日本二輪車普及安全協会(以下、日本二普協)は9月10日、「二輪車の安全運転を考える」をテーマとするシンポジウムを開催した。
このシンポジウムはバイクの安全をテーマに二輪業界の関係者向けに2018年から開催されており、今回は茨城県警察本部の山田洋史氏、山梨県立巨摩高等学校の小澤幸生氏、ヤマハ発動機の中嶋真澄氏、ブリヂストンタイヤソリューションジャパンの佐藤潤氏を講師に迎え、各々どのような安全に対する取り組みを行っているかの報告や、講師4名によるパネルディスカッションが実施された。
多様な観点から二輪車の安全を考えるこのシンポジウムは4時間を超える充実した内容となった。その公演とパネルディスカッションの模様を抜粋してレポートする。

茨城県警による「二輪車に係る交通安全対策」

まずは茨城県警察本部の山田氏が登壇。近年の交通ルールの変化や県警の取組みを紹介した。茨城県内の交通事故データを例に、二輪車は重大事故につながる確率が四輪車の約6倍であることや、過去10年間に二輪車事故でなくなった144人のうち46人がツーリングであることを説明。開放感で気分が高揚し、安全運転への意識が低下してしまう瞬間があるのかもしれないので、より注意してほしいと語った。


近年急増しているペダル付き電動バイクについても解説。本来、免許やナンバープレート、自賠責保険、保安部品などが必要にもかかわらず無登録の違法車両が増加しているという。さらにアクセルをひねると後輪が回るように改造されたものや、アクセル比率を変えたもの、普通の自転車にバッテリーを付けたものなど違法電動自転車が横行していることに対しても、取締を強化しているという。


2026年4月から16歳以上の自転車交通違反に「青切符」が導入されたことに関連し、交通ルールの周知の徹底もおこなっているという。免許不要の自転車は交通ルールを知らずに乗っている人が多いだけにきちんと勉強する機会がすくないため、県警としては学校などへの資料配布や説明会の実施、街なかでの取り締まりなど情報発信を行っている。







生活道路(主に地域住民の日常生活で利用されるような、中央線や中央分離帯などがない道)における法定速度の引き下げは、その道路ごとの実態に即していない場合もあるということで、関係各所と連携をとって順次適切なものとし、標識の設置などを行っていきたいという。

山梨県の高校による「二輪車通学とその指導」

続いて登壇した小澤氏が教頭を務める山梨県立巨摩高等学校は、近隣に鉄道駅がない環境のため原付バイク通学を許可している学校だ。原付バイクで通学している生徒は551名中33名で全体の6%にのぼる。
許可している理由は交通の不便さだけでだけでなく、不審者対策として認めるケースもあるという。


登校時間は他の通学生の安全も考慮して8時15分までとし、車両は改造禁止、カブまたはスクーター型限定とするなど、安全面に配慮した校則を敷いているという。また、隣接する教習所による安全運転講習会を年2回実施し、実技訓練を行っている。
ヤマハ発動機による「二輪車の安全ビジョン」
3人目の講師はヤマハ発動機の中嶋氏。安全普及グループのリーダーとして交通事故分析や交通安全を研究し、産学官連携による交通安全活動に取り組んでいる。

まず、世界的に交通事故の死者数は減少しているが、二輪車・三輪車の死者数は増加していること。海外では若年層の市場が拡大しているが、日本では高齢のライダーが多いことなど、二輪車を取り巻く状況が説明された。

そんな中で中嶋氏はバイクに「五感が刺激されて、心が活性化される」ものだと改めて価値を感じているという。そして自動運転ではなく「運転アシスト」が重要だと考えているそうだ。
「人機官能」は1990年代にヤマハの開発現場でよく使われていた言葉だそうだが、「人機官能×人機安全」のカケルが大事で、どちらかがゼロではダメ。楽しさを損なってもいけないし、安全がないがしろにされてもいけないという。

データによると、二輪車が関連する事故の原因の最多は四輪ドライバーの認知ミス+判断ミスが51% だという。ライダーのミス(合計32%)よりも多いというから驚きだ。二輪車よりも四輪車のほうが多いことが理由の一つであるが、これにより事故を減らそうとするならば四輪車のミスを低減することが重要であることが分かる。

中嶋氏によると事故は「事故のきっかけが起きてから2秒以内に発生」するという。つまり人間の運転技術で回避するのは難しいため、「被害抑止/防衛アシスト」「危機予知アシスト」「緊急回避アシスト」「被害軽減」といった運転アシスト技術を開発・搭載していくことが安全につながるという。


このような事実を踏まえたうえで、急ブレーキが発生した時に全ての方向指示灯が点滅する「エマージェンシーストップシグナル」や、バイクの無線通信による協調型高度道路交通システム、後方ミリ波レーダーユニットで後方車両を検知し車線変更の判断を支援する「ブラインドスポットディテクション」などの開発事例を挙げた。




ブリヂストンが考える「タイヤの安全点検の重要性」
最後の講師はブリヂストンの佐藤氏。タイヤの点検や空気圧管理の重要性を語った。

コロナ禍において新たにバイクに乗り始めた若いライダーが増えたものの、接触を避けることが推奨されたためにソロツーリングが中心となったことで、先輩ライダーや販売店から大切な知識が受け継がれてず、そのままバイクを降りてしまったのではないかという懸念があったという。そこでタイヤメーカーとしては、空気圧不足が操縦安定性を損なう危険を伝える活動を行っている。





タイヤの経年劣化にも注意が必要だ。ゴムに含まれる老化防止剤は3年ほどでなくなり、その後は表面が硬化。制動性能が低下し、止まれなくなる危険性が高まる。





講師4名によるパネルディスカッション
第2部では講師4名が登壇し、これまでの講演内容で気になった点を中心に、質疑応答が行われた。


茨城県警の山田氏から出たのは外国人による事故の増加について。日本と海外では交通ルールや保険制度が異なることから、日本のルールを理解せずに事故につながるケースがあるとのことで、そうした違反を防ぐ取り組みも紹介した。
巨摩高校の小澤氏は、高校生の安全装備としてグローブや胸部プロテクターの重要性について提言を受けたことなどを参考に、自校にフィードバックするという。

さまざまなジャンルの第一人者の知識・意見がクロスオーバーしてお互いに刺激する、有意義なシンポジウムとなった。
文・写真:編集部

























