バイクライフ

【元白バイ隊員が伝授】現場で使う専門用語、どんなものがある? 無線用語から取り締まり用語まで

街中を日々走る白バイ。その姿を見かけることは多いものの、隊員たちが無線や現場でどんな言葉を使っているかは意外と知られていません。

警察の世界には独特の略語や言い回しが数多くあり、白バイ隊員も日々それらを使いこなしています。今回は、白バイ乗りがよく使う専門用語を「組織」「無線」「取り締まり」「人や状況を表す言葉」「訓練」のジャンルに分けてご紹介してみます。なお、警察用語は都道府県警ごとに呼び方や使い方が異なる場合があり、ここで紹介するのは広く知られているものが中心です。

【組織・所属に関する用語】

■白バイ

これは一般にも使われる言葉ですが、正式には「交通取締用自動二輪車」などと呼ばれます。白い車体に赤色灯とサイレンを備えた警察のオートバイで、交通違反の取り締まりや交通事故の初動対応、要人警護の先導など幅広い任務を担います。隊員同士では単に「白バイ」「二輪」と呼ぶことも多いようです。

■交機(こうき)

「交通機動隊」の略です。白バイ隊員の多くは交通機動隊に所属しており、隊員たちは自分たちのことを「交機」と呼びます。高速道路を担当する「高速隊(高速道路交通警察隊)」とは別の組織で、交機は主に一般道を広域にわたってパトロールします。ちなみに、交通課ではありませんが、機動隊のことは「マル機」と呼んだりします。

■署員(しょいん)

各警察署の警察官のことを指します。警察本部に所属している警察官は、警察署の警察官のことを「署員」と呼んだりします。逆に警察署の警察官は本部の警察官のことを「本部員」と呼ぶこともあります。

■方面隊

交通機動隊の本隊とは別に、各地域に置かれた拠点のことです。東西南北を指して〇方面交通機動隊と表したり、第一方面交通機動隊、第一交通機動隊など地域によって異なる名称となっております。

■特練(とくれん)

聞き慣れない言葉だと思いますが、「特別訓練員」の略です。全国白バイ安全運転競技大会などに出場するため、選抜されて集中的に訓練を積む隊員を指します。特練員に選ばれて全国白バイ安全運転競技大会で入賞することは、白バイ隊員にとって大きな名誉とされています。

全国白バイ安全運転競技大会に出る隊員などは「特錬」。選抜されるのは栄誉ではあるものの、その日常勤務は相当にキツいと言われています

【無線でよく使う用語】

白バイ隊員は走行中も無線でやり取りをします。無線は用件を短く正確に伝えることが求められるため、略語が多用されます。また無線では、基本敬語は使わないとされています。短くするために敬語の「です」「ます」などを極力付ける必要はないとされています。それだけ短く通話を終わらせる必要があるのです。しかし、上司や先輩への無線となるとつい敬語になってしまいがちです。

■PC・PM・PS・PB

アルファベットの略語は無線で頻繁に登場します。「PC」はパトカー(パトロールカー)、「PM」は警察官(ポリスマン)、「PS」は警察署(ポリスステーション)、「PB」は交番(ポリスボックス)を意味します。「〇〇PB付近の現場にPM現着」といった具合に使われます。

■現着(げんちゃく)

 「現場到着」の略です。事故現場などに着いたときに「〇〇、現着」と無線で報告します。警察に限らず消防などでも使われる言葉です。

※イメージイラスト、実際の活動、現場とは異なります

■臨場(りんじょう)

事件や事故の現場に向かうことを指します。刑事ドラマのタイトルにもなったことがあるので、聞き覚えのある方もいるかと思います。

■「至急・至急‼︎」

緊急性の高い無線を発信する際の呼びかけです。「至急・至急」と重ねると、ほかの通信を止めてでも優先すべき重大な内容であることを示します。これが無線から流れると、無線を聞いている全ての警察官たちに一気に緊張が走ります。

■「〇〇照会(しょうかい)」

車のナンバーや免許証の情報を本部に問い合わせて確認することです。盗難車ではないか、免許が有効かどうかなどをその場で調べます。ちなみに、〇〇の中には警察官にしかわからない各照会の略語があります。

また無線だとノイズ等によりはっきりと聞こえないことがあるため、重要な文言を伝えるときには以下のような和文通話表を用います。

警察無線で使われる和文通話表

【取り締まりの現場で使う用語】

■追尾(ついび)

違反車両の後ろを一定距離ついて走ることです。白バイの速度違反取り締まりでは、対象車両と同じ速度で一定区間を追尾し、白バイの速度計で速度を測定する「追尾式」が代表的な方法です。

■定置(ていち)

一定の場所に待機して取り締まりを行う方法です。交差点の近くで一時停止違反や信号無視を見張る場合などがこれにあたります。

■定置レーダー・オービス

一般の方にもおなじみの言葉ですが、正式には「定置式速度取締り」などと呼ばれ、道路脇に測定器を設置して速度違反を取り締まる方法を指します。白バイは測定地点の先で違反車両を停止させる役割を担うこともあります。近年は移動式オービスにより取り締まりを行うことが多くなっています。

定置での速度取締り。これが出てくるとライダーはドッキリし、後にションボリすることになるでしょう

■青切符、赤切符

交通違反の処理に使う書類の通称です。比較的軽い違反で反則金を納めれば刑事手続きに進まないものが「青切符(交通反則告知書)」、大幅な速度超過や酒気帯び運転など重い違反で刑事手続きの対象となるものが「赤切符」です。

■一停(いちてい)・通区(つうく)

違反名の略語です。「いちてい」は一時不停止、「通区」は通行区分違反を指します。警察官同士で違反内容等について話をする時に使う言葉です。しかし、各都道府県によりその言い方は異なり、一時停止については「ワンてい」や「不てい」などという県もあります。

※ 警察官にも出張がありますが、他県の警察官と話をした時に、警察用語が微妙に違ったりすることに気が付き、話のネタとして盛り上がったりします。

■検挙(けんきょ)

違反や犯罪を認知し、処理することを指します。「今日は〇件検挙した」のように使われますが、必ずしも逮捕を意味するわけではありません。

■人や状況を表す「マル」言葉

警察では、対象者を「マル〇〇」と呼ぶ独特の言い回しがあります。書類上で〇印の中に文字を入れて表記したことが由来とされています。

「マル被(まるひ)」は被疑者、「マル害(まるがい)」は被害者、「マル対(まるたい)」は捜査や警護の対象者を指します。同じ「まるたい」でも逮捕を意味する「マル逮(まるたい)があります。交通警察の世界で特によく聞かれるのが「マル走(まるそう)」「マル追(まるつい)」で、これはマル走は暴走族のことで、マル追は追跡のことです。白バイ隊員にとっては、夜間の暴走行為への対応などで耳にする機会の多い言葉と言えます。

【訓練・運転技術に関する用語】

白バイ隊員は、重い車体を自在に操るために厳しい訓練を受けます。その訓練にも独特の用語があります。

■一本橋(いっぽんばし)

ライダーなら、何度かは経験するであろうことでしょうが、幅の狭い細長い台の上を、足をつかずにゆっくりと走り抜ける訓練です。低速でのバランス感覚を養うもので、教習所の二輪教習でもおなじみですが、白バイ隊員はより長い時間をかけて渡る高い技術が求められます。

■スラローム

同じく、技能教習でお馴染みですが、等間隔に置かれたパイロン(コーン)の間を、左右に切り返しながら走り抜ける訓練です。素早い重心移動とアクセルワークが試されます。

■回転(8の字)

パイロンの周りを小さく旋回したり、8の字を描いたりする訓練です。狭い場所でのUターンや低速での取り回しに直結する技術です。

■引き起こし

倒れたバイクを起こす動作のことです。白バイは車重が300kg前後と非常に重いため、正しいフォームでの引き起こしは基本中の基本とされています。

【知っておきたい注意点】

ここで紹介した用語は、あくまで一般に知られているものです。実際には都道府県警ごとに呼び方が異なったり、時代とともに使われなくなったりした言葉もあります。また、無線で使う符号や呼出名称の中には、外部に公開されていないものも多くあります。

こうした専門用語を知っていると、警察ドラマやニュースがより面白く感じられるはずです。実際に警察映画やドラマを観たときに、専門用語が使われている時に反応してしまいます。妙にリアルだったり、現職の警察官でも感心してしまうくらい再現されていることもあります。噂によると元警察官などが監修していたりするようです。

■まとめ

白バイ隊員が使う専門用語には、無線で素早く正確に情報を伝えるための略語や、取り締まり・訓練の現場で生まれた独特の言葉が数多くあります。「現着」「照会」「追尾」「マル走」など、意味を知ると隊員たちの仕事ぶりが少し具体的にイメージできるのではないでしょうか。

街で白バイを見かけたときは、その裏にある厳しい訓練と、無線の向こうで飛び交う言葉にも思いを馳せてみてください。また警察◯◯時などのテレビ番組で、会話の細いところまで聞いていると新たな発見があり、より一層興味深く感じるかもしれません。

写真はイメージ、本文とは関係ありません

文●睦良田 俊彦    写真・イラスト●モーサイ編集部

著者プロフィール

睦良田 俊彦(むらた・としひこ)
1986年北海道生まれ 趣味:クルマ、バイク

歯科技工士を経て警察官となり、約15年間勤務(白バイ隊員歴約10年)。警察学校卒業後は約3年半の交番勤務を経て交通部門へ。白バイ警察官として第一線で交通取締りをメインに活動し、ライダーのための安全講習、交通安全啓発イベント、マラソン大会先導、大統領車列先導など、様々な経験を重ねてきた。県警主催白バイ大会での優勝経験もあり、白バイ新隊員の育成などにも携わった後、巡査部長の階級で依願退職。現在は退職後の夢でもあったライディングレッスンなど、ライダーのためになる活動が出来る場を作るべくYouTuberとして、バイクの面白ネタ等を発信する「臨時駐車場チャンネル」ほか、新たにバイクライディング技術等に特化した「元白バイおやじチャンネル」も開設して活動中。バイクイベント等に積極的に参加し、出身の北海道で開催のライディングレッスンで講師も務めている。

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