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「映画の撮影に使用された実物」のオートバイが国内で見られるのは最初で最後?
2022年のヒット映画といえば、36年ぶりの続編として公開された「トップガン マーヴェリック」。オートバイ好きにとっては、トム・クルーズ演じる主人公のピート・ミッチェル(呼び名の“マーヴェリック”はパイロットとしてのコールサイン)が乗るGPZ900RとNinja H2カーボンが気になったことだろう。2台とも、それぞれの時代で世界最速を誇るマシンであり、ライダーの感覚からすると『地上の戦闘機』というイメージすらある。
同作品やオートバイのファンに朗報といえるのが、映画に登場したこの2台が川崎重工の企業ミュージアム「カワサキワールド」にて2022年12月20日から2023年1月22日まで特別展示されることだ。この2台は11月のEICMA(ミラノショー)に展示されていたもので、レプリカ的なショーモデルではなく、実際の撮影に使用された本物! AKM(アメリカカワサキ)が所有する車両で、撮影協力から戻ってきたうちの2台を川崎重工が借り受けている。
今回はEICMAでの展示を終えてから返却期日まで余裕があったことから、日本国内のファンに向けてのサプライズとして展示イベントを企画。ノーマル状態の市販車も同時に展示されるので、細かな違いを見比べて楽しむこともできそうだ。カワサキ広報担当者によれば「貴重な劇中車が間近に見られるチャンスは、日本国内ではこれっきりになるかもしれない」とのこと。現時点で返却期日の延期はないので、春のモーターサイクルショーで展示される可能性は低そうだ。
ちなみに、EICMAや今回の展示のキャッチコピーである「PREPARE FOR TAKE-OFF」の意味合いについてはさまざまな憶測が飛び交っている。カワサキの人気ヘリテージモデルZ900RSに続き、GPZシリーズの復活を期待する人も多いことだろう。さすがにカワサキとして「計画中です」とは言わないものの、グローバルにヒットした「トップガン マーヴェリック」の追い風は感じているはず。ファンはラブコールを送りつつ、今後のニューモデルに期待したい。

■会場DATA
カワサキワールド(神戸海洋博物館内)
兵庫県神戸市中央区波止場町2-2
開館時間 10:00~18:00(入館は17:30まで)
休館日 月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)
入館料 大人900円、小人400円
36年の所有歴を再現したGPZ900R
劇中車として演出された詳細をチェック!
コアなファンが多いカワサキ車の中でも、GPZ900Rは特別な存在だ。初めて「Ninja」の愛称を与えられたモデルであり、現在のモデル名「Ninja」シリーズに続く礎を築いた名車といえる。1986年に公開された「トップガン」ではトム・クルーズの愛機として登場したのだが、その36年後の続編まで乗り続けていたという設定に感動したファンも多いことだろう。
長い年月を経た「トップガン マーヴェリック」に登場するGPZ900Rは、さすがに1作目の撮影に使用したものではない。新たに別のA2モデルをAKM(アメリカカワサキ)が用意し、映画スタッフの手によってパティナ加工(経年劣化した状態)が施されたものだ。マニアには有名な話だが、1986年公開の1作目でカワサキは車両協力しておらず、登場したGPZ900Rは製作側が独自に手配した車両であった。そのため、タンクやカウルの「Kawasaki」ロゴは消去され、目隠しするように部隊マークなどのステッカーチューンが施されていたのだ。
実際に続編「トップガン マーヴェリック」に登場するGPZ900Rを見ると、そのベースがノーマル車両だと確認できる。アフターパーツの装着はなく、1作目と同じ位置に同様のステッカーが貼られていた。唯一違っていたのは左フロントフォークのステッカーで、ここにはアメリカ国防省の登録車両証ステッカーが追加されている。これは36年の勤続歴で所属を転々とする中、必要に応じて追加されたという設定なのだろう。
気になったのは経年劣化を表現するパティナ加工。実際に車両を見ると塗装によってキズやくすみが加えられており、感覚的にはプラモデルのウェザリング塗装に似た印象を受けた。ダクト部分の黒ずみなどは大げさな気もするが、スクリーンに映る一瞬で古さを感じさせるには必要な処理といえる。国内ユーザーのGPZ900Rではここまで劣化した外装を見ることはないので、愛車に対する国民性の違いもあるかもしれない。


■「トップガン マーヴェリック」に登場するGPZ900Rは、フロントに16インチタイヤを装着するA2モデル。36年の歳月を表現するため、ややオーバー気味にパティナ(経年劣化)加工が施されている。





■1作目の「トップガン」に登場したGPZ900Rを再現するべく、両サイドとタンク上面、テールカウルにまったく同じ部隊ステッカーなどを貼付。経年劣化で表面はヒビ割れた状態だが、これが加工処理とは……ハリウッドの技術に感嘆するばかりだ。


■古いオートバイだがオリジナル状態を尊重し、劣化した外装でも大切に乗り続けているという設定なのだろう。変にピカピカしたレストア車両じゃないのは、トム・クルーズの趣向も盛り込んでいるのだろうか? スクリーンのくすみまで見事にパティナ加工されているが、ウインカーの樹脂部分のキズはオーナーなら苦笑いするかも?


■マフラーやグラブバーのキズを近くで見ると、塗装によって再現してあるのがわかる。転倒したことのあるライダーなら、凹むことなく大きく擦れたマフラーに違和感を感じるかもしれない。いや、これは映画の演出なのでイイんです!
現在の相棒として登場するNinja H2カーボン
ライトなカスタムでディテールアップされている
続編「トップガン マーヴェリック」でメインの愛機として登場するのが、同じカワサキ製のNinja H2カーボン。スーパーチャージャーをエンジンに組み込む超弩級のハイパワースーパースポーツは、戦闘機パイロットが乗るオートバイとしてベストなチョイスだ。今作では正式にカワサキが車両提供しているため、タンクの「Kawasaki」やテールの「Ninja H2」ロゴはそのまま。フロントカウルには川崎重工のリバーマークが輝いており、航空技術を盛り込んだフラッグシップマシンが映画の各種シーンを彩っている。
実際に使用されたNinja H2カーボンはノーマル車両ではなく、マフラーを競技専用モデルのNinja H2R用に換装。テールはフェンダーレス仕様にカスタムされ、スマートなシルエットを実現している。カーボン素材のアッパーカウルなど、外装パーツは基本的にオリジナルのまま。ただ、純正ではグリーンのトレリスフレームはガンメタリックにペイントされ、全体的にメカニカル感を意識したモノトーンにリファインされている。
細部を見ておもしろいのが、パーツ単体に刻印されたロゴが目隠しされていること。契約外のブランド名が映り込まない配慮が、いかにもハリウッド映画らしい。フロントのブレンボキャリパーが片側だけ目隠しされている様子から、撮影現場で気づいて慌てて処理したことを想像する。エンジンの「SUPER CHARGED」刻印については、ブランド名かどうか確認する余裕もなかったのだろうか。とにかく「契約外の文字は目隠しした」という印象だ。


■「トップガン マーヴェリック」でトム・クルーズ演じるピート・ミッチェルがまたがり、多くのシーンに登場したNinja H2カーボン。航空技術を含め、川崎重工グループの総力を結集したフラッグシップスーパースポーツは、戦闘機パイロットという主人公にふさわしい相棒だ。

■ノーマルでは右側2本出しの大きなサイレンサーを装備するが、劇中車ではNinja H2R(競技専用車)のチタニウムエキゾーストシステム(ストレート構造メガホンスタイルサイレンサー)に変更。

■テールカウルはフェンダーレス化され、スマートにナンバープレートをマウント。市販品を利用しているのか、ワンオフ加工なのかは不明だ。

■Ninja H2シリーズ最大の特徴といえるスーパーチャージドエンジン。クランクケースの上に「SUPER CHARGED」の文字入りオーナメントがあるが、劇中車では文字が目隠しされていた。

■ラジアルマウントされるブレンボ製フロントブレーキキャリパーは、左側のみロゴを目隠し。撮影時に契約以外のブランドを映さないよう、慌てて現場で処理したものと推測する。

■トレリスフレームの根元を見ると、わずかに元色のグリーンが見えている。パーツ単位まで分解せず、マスキング処理でフレームをペイントしたのだろう。
レポート&写真●川島秀俊





































