「アクセルを少し開けると、勝手に止まる」問題
作業している車庫の近所に、元気な小学生の男子・宗嗣(そうし)君がいます。
よく遊びに来るので、時々バイクのシートに乗せてあげたりします。で、そんなあるとき「このバイク、ガソリン臭いねー!」って言われました。トランポにバイクを積んでサーキットに行ったりするせいで、自分は微量なガソリン臭に麻痺気味なのかな?と当初は思ったけど、特に気に止めませんでした。
しかし、夜間にちょくちょくテスト走りをするようになると、気になる現象が出始めました。途中まで普通に走っていたのに、少しペースを上げてパワーバンドに入れたりすると、エンジンが急に止まってしまうんです。
これは燃料系か、点火系が問題? 小学生の言葉は何かの糸口になるのか? いずれにせよ、燃料センサーの交換時に燃料コックもチェックしておけばよかったなと後悔。そして、ガソリンの微量な漏れのほか、ショップではプラグ交換まではしていなかったのかもしれず、それも原因か?と考えました。
ともあれ、走行中に止まる現象は、とっても問題。原因不明では危なくて遠出する気になれません。日常の足でもあり、長距離の取材でも使えるような状態にしておかないと……。この2号車は、まだまだサーキット走行もバリバリこなした1号車のような状態に及ばない段階なのです。
プラグまわりから調査を始める
愛車の、どこがどんな状態なのか、自分で直せる部分を全部把握しておけば、トラブルの際に手を打ちやすいもの。そこで、作業開始です。再度タンクを外して、ラムダクトとエアボックスを撤去。さらに、左右のイグニッションコイルも外さないとプラグ交換は出来ません。
この際、プラグキャップの接続を確認すると、なんと4番プラグのキャップが傷んでおり、被覆に亀裂の生じたプラグコードから外れかけていました(タンクを外した状態の上から見て、一番右が4番)。
暫定的にニッパーでコードを少しだけ切って断面を整え、プラグキャップをねじ込んで応急処置。ついでにプラグを全部新品に交換しました。しかし、長さがギリギリのプラグコードでは不安だなぁ。
タンク取付け時にはその上にエアボックスを押し込むように組む作業もあるし……。
加えて、イグニッションコイルも新品に交換したいところ。そしてエアクリーナーボックスも外すので、この際エレメントも新品に交換です。





燃料パイプまわりもかなり怪しい
数日後の昼間、車庫で作業をしていると、また先述の宗嗣君が遊びにきました。
そこで「ガソリン臭くなくなった?」と聞くと、「まだ臭〜い」って。あっ、そう……。もう、こうなりゃ絶対にコヤツを黙らせてやるぜぃ!と作業に拍車がかかる次第。
燃料コック付近をバラしてみると、錆の痕跡が塗装面の下まで浸食していました。これは根深いぞ!?と、コックを外して燃料パイプ2本をチェック。塗装面は超微粒子コンパウンドで丹念に磨いたものの、完全には落とし切れません。塗膜の奥まで、燃料と錆の微粒子が染み込んだのかな。

後日、新品のコックに交換しましたが、ついでに古いコックを分解すると、コックのレバー回転部のOリングが劣化して微小な亀裂がありました。これもガソリン臭の一因でしょう。
急に止まってしまう現象と言えば、夜中の走行テスト途中にエンジンが止まり、隣り町で押しがけする事件(?)も発生しました。困ったことに坂のない平坦な場所で、坂を見つけるまで1kmほど押し歩きしました。
そして緩い坂で「鬼押し」した後に飛び乗ると、幸い一発でエンジン始動。速攻で車庫に逃げ帰りました。この晩は、バッテリー残量が減っていたのもいけなかったのでフル充電……。
ZZR600完全復調までの道のりは続く
そうして徐々に調子がよくなってきたので、サイクリングで昔よく出かけた茨城の藤代駅〜牛久沼でも試走を実施。でも、帰路の利根川の橋で少しアクセルを開けるとまだ微妙に不安定。エンジンのピックアップ問題の原因究明には、まだ時間がかかるかも。

一方、ノーマルに戻したいと思いつつも、それほどやかましくもない点は好印象のデビルの集合マフラー。
サイレンサーに前オーナーによるコケ傷が少し残っているのが気になっていました。一見するとカーボン調なのかよく分からない処理の表面を、試しに軽くペーパーがけしてみると、黒い表面が徐々に白っぽくなって地肌がうっすら。
「アレッ、これ実はアルミ!?」と思って開き直り(笑)、全力で研磨に没頭。
市販のペーパーを短冊状にハサミで切り、サイレンサー全体を研磨。手作業ながらも、遠目には純正のアルミサイレンサーみたいなツヤなしヘアライン仕上げっぽくなりました。
そして電動工具(ポリッシャ)で傷部分を軽く研磨したら、傷はすっかり消滅。よしよし。汚れた黒サイレンサーより、格段に善良なバイクっぽくなったな(ニヤリ)と大いに自己満足。


ともあれ、ムラのある走行状態のまま、ご機嫌うかがいしつつ走るのはストレスが溜まります。それに、頻繁に分解作業をしていると、古いネジ穴も傷んできて、そこも気がかり。
次回は600に限らず、ZZRシリーズ全般にも応用できそうな修復作業にも触れてみたいと思います。


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