Z-LTD、EN、バルカンに続く新たなクルーザーモデルとして、カワサキが最初に「エリミネーター」の名を冠したモデルを発表したのは1984年12月のこと。
「パフォーマンスクルーザー」をコンセプトとし、ロー&ロングな車体にGPZ900Rベースの水冷並列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載。エンジンはGPZに比べ低中速重視としつつも、最高出力105psの性能を有していた。
ただし、当時の日本メーカーは国内販売モデルに関して上限750ccまでという排気量自主規制を行っていたため、900ccのエリミネーターは輸出専用車という扱いであった。

一方、日本で正式に販売された最初のエリミネーターはその750cc版となるエリミネーター750で、1985年12月に発売。こちらはGPZ750Rベースのエンジンが搭載された。
エリミネーター750発表時の資料には「モーターサイクルの新ジャンルとして、エネルギーの塊ともいえる迫力をストレートに表現」という説明があるが、どのような点が新しかったのだろうか?
ここからはモーターサイクリスト1986年2月号の試乗記を振り返ってみたい。

カワサキ エリミネーター750。排気量を表すロゴなどはなく、外観は輸出専用車のエリミネーター(900)とほぼ変わらない。

エリミネーター750「スーパースポーツの走りを秘めたクルーザー」

今、オンロードバイクといえば、そのほとんどが、戦闘的なスタイリングをもつレーサーレプリカかホースバックライディングのアメリカン、もしくはライト感覚のシングルあたりに大別されてしまう。
しかし、今回登場したエリミネーター750は、どれにも属さない新ジャンルのマシンといえる。そのスタイリングは、低く構えたボディと長いホイールベースが特徴的。まるでドラッグレーサーを彷彿とさせるほどの迫力をもっている。

小さなタンデムシートとは逆に、十分な余裕があるライディングシートに座ると、755mmという低いシート高のため、楽に両足が地面にとどく。低くセットされたハンドルに腕を下ろす。レーサーレプリカともアメリカンとも違う、独特の落ち着きある重厚なポジションだ。
11Lと容量の小さいガソリンタンクはコンパクトに仕上げられているだけに、その両サイドからエンジンのヘッドがはみ出している。ヒザの当たる部分にはガードが当てられ、それがまた、シートに座ったライダーに荒々しい迫力を感じさせるのだ。

そのエンジンはスーパースポーツGPZ750Rと同一の水冷インライン4DOHC4バルブ。出力も77psで、かわらない。だが、スラッシュカットされた太いマフラーから吐き出されるエキゾーストノートは、低く乾いた音質。聞きなれたレーサーレプリカの軽快な音に比べ、重々しく響き渡るサウンドは、エリミネーターのたくましさを、十分に感じさせてくれる。
中低速でトルクフルな特性をもつエンジンは、ごく低回転からのスタートでも極めてスムーズに加速してゆく。そして3,000rpmを超えると、強烈なダッシュ力を見せつけられる。その力強さは、ラフなスロットル&クラッチワークをすると、160/80-15という超ファットタイヤのグリップさえ失わせ、白煙とともに路面に長いブラックマークを残すほど。

排気量748ccの水冷並列4気筒DOHC4バルブエンジンはGPZ750R譲り。最高出力は77psでGPZ750Rと同値。バックトルクリミッター付きのクラッチシステムも採用されている。
高性能なエンジンを支える巨大なラジエター。フロントタイヤは100/90-18。タンク幅よりエンジンが張り出しているので、エンジン両サイドにはニーグリップ用ともいえるガードバーが装着されている。

1610mmのロングホイールベースだが「コーナリングも得意」

もちろんそれは、エリミネーターの駆動方式がロングツーリングに対応すべくメンテナンスフリーのシャフトドライブを採用しているためもある。だが、このアクの強さにしたって、エリミネーターの魅力を損なうものではない。
それは、エリミネーターがロングホイールベースでありながら、ワインディングのコーナリングでさえ十分スポーティに楽しませてくれることからもわかる。決して走りを期待できないシャフトドライブではない。

確かに、レーサーレプリカたちと同等の走りを、このテのマシンに求めるのは無理。だが、コーナーへのアプローチで十分にブレーキングをし、バンキングと同時にスロットルオンをする走り方でシャフトのクセを極力抑えてやれば、エリミネーターはライダーの目指したラインを自然にトレースしてくれる。
また、連続するタイトターンの切り返しでも、シート後方に座って適切なスロットルワークをやれば、さほどの重さを感じさせずにリヤタイヤはスムーズに回り込む。

まさに、スーパースポーツに迫るスポーツ性の高い走りが可能なマシン。ただし、ワインディングでは、常に的確な操作が求められる。それでも、重心の低さがコーナリング時の安定性を向上させるイージーさも見逃せない。
もちろんハイスピードクルージングも得意。77psのエンジンは余裕を感じさせるし、ゆったりしたポジションが快適な走りを作る。ロングホイールベースだけあって、直進安定性も申し分ない。
これら優れた走行性能も、エリミネーターにとっては付加価値のひとつともいえる。エリミネーターの最大の魅力は、そのスタイリングとムード。走りだけでなくマシンそのものを楽しむ、それがエリミネーターなのだ。

スラッシュカットされたマフラーは左右2本出し。リヤタイヤは(当時としては)超ファットな160/80-15。
低く、幅の広いハンドル。メーターはコンパクトな2眼式。
シートは前後セパレートタイプ。シーシーバーがナンバープレートステーを兼ねる独特なデザイン。

カワサキ エリミネーター750(1986)主要諸元

■エンジン 水冷4サイクル並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク70×48.6mm 排気量748cc 圧縮比10.5 点火方式フルトランジスタ 始動セル

■性能 最高出力77ps/9,000rpm 最大トルク6.7kgm/7,000rpm 定地燃費(2名乗車時)33km/L(60km/h) 最小回転半径3.0m

■変速機 6段 変速比1速2.800 2速2.000 3速1.590 4速1.333 5速1.153 6速1.035 一次減速比1.732 二次減速比3.259 

■寸法・重量 全長2,255 全幅805 全高1,085 軸距1,610 最低地上高155 シート高755(各mm) 車重238kg(乾燥) タイヤサイズF100/90-18 56H R160/80-15 74H(ともにチューブレス) キャスター26度 トレール102mm

■容量 燃料タンク11L オイル3.7L

■1986年新車当時価格 74万5000円(北海道及び沖縄を除く)

■車体色 エボニー、ルミナスレッド

エボニー
ルミナスレッド

*当記事は八重洲出版『モーターサイクリスト1986年2月号』の記事を編集・再構成したものです。

試乗レポート●廣瀬達也 写真●柴崎正志
編集●上野茂岐

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