新車

匿名係長 第3回 ヤマハ SR400/500の巻

YAMAHA SR (400/500)

ビッグオフローダー・XT500の空冷単気筒を転用したロードモデルで、ストロークダウン版の400との2台体制で’78年に登場。その後、’85年のドラムブレーキ化/前輪径の19→18インチ化や、’88年の負圧キャブ採用、’96年のタンク容量減&ステップ位置変更、’01年の排ガス対策&再ディスクブレーキ化(500はその前の‘99年型を最後に消滅)、’10年のFI化などを経て、基本は変えずに生産が続く走る工業遺産。

丸いヘッドライトにティアドロップ型燃料タンク、2本のリヤショックなど“バイクらしい形”も特徴。2013年2月には35周年を記念し、専用塗色やシートを装備した特別仕様(謝恩価格で4万2000円も安かった)も登場した。


 SRが走り続けられる国

係長●まあでも、そうやって寂しさを味わってもSRが忘れられないのは、あの車体は操って面白いところがいっぱいあるからなんだよ。グニャーとしてるから、強引な操作だとすぐに音を上げる。ところが、ていねいに教科書どおりに扱うと、そのとおりに言うことを聞いてくれる。バイクとはそうやってていねいに操作するもの、ってことをかみ締めながらライディングできる1台なんだよね。

主任●今、そんなバイクってあります?

係長●傾向としてはカワサキのW800が近いかな。タイヤが減っても変な癖が出にくい、なんて部分は似ている。でも、やっぱりちょっと違うかな。SRの柔らかさ、しなやかさは独特なんだ。

主任●それは’78年には普通だったけど、それがそのまま、’13年まで存在しているから独特になったってことですか?

係長●そう。つまり、今から同じものを造ろうと思っても無理なのよ。だからこそ価値がある。今、俺がSRに望むことって、そうやってきれいに扱える素養や、愛でられるシンプルな美しさを保ったまま、ほんのちょっとだけ走行性能を高めてほしい、ってことなんだ。今のSRって、マスツーリングに行くと快適な速度域がずれてて、一緒に走るとあまり気持ちよくなかったりする。スタイルは保ったまま、性能を少しだけネオクラシック化してもいいんじゃないかと思うんだ。

主任●でも、それは今の販売台数ではコスト的に難しいです、みたいな話では?

係長●なのかもしれないけど、そんなに大仰なことは求めてない。フレームの、外から見えない部分にパッチを貼ったり、丸パイプのスイングアームを、質感を変えないように楕円パイプにしたり、そんな程度だよ。SRって累計で13万台くらい売ってるはずで、それを知ると
〝もう少し還元してよ〟って思ってしまう。

主任●バフとかメッキの質だけじゃなくて、って話ですね。

係長●ヤマハはハンドリングマイスターがいっぱいいたしね。FさんとかKさんとか。だから排ガス規制でキャブレター車が生産中止になり、’10年型でFI搭載車が出るときも、それはもう期待した。

主任●結果的には……。

係長●俺にとってはFIが付いただけ、だった。その他は変えないってのはヤマハの意図したところだったようだけど。

主任●またもや片想いに終わったと。

係長●加えて、隠し切れない配管/配線が露出したり、O2センサーがエキパイにドカンと刺さったり。もちろんFI化で臓物は多くなる。配線なんか倍に増えたらしいしね。でも、今のクラシックもどきって、当然そのへんはスッキリ収めてあるわけよ。35年前の車体のSRが同じことをする難しさは分かるけど……本家がそれじゃ寂しいじゃん。VMAXの細部仕上げに見せたような、あの執念を見たかった。みんなが買えるSRで。

主任●当然、気は遣っているんだろうけど、仕上げのいいネオクラシックが周囲に増えた昨今では……と。

係長●大幅に変えると「変えんな!」って怒るユーザーがいるんだろ。その気持ちも分かるから、見えない部分に手を入れてさ、規制だけじゃなく、’13年のリアルワールドに対応させてほしいんだ。世界で唯一、SRを現役で走らせ続けることのできる国がここにあるわけだよ。だったら、今現在の日本の道に日本一特化した〝日本スペシャル〟に進化させてほしい。日本が誇る本物のクラシックバイクで、楽しくマスツーリングに出かけたいんだよ、俺は。……ああ社長、お電話終わられましたか?

得意先の社長●ごめ~ん。今日はこれから出かけなきゃいけなくなっちゃった。今晩、ご一緒できなくなっちゃったわ。

係長●ああ、次の約束もあるんで、今日はこれで失礼しますよ。

得意先の社長●YOUまた来ちゃいな!

主任●ししし、失礼します!

主任●話の続きですが、長くバイクを売り続けるにはどうしたらいいんでしょう。

係長●んーなこと知るか。知ってたら係長なんかやっとらんわ。まあでも、こうやって折を見て顔を出す、定期的にフォローする、ってことしかないんじゃないの? 相手が恐怖の館であってもな。

主任●……。

係長●SRもこうなったらさ、もう35年くらい売ってほしいじゃん。70周年アニバーサリーをねらって、その時の完成形を頭に描いて、今日からコツコツ改良していく、なんてのはどう?

主任●オレ、係長のこと誤解してました。単なるキャバ好きのおっさんだとばかり……。もっと傍で勉強させてください!

係長●俺は営業マンとして当然のことをしているまでだよ。あ、ちょっと待って。知り合いがいるんで挨拶してくるわ。

 

(3分経過)

 

主任●…………。かかりちょー、誰ですか、あの壇蜜似のちょいエロお姉さん。

係長●ん? ああ、ここの社員食堂のヒトで、秋田出身の32歳。血液型はO型、上から85、60の……。

主任●いっ、いくらなんでもフォローと気遣いが行き届き過ぎでしょうが! ったく、こんなところにまで網張ってるなんて、別の意味で尊敬しますよ。外回りのフリして、壇蜜ちゃんがいる日だけ顔出してハアハアしてたんでしょ、どーせ。

係長●そのへんも傍らで勉強したい?

主任●是非よろしくお願いします(キリッ)。

(次回に続く!)


■FI化による変化

▲FI車(‘10年式)

▲キャブレター車(‘08年)

●FI化では燃料ポンプの配置に苦慮した末(燃料タンク内にスペースがない)、ポンプ内蔵型サブタンクをサイドカバー内に設置し、バッテリーやレギュレーターなどの補機類が各部へ追いやられた。排気管のO2センサー配線やFIの配管類、スロットル下のエアインダクション新設などで、エンジン周辺はやや煩雑化している。

 


■SPECIFICATIONS(‘13年型SR400。[ ]内は写真の’78年型SR500)

 

■エンジン 空冷4ストローク単気筒OHC2バルブ ボア・ストローク87×67.2[84]㎜ 総排気量399[499]㎤ 燃料供給方式 電子制御燃料噴射[キャブレター] 始動方式 キック ●最高出力19kW(26ps)/6,500rpm[32ps/6500rpm] 最大トルク29Nm(2.9㎏m)/5,500rpm[3.7㎏m/5500rpm]  ●変速機5速リターン ホイールベース1,410 シート高790[810](各㎜)●タイヤサイズ Ⓕ90/100-18 Ⓡ110/90-18[Ⓕ3.50-19 Ⓡ4.00-18] ●車両重量174㎏[乾燥158㎏] ●燃料タンク容量12ℓ ●価格57万7500円[35万円。400は31万円]

 



 

今回の「匿名係長」DATA

性別:男

血液型:B

星座:おひつじ座

好きな食べ物:四川風中華

 

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