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2〜3年後にはバイクの足着き問題は完全解消か? MotoGP日本グランプリで見たライド・ハイト・デバイスとは?

3年振りの日本グランプリ

みなさん、こんにちは。カメラマンの柴田です。
先日、3年振りにMotoGP日本グランプリが行なわれ、自分も撮影に行ってきました。この模様はすでにモーサイに記事が上がっています。写真中心のレポートですが、ご覧になっていただけたらうれしいです。

コロナ禍で日本グランプリが2年も中止され、2022年は3年振りの開催。自分もMotoGPが日本にやってくるのを楽しみにしていたひとり。開幕戦のカタールから日テレジータスで観戦しながら「今年こそ日本でも開催して欲しい」と祈っていました。

先進的なテクノロジーで搭載で今季絶好調のアプリリア。カウル形状やウイング、フロントフォークカウルなども独特。ちなみにタイヤ、ホイールは移動用で、ブレーキキャリパーも付いていません。

MotoGPのバイクは世界最高峰のレースマシン。驚くような最先端のテクノロジーを満載しています。熱いバトルのその陰で、いやむしろマシンに注目しているファンも少なくないはず。

中でも自分が視線を注いでいたのは、走行中に車高を変える「ライド・ハイト・デバイス」というシステム。コーナーと直線でそれぞれ適正な車高に上げたり下げたりするものです。コーナーは高い車高で深いバンク角をキープ。これは高いというよりMotoGPでは今まで通りの通常の車高ですね。そしてコーナーから立ち上がって加速体制に入ると車高が下がります。

自分はこんな最新メカを解説するほどの知識はないので、詳しい話はMotoGPオフィシャルYouTubeチャンネルのサイモン・クラファーさんにお願いしましょう。英語ですが、図解もあるし、ほかにも”RIDE HEIGHT DEVICE”で検索すると色々と上がっています。

How do rear ride height devices work? | Tech Talk with Simon Crafar
https://www.youtube.com/watch?v=f-fTM-Kd-4A

ライド・ハイト・デバイスを最初に搭載したドゥカティ。かつて物議を醸したスイングアームの下のスプーン(リアタイヤを冷却するといわれるパーツ)も先んじて廃止。ライド・ハイト・デバイスのユニットは下側マフラーの奥あたり。

3年前の2019年の日本グランプリではドゥカティがスタート時に車高が下がる「スタート・デバイス」を採用して、その作動時の様子を見たときは「おぉー下がる」と、意外にスムースな動きにびっくりしました。

ヘアピンを立ち上がるドゥカティのバニャイヤ選手。腰も落ちていてまだコーナリングの最終段階ですが、リアが下がっているように見えます。

3年間分の進化は大きかった。今年の日本グランプリのMotoGPの全車が走行中に車高を変える「ライド・ハイト・デバイス」を使用していたと思います。なにせ写真を撮りながら横目で観察しているから「絶対に全車が下げてた」とは言えませんが、自分の目でカウントした感じだとほぼ全車。

ライド・ハイト・デバイスはどこで使う?

あるテストライダーは事前にもてぎで想定していた「ライド・ハイト・デバイス」作動箇所はメインストレートとバックストレッチ(ダウンヒルストレート)の2か所。ところが金曜の練習走行が始まると、車体が真っ直ぐ立つ時間があると短いストレートでも下げて走っていました。

1コーナーと2コーナーは寝っぱなしなので上げたまま。2の立ち上がりで下げる。3から4は寝っぱなしで4の立ち上がりで下げる。S字の間は左右のどちらかに傾いているので上げままで、V字とヘアピンの間でも下げます。ヘアピンを立ち上がってまた下げて。90度からはずっと傾いているので上げて、最終コーナーの立ち上がりで下げる。

アプリリアのエスパルガロ選手。このカットはインラップで様子見の周回のもの。
こちらはペースアップした本気のラップ時の撮影。本気ラップのほうがかなり車高が下がっているのが分かると思います。

下げているときはスイングアームの垂れ角が地面と水平近くなるくらいシートカウルが低くなってます。フロントは下がっておらず、インナーフォークの露出長さからすると全伸びに近い感じに見えます。

車体の姿勢的にはいわゆるチョッパー状態です。自分の感覚では見慣れていない金曜日のFP1では「あのバイク、何かが壊れている」というふうに見えていました。スタート時のような車高が切り替わる瞬間はなく、コーナーから立ち上がってくるといつの間にか車高が下がっています。

作動のスイッチは左グリップ付近にあるようですが、いつスイッチ(レバーの場合もあるようです)を入れているのか分かりませんでした。あのハングオンの状態でスイッチを操作できるなんて、さすがMotoGPライダーです。

レプソル・ホンダのマルケス選手。下のカットと比べると車高の違いがわかります。
レプソル・ホンダのマルケス選手。FP2の走行シーン。下げるとスイングアーム下にライド・ハイト・デバイスのリンク部分がチラリ。(このページの一番上の)タイトル写真はマルケス選手のアルミ製スイングアームまわりですが、カウルとの流れが良すぎて展示状態ではデバイスが全く見えません。

その仕組みはサイモンさんの説明によるとリヤショックのリンクロッドの伸び縮みシステム。ちなみにサイモンさんの絵だと「スイングアームとリンクの間に伸び縮みシステムを入れる」となっていますが、実際はステップ下付近にあって車高が下がったときに少しだけ見えます。

3年前はコーナーの進入時に後輪が浮き上がるまでハードにブレーキングしたり、派手なスライドがよく見られました。「あの激しさがMotoGPだ」と思っていたら今年はほとんど見られませんでした。比較的スムースにコーナーへ進入していきます。

コーナーのクリッピングポイント付近ではヒジを擦りながら深いバンク角で旋回しますが、そこから先はリーンインですごくていねいに立ち上がっていきます。そしてスロットル全開のタイミングではまだ少しバンクしていても車高が下がっています。ウイリーはどのメーカーも低めで安定していて、電子制御の精度を感じました。

ケガを押して出場してくれたLCR ホンダ イデミツの中上選手。中上選手もライド・ハイト・デバイスを使いこなしていてFP1から下げまくり。雨でも下げまくり。この車体姿勢で300km/h出すのですから、カウル形状もそれに合わせてある(のでしょうか?)。

ヘアピンでも最終コーナーでも立ち上がりでアウト側のゼブラゾーンまで膨らむことは少なかったです。車高が低いほど速いわけじゃなさそうですが、人によっては「低い状態でロック(リジッド?)されている」と解説している人もいるので、もしそうなら凸凹のあるゼブラの上を走るのは厳しいでしょう。

もてぎの最終コーナーは後輪のトラクションが抜けないように「コーナリングが終わってからもバンクを続けてストレート部分をS字ラインで走る」のが3年前のMotoGPでした。
ところが今年は小さく回ってていねいなリーンインで立ち上がって、ライド・ハイト・デバイスを作動させて低い姿勢で真っ直ぐ加速というライン取りになっていました(ストレート後半では1コーナーに向けて、左への振り出しでラインがS字状になります)。

ここまで姿勢が変わると空気抵抗にも影響しそうなので、カウリングの形状もライド・ハイト・デバイスに合わせて変わってくるでしょう。

3年前に比べてラップタイムもレースタイムも短縮しているのでその効果はある、と思います。自分的には実効果もさることながら、MotoGPがほかにはないスーパーマシンであることがうれしいです。

フロントのライド・ハイト・デバイスは2023年から禁止

来年は少なくとも走行中のフロントの高さ変更は競技規則で禁止される模様。でも、このMotoGP由来のライド・ハイト・デバイスが市販車のスーパースポーツにも採用されたら、ワールドスーパーバイクや鈴鹿8耐でも低い姿勢で走るのが普通になるかもしれません。

ライド・ハイト・デバイスをはじめ、MotoGPマシンの中身はシーズン終了後にレース専門誌に解説記事が掲載されるでしょう。それも楽しみですが、自分としては自分を含め一般のライダーへのライド・ハイト・デバイスの恩恵というか、公道車への採用が待ち遠しい。

2022年でMotoGP参戦を中止するスズキ。というわけで最終型に近いGSX-RR。スズキももちろんライド・ハイト・デバイスを装備。スイングアーム下の突起がスプーンと呼ばれるパーツ。

もちろん公道でMotoGP並みの加速を試す人はいないでしょうが、シート高を自由に上下できるのはスーパースポーツ車の足着きに困っていたライダーの悩みを解決する可能性もあります。そうなったらアドベンチャーバイクにだって装備するかも……。

なんたってMotoGP生まれのテクノロジーなので、ウイングの様にすぐにポピュラーになるかも……、いや、そうなって欲しい。そんな夢を見ながら今年の残りのMotoGPを日テレジータスで楽しみます。
ではでは。

レポート&写真●柴田直行 編集●飯田康博

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