2022年1月5日、日本海側で風雪が弱まる一方で北海道では局所的な大雪の影響で、根室管内羅臼町では午前9時までに降雪量が52cmに達したほか、函館線や石勝線、釧網線など計25便が運休した。
1月6日には、関東では4年ぶりとなる大雪が降り、東京都心の積雪は最大10cmに達する状況となった。
そんな状況を考慮してか、国土交通省・関東地方整備局では「都内でも雪によるスリップやスタックは発生します!」と、雪が降った場合の備えとして冬用タイヤ・チェーンの装着を呼びかけている。
とはいえバイクの場合、基本的に「冬用タイヤ」というものがないし、チェーンを装着しても、ある程度の運転技術がないと交通事故を引き起こす原因にもなる。
そこで当記事では、もしバイクで走行中に「冬用タイヤ規制」が敷かれたら罪に問われるのか、交通事故や刑事事件に詳しい坂口 靖弁護士に話を聞いてみた。
クルマの場合「夏用タイヤ」での雪道走行は違反になる?
──まず、クルマの場合ですが「夏用タイヤ」を履いたまま雪の上を走っているのは違反となりますか?
「夏用タイヤ」を履いたまま雪の上を走っているのは違反となる可能性があります。なぜなら、各都道府県では「道路交通法施行細則等」という規定が設けられており、その規定の中でスノータイヤやチェーンについての規制が設けられているからです。
したがって、「夏用タイヤ」を履いたクルマでの雪道走行は、各都道府県の規定に違反することとなり、5万円以下の罰金刑となってしまう可能性があります(道路交通法71条6項、120条1項9号)。
──もし、「夏用タイヤ」を履いたクルマで走行中に突然雪が降ってきた場合でも交通違反となりますか? また、「いつ雪が降ってくるか分からない……」と、春や秋などに「冬用タイヤ」で走っていても交通違反となるのでしょうか?
まず、突然降雪があった場合ですが、交通違反となる可能性があります。安全にクルマを運転できない危険な状況においては、クルマの運転を中止するべき義務があります。
もし、途中で積雪があったような場合でも、安全に走行できない状況であるならば、交通違反となってしまう可能性が十分にあるでしょう。
一方で、春や秋などに「冬用タイヤ」で走っている場合ですが、「冬用タイヤ」を規制する条例などは特段無いものと思われますので「冬用タイヤ」を夏場に使用していたとしても、交通違反とはならないものと思われます(その冬用タイヤが走行の安全を損なうような場合は違反となる可能性がゼロとは言いきれませんが……)
バイクの場合でも「冬用タイヤ」を装着しないといけないのか?
──基本的にバイクには「冬用タイヤ」というものがありませんし、チェーンを装着しても車体のバランスを取るのが難しく、それなりに運転技術がないと厳しい側面もあります。それを踏まえた上でも、バイクに乗っていて、雪が降り「冬タイヤ規制」などが敷かれた場合は違反となりますか?
実はバイクも同様で、「積雪又は凍結により明らかにすべると認められる状態にある道路において、自動車又は原動機付自転車を運転するときは、タイヤチェーンを取り付ける等してすべり止めの措置を講ずること。」(東京都道路交通規則8条6号)と規定されています。
しかし、ライダーの技量や車種的にチェーンを装着するのは危険であるという場合には、チェーン以外の滑り止めの措置を取る必要があります。とはいえ、バイクの場合はそのような措置があるのかという疑問もありますが……。
──地域によっては大雪による影響でスパイクタイヤを装着するという話を聞いたことがありますが、「滑り止めの措置」としてスパイクタイヤは該当するのでしょうか?
スパイクタイヤの使用については、「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」にて規制されており、第7条には「何人も、指定地域内の路面にセメント・コンクリート舗装又はアスファルト・コンクリート舗装が施されている道路の積雪又は凍結の状態にない部分(トンネル内の道路その他の政令で定める道路の部分を除く。)において、スパイクタイヤの使用をしてはならない。」と規定されています。
また、スパイクタイヤについては「法律において『スパイクタイヤの使用』とは、スパイクタイヤを装着した自動車をその本来の用い方に従い移動させることをいう。」(同法2条4項)とされています。
この「自動車」というのは、「この法律で『自動車』とは、原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽けん引して陸上を移動させることを目的として製作した用具であつて、次項に規定する原動機付自転車以外のものをいう。」(同法2条2項、道路運送車両法2条2項)と規定されています。
つまり、指定地域外や指定地域内であったとしても、積雪や凍結がある道路ではスパイクタイヤを装着することは許されていますが、原動機付自転車以外の車両については、この「スパイクタイヤの使用の禁止」の規制を受けることとなります。
原動機付自転車以外の場合は、指定地域内にて積雪や凍結が無いにもかかわらず、スパイクタイヤを使用していれば法律違反となり、10万円以下の罰金となる可能性があります。
監修●坂口 靖 まとめ●モーサイ編集部・小泉元暉