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「BMW M1000RR徹底解説」S1000RRと何が違うのか?212馬力のエンジンと、車重192kgの車体に見る本気度

10月5日追記:日本における予価、発売タイミングを追記しました。

BMW Mの名を持つスーパースポーツバイク

BMW Motorradが2020 年9月23日に発表したM1000RR。車名の冒頭につく、見慣れない「M」の文字はBMWグループのなかでスポーツカーのチューニングを手がけてきたブランド「BMW M」に由来するものです。
M3やM5など、四輪スーパースポーツの世界でBMWのハイパフォーマンスモデルの代名詞として知られてきた「M」ですが、同じBMWグループであってもこれまでBMW Motorradには「M」の名を冠したモデルは存在しませんでした。

「M」の名が初めて登場したのは2018年のイタリア・ミラノショーでの現行型S1000RR発表時であり、「M Performance」と呼ばれるオプションパーツや、それを装着したオプションパッケージ「M Performance Package」が設定され、ついにMブランドがBMWの二輪にも……そんな期待感を匂わせるものでした。それから約2年、満を持してM1000RRが発表となりました。

BMW M1000RR M Competition Package

では、BMWのスポーツスピリットの象徴とも言える「M」の称号を持つモデルとなったM1000RRとは一体どんなモデルなのか、ここから詳しく紹介していきましょう。

サーキットでの速さを追求しつつ、公道走行も可能なロードゴーイングレーサー

1000ccスーパースポーツの現行型S1000RRをベースにしながら、エンジンやシャーシ、外装など車体すべてをサーキットでのハイパフォーマンスのために磨き上げたモデルがM1000RRです。

S1000RRから派生した同様のコンセプトを持つマシンとしては、BMW Motorradが2016年に発表したカーボンフレームとカーボンホイールを採用したモデルHP4 Raceを思い出す人もいるかもしれませんが、HP4 Raceは公道を走れないサーキット専用モデル。
しかし今回はサーキットと公道の両方で楽しめるモデルとして開発されています。つまり、M1000RRは「ロードゴイーングレーサー」なのです。

2本リングの新設計ピストン、チタン製コンロッド&バルブの採用などで、最高出力212馬力、最高回転数1万5100rpmに!

量産市販車で競われるレース「スーパーバイク」「スーパーストック」で勝てるマシンを──そんなコンセプトを持つM1000RRだけあって、エンジンには大幅な仕様変更が入り、パフォーマンスアップを図っています。

最大トルクは11.5kgm(113Nm)/1万1000rpmでS1000RRと同じですが、最高出力は212ps(156kW)/1万4500rpmとして、S1000RR比で出力は5psも向上。
レブリミットも1万5100rpmと500rpm上乗せされています。そんなパワーを絞り出すエンジンの中身はもはや別物と言っても良いかもしれません。

ベースとなったS1000RRのエンジン。基本構造は同じながら、M1000RRでは腰上を中心として大幅に改良が加えられました。

ピストンはMahle(マーレ)製の新設計アルミ鍛造でクロスリブが入る作り。ピストンリングはフリクションロス低減と軽量化のために2本リングという仕様です。この結果、S1000RR比でピストン1個あたり12gの軽量化を実現。
また燃焼室形状も見直されて圧縮比は13.3→13.5とハイコンプ化が進んでいます。さらに新設計の吸気ポートは切削によって成形。そこに可変バルブタイミング機構BMWシフトカム(排気側はバルブリフト量が0.4mm増大)と新設計の吸気ファンネルを組み合わせることで、吸気効率と充填効率の最適化が図られています。

ピストン、バルブ、カム、ポート、燃焼室形状などが新設計となったヘッド周り。BMWシフトカムの作動タイミングは9000rpmでS1000RRと同様です。

エンジン内部パーツのチューニングはこれだけにとどまりません。
吸排気バルブはもちろんチタン製に、そしてDLC(ダイアモンド・ライク・カーボン)コート済みのロッカーアームは、幅を8mm→6.5mmと狭めて形状を見直しながらロッカーアーム1本あたり0.45gの軽量化を実現。さらにS1000RRでは焼き入れ鋼を使用していたコンロッドはショットピーニング済みのチタン製へと変更されています。

M1000RRでは、シリンダーへの側圧を減らすためにコンロッド長をS1000RRより2mm長い101mm(クランクジャーナール中心〜ピストンピン中心)としているものの、素材にチタンを用いることでコンロッド1本あたりの重量はわずか85gと、驚異的な数値に。
(*ちなみにこのコンロッドを製作しているのはオーストリアのPankl社で、HP4 Raceのコンロッドを作っていた実績もあるレース系パーツブランドです)

このようにエンジン各部で0.1g単位の軽量化が敢行されていますが、そもそもスタンダート状態でも207psを発生するS1000RRのエンジンのポテンシャルを引き上げるためには、あらゆる動的パーツの慣性重量を軽減することがいかに重要であるかがわかると同時に、BMW Motorradの執念とも言えるその作り込みには、M1000RRにかける本気度もひしひしと伝わってきます。

ついに装着されたウイングレット、エンジンパワーを効果的に使う役割も

近年MotoGPやSBK(スーパーバイク世界選手権)のマシンに採用され、ドゥカティ パニガーレV4Rやホンダ CBR1000RR-Rファイアブレードなどにも市販スーパースポーツにも採用が進んでいるウイングレットが、ついにBMWにも。
その名もMウイングレット! M1000RRが装着しているのはクリアコート済みカーボン製ウイングレットで、アッパーカウルの真下のセンターカウル前縁に装着されています。

「Mウイングレット」の形状はボックスタイプで材質はカーボン。

ウイングレットは車体の安定性向上に大きな効果があるパーツですが、今回その目安となる数値が発表されていたので紹介します。

「Mウイングレット」が生み出す速度毎のダウンフォースを数値化したもの(BMW M1000RRプレス発表資料より)

イメージとしては特に超高速域での効果が期待できそうなウイングレットですが、実際には時速50kmなどの低速域でも一定のダウンフォースを生み出していることがわかります。

M1000RRでは、Mウイングレットによってダウンフォースを発生させることで、車体を安定させながら各速度域に応じた最適なホイール荷重を得ています。最高速を出すようなシーンやブレーキング時、コーナーリング時にも車体を安定させる効果があるだけでなく、たとえばコーナーを立ち上がってシフトアップしていくようなシーンでもダウンフォースによって車体の浮き上がりやウイリーを抑制することができるので、標準装備されているウイリーコントロールなどのトラクションコントロールの介入も少なくなります。
つまり、エンジンパワーをより効果的に使えることとなり、最終的にはラップタイム短縮に繋がるというわけです。

BMW Motorradによれば、実際にとあるサーキットでのラップタイム計測を通じてウイングレットの効果も確認したようで、セミプロライダーのレベルでもウイングレットを装着することで、0.5秒〜0.7秒のラップタイム短縮が可能になるとか。

その証拠に、STK(スーパーストック選手権)で活躍するマーカス・ライテルベルガー選手によるテストライドでは、BMW Motorrad WorldSBKチームのエースライダー、トム・サイクス選手が走らせるファクトリーマシンと比較しても、M1000RRはわずか2.101秒落ちのラップタイムに。ユージン・ラバティ選手との比較でも1.590秒落ちのラップタイムだったとのこと。SBKのファクトリーマシンは、M1000RRよりも最高出力が15ps高く、車重が15kgも軽いことを考えると、いかにウイングレットの効果が絶大なのかが分かります。

次ページ:ブレーキやサスペンションも「M」専用に強化!

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