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クルーザー系に分類されるロイヤルエンフィールド製パラツインモデル

ロイヤルエンフィールド(※以下RE)の650ccツインシリーズは、ダブルクレードルフレームのツインプラットフォームと(INT、コンチネンタルGT、ベア)、ダイヤモンドフレームを採用するクルーザープラットフォーム(スーパーメテオ、ショットガン)の2種に大別できる。そして2025年秋から販売が始まる今回の試乗車、クラシック650は後者に該当するモデルで、位置づけはクラシック350の兄貴分なのだが……。
世の中には「クラシックの王道と言うべき車両が、なぜクルーザープラットフォーム?」という疑問を持つ人がいるだろう。かく言う僕もそのひとりで、試乗前は不思議な気がしていた。ところが実際に体験してみると、クラシック650はしっかり「クラシック」だった。いや、文字にすると何だかマヌケになるけれど、このモデルは既存のRE製650ccツインシリーズとは、似て非なる世界を構築していたのだ。
具体的な話をするなら、まずシートに跨って走り出した時点で、視界入る計器類やナセルタイプのヘッドライトカバーが、同社の伝統を主張してくるし、オーソドックスでありながら、現代の基準だとステップ位置が前方で膝の曲がりが緩やかな乗車姿勢も、旧車的な雰囲気に大いに貢献している。
ただしそれ以上に重要な要素は、フロント19インチ/リヤ18インチのタイヤだ。と言っても、INTとコンチネンタルGTの前後18インチ、ベアの19/17インチ、スーパーメテオの19/16インチ、ショットガンの18/17インチに、これまでの僕が不満を感じたわけではない。とはいえ、安定感と軽快感を絶妙の塩梅で両立した、昔ながらの上質なハンドリングが味わえるという意味では、やっぱり19インチ/18インチは侮り難い資質を備えていると思う(1940~60年代の同社製ツインシリーズは、前後19インチが定番だった)。
そんなクラシック650にあえて異論を述べるなら、他社が販売するネオクラシック系モデルより車重が10~20kgほど重いことと、バンク角が万全とは言い難いこと。この2つの問題はツインプラットフォームなら解消できそうだけれど、実はクルーザープラットフォームのダイヤモンドフレームは、1940~60年代の同社が販売したツインシリーズとよく似ているのだ(一方でツインプラットフォームの骨格は、1950~70年代にイギリスで名を馳せた、フレームビルダーのリックマン的)。おそらくクラシック650の開発陣は、その点にもこだわったんじゃないだろうか。
事実、このモデルは既存の650ccツインシリーズ以上に、往年のロイヤルエンフィールドの雰囲気が感じやすかった。直接的な接点はなくても、イギリスに本拠地があった1940~60年代の同社が販売した500~750ccツインシリーズ、メテオやコンステレーション、インターセプターなどに思いを馳せることができたのだ。
もちろん既存の650ccツインシリーズでも、昔ながらのフィーリングは味わえる。でも今現在の僕は、往年の同社製ツインシリーズの資質を最も色濃く継承しいているモデルは、クラシック650ではないか……と感じているのだった。


■クルーザープラットフォームを採用するクラシック650だが、キャスター角:24度、トレール:106mm、軸間距離:1480mmという数値は、兄弟車とは別物。スーパーメテオは:27.6度・118.5mm・1500mmで、ショットガン650は25.3度・101.4mm・1465mmで、ディメンションは専用設計。
ロイヤルエンフィールド・クラシック650の各部紹介
熟成が進んだパラレルツイン


■最高出力:47ps/7250rpm、最大トルク:52.3Nm/5650rpmという数値から推察すると、270度位相クランクを採用する並列2気筒エンジンや吸気系部品は、既存のスーパーメテオやショットガンと共通のようだ。ただし、ピシュータータイプのマフラーは専用設計。
社名ロゴ入りのブレーキキャリパーを初採用


■フロントフォークはインナーチューブ径43mmの正立式で、リヤサスはツインショック。ブランドはいずれもショーワ。ブレーキディスク径は前320mm/後300mmで、既存のモデルとは異なり、片押し式2ピストンのブレーキキャリパーはロイヤルエンフィールドのロゴマーク入りとなった。
他機種とは異なる外装類の造形


■前後長が短くて左右幅が広めのガソリンタンクや、深すぎず浅すぎずのフロント/リヤフェンダーは専用設計。前後分割式シートの構成はショットガンと同様で、日本仕様はタンデムシート+リアキャリアが付属するので、好みに応じて3つのスタイルが楽しめる。
現代ならではの技術と伝統の構成を融合


■ナセルタイプのヘッドライトカバーと2つのポジションランプは、1950~60年代のロイヤルエンフィールドで定番だった装備。2つの液晶画面を採用しつつも(右下にはターンバイターン式のナビを表示することが可能)、メーターパネルは往年の同社製ツインを再現。
ライディングポジション

■乗車姿勢は1970年代以前の旧車的。INTを基準にするとステップ位置が前方で、ショットガンと比較するならハンドルグリップが高くてライダー寄り。シート高はINTとショットガンの中間となる800mmで、身長が170cm前後のライダーなら両足の大半が接地。
前後タイヤにはこだわりを感じるけれど……?

■前後タイヤはインドのMRFが生産するNYLOHIGH-FN/N。前後バイアスという構成にはロイヤルエンフィールドのこだわりを感じるけれど、前後とも日欧の最新バイアスタイヤに変更すれば、ハンドリングと乗り心地が向上しそうな気がする。
クラシック650主要諸元
■エンジン 水冷4ストローク並列2気筒OHC4バルブ ボア・ストローク78✕67.8mm 排気量648cc 圧縮比9.5 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力34.6kW(47ps)/7250rpm 最大トルク52.3Nm(5.3kgm)/5650rpm
■変速機 6段リターン
■寸法・重量 全長2260 全幅895 全高1130 軸距1480 シート高800(各mm) キャスター─ トレール─ タイヤF100/90-19 57H R140/70R18 67H 車両重量243kg
■容量 燃料タンク14.7L エンジンオイル3.9L
■車体色(価格) ヴァラム‧レッド、ブランティングソープ‧ブルー(94万9300円)/ティール(96万9100円)/ブラック・クローム(99万8800円)
■受注開始日:2025年9月1日(月)

文●中村友彦 写真●富樫秀明