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CB1300SF(SC54)軽量化を追求した3代目BIG-1
「3代目BIG-1」ことCB1300SF(SC54)


原──ところが今度は「重い、軽快感がない」と言う意見がマーケットから出てきて、3代目のSC54に進化した。確かにSC40では、排気量の拡大に合わせて重くなっていた。そこで「マイナス20kg作戦だ」と言って、軽量化に目標を定めた。
伴──シリンダーヘッドをより大きくして、エンジンの逆三角形イメージを強調するなどの構想を持っていたが、自分の考えでは軽くならないと思ったので、デザインLPLを途中で変わってもらった経緯がある。
原──味付けにもこだわり、ハンドリング、音の感覚、クラッチダンパー、ドライバビリティにもこだわった。直押しヘッドのエンジン、車体足まわりと、各部の負担率を考慮し軽量化を進めた。特にホイールとタイヤが効いている。ユーティリティにも気を使って、シート下に最低限のユーティリティスペースを設けた。それから、重量の軽減を考えて、再びマフラーを1本に戻したが(騒音規制で)非常に厳しい時代になっていて、サブチャンバーを付けたものの非常に排圧が高かった。それで苦労した部分がある。ノックキングセンサーも付けてね。


小笠原──排圧が高すぎると高速ノッキングしやすくなる。現在の開発では、排圧を見ながら点火時期を決めるけど、初代はそれのハシりだった。
菊池──「ドン突き」で脅かすようなバイクにはしたくなかった。開け始めは穏やかで、ハンドリングに影響もなく、ピックアップもいい。そこからは開けた分だけ自然に回ればいいと思った。それと、じつはウイリーできることにはこだわっていた(笑)
原──そう言えば、1992年の8耐でマーシャルバイクにしたね。それで「ウイリーしろ、ウイリーしろ」ってあおったら、マーシャルバイクがウイリーしたと大会運営側からクレームが付いちゃったんだよ。それが土曜日で、その夜、鈴鹿に来ていた歴代社長が「原を呼んでいる」というから、「これはマズいことになったぞ」と思って、もう直立不動で参上したら、「もっとやれ。中途半端はやるな。メインスタンド前は全部やれ」と言われたんだよ。
それで日曜日は、調子に乗ってウイリーさせたら、デグナーカーブでオーバーランして焦ったな。あれで転んだら大問題だった(笑)。8耐へは2003年、2004年と2年参戦したけど、そこからスーパーボルドールやスーパーツーリングのバリエーションモデルへの進化があって、より幅広いお客様に受け入れられた。それが20年の結果につながったわけだね。それにしても8耐は楽しかったな。


伴──そりゃあ原さんは楽しかったでしょうよ。あれだけ好き勝手やったんだから(笑)
原──でも、オレ苦労したんだよ。おかげで髪の毛、なくなっちゃったし(笑)
菊池──本当に好き勝手やらせてくれたよね。
原──会社が泳がせてくれたんだよ。泳がせて自由に作らせることで新しい何かが出てくるわけで、それを誰かがやらないとダメだ。小さい金魚鉢に入れられたままだと、動きようがないだろう。オレなんか金魚であることを忘れてどこかに行っちゃった感じだけど。
伴──原さんは、自分が金魚であること忘れて、太平洋に出ちゃった(笑)
原──自分たちが乗りたいバイク作るんだ、「どうしてもコレじゃないとダメだ」ってね。昔の駄々っ子だよ。それでもやれたことは、本当にうれしいことだよ。
伴──でも、最初は隠れた部屋でやらざる得ない状況だったのは、本当のこと。「今さらなぜ、新技術もないことをやっているんだ」と言われたけれど、もうこっちは精神論みたいなところで作っていましたからね。
ホンダCB1300SF(SC54・2003年)主要諸元
[エンジン・性能]
種類:水冷4サイクル並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:78.0mm×67.2mm 総排気量:1284cc 最高出力:100ps/7000rpm 最大トルク:11.9kgm/5500rpm 変速機:5段リターン
[寸法・重量]
全長:2220 全幅:790 全高:1120 ホイールベース:1515 シート高790(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R180/55ZR17 車両重量:254kg(乾燥重量226kg) 燃料タンク容量:21L
[車体色]
ホワイト×レッド、ブラック×シルバー、ブラック
[価格]
99万円(2003年発売当時、ツートーン)
レポート●関谷守正 写真●打田 稔/ホンダ 編集●上野茂岐
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