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カワサキが大阪万博で「動物型の乗り物」を展示
陸・海・空など様々な乗り物を製造している川崎重工グループは、EXPO 2025 大阪・関西万博の未来社会ショーケース事業、「フューチャーライフ万博・未来の都市」パビリオンにて「交通・モビリティー」分野を担当。
そこで、これまでにない「モーターサイクルとロボティクスの融合」により組み出された、全く新しいカテゴリーのモビリティ「CORLEO(コルレオ)」を展示した。
「コルレオ」のコンセプト、デザイン
コルレオのコンセプトは「移動本能」だという。
人間には「移動することによって幸せを感じる」仕組みが遺伝子レベルで組み込まれているという研究や、「行ったことがない場所に移動することで脳が刺激され活性化する」という研究がある。
それを踏まえ、人間が踏み入れないところを行く動物に乗って移動するなら、さらなる幸せや脳の刺激が得られるのではないか──というアプローチで、動物型のモビリティの提案が生まれた。
そのフォルムはライオンのイメージで、コルレオの名はローマ時代の「しし座」のラテン読み「コル・レオニズム」(獅子の心臓の意)に由来する。
フロント周りにはバイク的なデザインを感じるが、コルレオのデザインを担当した福本圭志さん(株式会社ケイテック)によると「実際の動物をイメージした“顔”にすると怖い印象になってしまいそうだったので、生物的なフォルムにカワサキらしい要素を取り入れてデザインしました」とのことだ。



「コルレオ」の操縦法
最先端ロボティクス技術によって、高い悪路走破性を発揮する4本足で移動するコルレオはその運転方法も独特。アクセルやステアリングによる操作ではなく、ライダーの重心移動によって「曲がる」「進む」「止まる」を行い、モータサイクルのような操る楽しさを有している。
運転にあたり、ライダーの加重変化を察知するセンサーとなるのは「あぶみ(ステップ)」とハンドルで、そこにAIによる制御も加わる。
この「あぶみ」は、「スポーツ」や「コンフォート」など走行モードの変化に従い可動し、ライダーの体勢変化にも対応する。
また「あぶみ」は伸縮もし、乗員の身長・体格差もカバーできるという。
「あぶみ」の位置や太さも入念に作り込まれている。
バイクのテストライダーが跨ってテストするとどうしてもバイク的なステップ、ハンドルになってしまうため、神戸大学の馬術部に協力を求め「動物にまたがって乗る」感覚を追求した。タンデムも可能で親子でもダイナミックな自然の景色を楽しむ……そんなこともイメージされている。




「コルレオ」の動力源
川崎重工グループが様々な分野で提案している水素が燃料で、モーターサイクル用をベースとしたターボ付き2ストローク150ccエンジンを動力源とし(発電用)、コルレオは環境に優しく自然と調和した乗り物となっている。エンジンは胸の辺り、燃料タンクは胴体後方に収められている。
移動速度は100km/h程度まで想定されており、これは実際のチーターやヒョウを参考にしたものという。モーターサイクルの技術が生かされている点としては、車体の中心から後方にかけてユニット一式が上下に可動する「スイングアーム機構」がある。
コルレオのイメージモデルには、世界を代表するプロの山岳ランナーで、富士山の全登山ルートを9時間55分41秒で走破するという世界記録保持者でもある上田瑠偉さんが起用された。
上田さんによれば「トレイルランをしていると、マラソン選手に比べ太ももが倍くらいに太くなるんです。コルレオは4つの足すべての太ももがガッシリしているので、走った際にはかなりの安定感があると思うんです」とアスリートらしい分析をしてくれた。



2050年頃に実用化を目指す!?
さて、このコルレオはあくまでコンセプトモデルということだが、カワサキによれば「2050年頃に活躍する未来が来たら……」とのこと。
プロモーション映像では森林、草原、雪原など大自然の中をコルレオに乗って走る様子が紹介されたが、もしかしたらこんな使い方もあるかもしれない、大自然の中だけでなく街中を走っても面白いのでは?など、色々な夢を見させてくれるモビリティの提案だ。
大阪・関西万博は2025年10月13日まで開催されているので、ぜひ実物を目にしてほしい。
レポート●川崎由美子 写真●川崎重工/川崎由美子 編集●上野茂岐