バイクライフ

「2スト車ばかり集める、イタリアの鈴菌な人」現地から伝えるイタリアのリアルなバイクライフ【Vento Italiano N.1】

初めまして。根っからのバイク好きで、イタリアに住み始めて約32年の酒井 博と言います。さて、バイクにまつわることで「イタリア」と言えば、皆様はまず何を思い浮かべるでしょうか?

・日本同様に様々なバイクメーカーが存在している。
・MotoGPに強いメーカーが多い。
・バレンティーノ・ロッシはイタリア出身。

メジャーなところでは、そんな感じではないでしょうか。
一方で、日本では全く知られていないバイクにまつわるお話もたくさんあり、とても面白い国なんです。そんなイタリアの知られざる一面を少しずつお伝えしていきたいと思います。とりあえず、コラム「Vento Italiano」(イタリアの風)の第1回です。

まず、イタリアにおける日本車=四大二輪メーカーの存在感は抜群!ということを初めにお伝えしておきましょう。それは新車だけの話ではなく、「日本車の旧車が大好き」というマニアも数多くいます。

そんな一人とたまたま知り合いになりました。古いスズキを愛してやまないイタリア人、ジャンルーカ氏です。年齢は50歳ほど。彼の本職はパテシィエの先生で、今は自分のジェラートのお店を切り盛りする毎日です。

彼はとにかく古いスズキが大好き。1970年代のスズキ・ジムニーを自分でフルレストアしたのをはじめとして、廃車みたいなボロボロの古いスズキのバイクを次から次へと収集。そして、暇をみてはコツコツとレストアをしています(もちろん趣味で)。

ジャンルーカ氏が一人コツコツとレストアした1970年代のジムニー(エンジンは4ストローク)。これはレストア前
でもって、これがレストア後

特に古い2ストロークエンジンのバイクが大好きだと言います。そんな彼の自宅にはスズキの旧車を初め、レストアされた日本の旧車が所狭しと置かれていて、さながら個人二輪博物館の体をなしておりました。

もちろん、スズキの2ストローク車に関する知識は圧倒的。GT380の年式による細部の違いについて熱く語ってくれたことがあり「どこからそんな知識を学んだの?」と聞いてみたら、好きこそものの上手なれで、独学で色々と勉強したのだそう。それが積もり積もって、最近ではイタリアクラッシックカー検査員から意見を求められることもあるとか。

ジャンルーカ氏の自宅コレクション。だが、これはその一部でしかない。写真に収められているのは1960〜1970年代のスズキ車で、GT750以外はすべて空冷2ストエンジン。
ジャンルーカ氏が熱く語るGT380。写真はドラムブレーキの初期型だ。
スズキグッズも収集。1980年代にスズキの認証でイタリアの玩具メーカーが発売した子供向けのおもちゃで、新品とのこと。スズキ本社にも多分残っていないでしょう。

旧車を含め日本車はイタリアで人気なのですが、新車はさることながら、マニアたちはどのように旧車を維持しているのか。日本から遠く離れたイタリアで、古い日本車の部品は調達できるのか……?

マニア達と知り合った当初、そんな疑問を抱いたのですが、どうやらそこまで苦労はしていない模様。

てっきり純正を元にしたリプロダクションパーツなどが多く活用されているのかと思っていましたが、閉店したバイク屋さんからまとめてパーツを買い取ってきたり、友人のマニアから譲り受けたりと、オリジナルの純正部品が今でも結構手に入るのだそうです。これは日本も同じでしょうが、旧車マニアのオープンマーケットも時々開催されており、そこもまた入手場所の一つとなっています。

ジャンルーカ氏によれば「1970年代の日本車の純正部品は割と普通に入手できる」とのことで、新品、中古、あわせて莫大なストックを彼は持っていました。

幼い頃のジャンルーカ氏。おじさんが鈑金屋を営んでいたこともあり、クルマやバイクの修理に幼いころから親しみを覚えていたという。

現在のジャンルーカ氏。レストアに必要なスペア部品も大量に保存。写真は例によってその極一部だ。

そもそもイタリアには旧車の保護政策的なものがあるのですが、その影響もあってか、ミラノ市内ではホンダ CB400Fourを普通に乗り回している人をみかけたりします。

ただ、古い車両ならではのややこしい問題も。
イタリアでは未だに全車両のナンバープレート情報がオンラインに登録されておらず、1994年以前の車両は基本的にイタリア全土のオンラインナンバープレート検索システムで持ち主情報を確認することができません。理由は簡単で、それ以前は「紙の書類で全部やっていたから」です。

いや、そのオンライン登録の話以前の問題として、そもそもつい数年ほど前までイタリアには「車検証」と、その車両の持ち主であることを証明する「車両保有証明」の2つの書類があり、名義変更には車検証ではなく「車両保有証明」が必要でした。

この車両保有証明、長年に渡って車両を保有している間に自宅のどこかにいってしまって見つからない、というケースが結構あるんです。そうなると車両を売りたくても売れない、という事態に。

仕方がないのでどうするかというと、警察に行ってながなが延々と待たされた上で「紛失証明」を発行してもらう。車両保有証明をなくした場合は、この紛失証明がないと譲渡ができない、ということになるんです。
長らく車庫で寝かされていたような旧車の場合、車両保有証明だけでなく車検証もなくなっていて、再発行だなんだと費用や時間も相当にかかってしまい、旧車マニアは涙を呑む……というのは、イタリアでも日本でも共通の点でしょうか。

レポート&写真●酒井 博 編集●上野茂岐

著者プロフィール

酒井 博

1965年生まれ。1990年渡欧、1993年よりイタリアに。
現在はミラノにミラノ人伴侶と在住。本業は二輪・四輪等自動車系を含む機械・電気・電子系などの技術系(同時)通訳、翻訳。そのほか、イタリアから日本向けの二輪・四輪車両輸出業務等を手掛ける。

日本・英国・イタリアの3ヵ国各国の運転免許所持。イタリアの免許証は試験が厳格化された2021年以降に日本人がイタリアの教習所に通って取得した稀有な例である。
普通自動車・大型自動車・大型自動二輪免許。イタリア永久滞在許可証保有。

 

https://www.italogiapponese.it

 

皆様からイタリア・ヨーロッパの二輪にまつわる、ご質問・疑問・リクエストなどをなんでもお知らせください。「本当のイタリア」の様子をお伝え致していきたいと思っております。

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