■マウンテン区間のスタートとなるグースネックを駆け上がる山中正之選手&CBR600RR。背景に広がるのはアイリッシュ海で、水平線の向こうにはアイルランド島が見える。
4日目:6月1日(木)予選(モーターサイクル3クラス+サイドカー)
マン島TTは4日目に入ったが、午前中こそ曇天だったが、午後から次第に晴れ間が広がった。初日からずっと晴天に恵まれていることもあって(ここまで晴天が続くことは近年めずらしい)スケジュールの大幅な変更はなく、順調に予選走行を消化している。
本日も予選走行は夕方から行われ、マウンテン区間では16時45分から道路封鎖がはじまり、18時30分から走行がはじまった。この日はスーパーバイク、スーパーストック、スーパースポーツの3クラスが混走し、その後にサイドカーの走行となる変則的な予選となった。
モーターサイクル3クラスの走行枠は1時間40分。先頭でスタートを切れるライダーは4周、あるいはさらに1周走れる可能性があるが、3クラス混走のため後半スタートの選手たちは20〜30分後のスタートとなるため、おおよそ3周のラップを重ねた。

■スーパーバイク(1000cc、SBK=スーパーバイク世界選手権並みの改造)、スーパーストック(1000cc市販車=軽微な改造のみ)、スーパースポーツ(600cc)の3クラス混走となった6月1日、予選4日目の走行。手前の青字ゼッケンはスーパースポーツ、奥の黒字ゼッケンはスーパーバイクだ。

■グースネックはかなりの急勾配の登りのため、コーナーの立ち上がりで簡単にフロントが浮き上がってしまう。ちなみに、スズキの空冷単気筒エンジンを積むスポーツバイク、グース350(1991年発売)/グース250(1992年発売)は、サイドカバー形状をマン島のグースネックのコーナーをモチーフとしていることに由来している。

■赤地に白文字のゼッケンはスーパースポーツ。強烈な西日を浴びているため、スモークシールド越しであっても、ライダーの目がしっかりと見えている。

■サイドカーの予選は走行順が最後のため、いつも西日を思いっきり浴び、それに向かって走らなければならない。決勝レースは日中に行われるため、路面の見え方は予選と決勝でずいぶんと変わってくる。
さて、昨日は山中正之選手のコメントをとれなかったので、ここであらためて紹介しよう。前日の予選走行では初めてのホンダ CBR600RRを走らせた山中選手だったが、直射日光に向かって走らなければならないナイトセッション(夕方)用に作成したシールドが裏目に出てしまい、コースをうまく視認できなかったという。
「ライトスモークのシールドの上部にクルマの窓用フィルムを二重に貼ったのですが、位置が低すぎてしまって前傾姿勢だと視界が暗くなってしまいました」
そのため1周を終えたところでピットに戻り、ノーマルのライトスモークシールドに交換。2周目に挑んだ。
「初めて乗るCBRは乗りやすいんですけど、まだバイクに慣れていない状態です。以前乗っていたCBRよりも速いです。でもまずはバイクに慣れることを目標として、あまり意識しすぎないようにしたいと思ってます」
そうして挑んだ本日は、2度目となるCBR600RRを走らせ、山中選手は3周をこなした。
「昨日は2周、今日は3周を走って、600ccのスピードやハンドリング、パワーのあるエンジンにずいぶんと慣れてきました。でもバイクが速いぶん、選択するギヤとか加減速のタイミングをコースに合わせる必要もあって、調整しながら走っています。明日はスーパーツイン(カワサキ ER-6f)を走らせるので、次にCBRを走らせるのは決勝レースです。なので、本音をいえばもう1周走りたかったですけど、それでも1周目より2周目、2周目より3周目はずいぶんとつかめた感触があります」
コースとマシンの習熟度をわずか3周で進めた山中選手の仕上がりは、決勝レースに向けて順調のようだ。明日は最後の予選走行をスーパーツインでこなす予定だ。

■このように西日の直射日光に向かって走る場面は多く、予選3日目、山中選手はそのために特製シールドを自作したのだが、残念ながらうまくいかなかった。

■予選走行前、ピットで談笑する山中選手。ピットを訪れたのは、かつて山中選手のチームでメカニックを務めたこともあるマーチンさん。彼はコースマーシャルとしてマン島TTに参加している。

■こちらはおまけ。グースネックではスキー場かと思うほどの急勾配の草地が駐車場になっている。マン島TTのマウンテン区間が、いかに急激に標高を上げていくかがわかる。今回の取材のために借りているBMWの1800ccクルーザー「R18B」では、駐車場所への移動も、駐車場から出るにもかなり神経を使った。
レポート&写真●山下 剛