皆さんはバイクメーカーの社名について、その由来が気になったことはありませんか?
ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの国内メーカーの社名は創業者の名に由来しています。
「本田さん」や「鈴木さん」はご存知の方も多いでしょうが、実は「ヤマハ」も創業者・山葉寅楠(やまは とらくす)さんの名字から!
ごく稀に、カワサキは神奈川県川崎市など地名に由来していると思っている人もいるようなので念のため補足しておきますと、創業者は川崎正蔵(かわさき しょうぞう)さんです。
一方、海外メーカーも創業者の名が社名の由来になっていることが多いのですが、中には人名に関係ない社名の由来を持つメーカーも。大所で言えば、BMWです。当記事ではBMW社名の由来や、その名になった同社の歴史について紹介していきます。
BMWの社名の由来とは?

二輪、四輪の両方で世界的に有名なメーカーであるBMW。
現在のBMWの正式名称は「Bayerische Motoren Werke AG」(バイエリッシュ・モトレーン・ヴェルケ。「AG」はドイツ語で株式会社を示す)、日本語に訳すと「バイエルン州のエンジン工場」で、BMWとは単語の頭文字を取ったものです。
そんなBMWのルーツは1913年に航空機エンジンを製造するため設立された「ラップ原動機製造所」(ラップ社 )です。
そのラップ社はバイエルン州のミュンヘンに工場を建設。完成したエンジンは同じ地区にあった航空機の機体を製造する「グスタフ・オットー航空機工業」(グスタフ社)に納入していましたが、グスタフ社は経営破綻してしまいます。
そして、グスタフ社は1916年に社名を「バイエリッシェ・フルークォイク・ヴェルゲ」(Bayerische Flugzeug Werke AG=BFW)に変更し、会社を立て直すべく再スタートしました。このBFWは後のBMWに大きく絡んでいくので忘れずに!
話をラップ社に戻します。1917年にラップ社も製造するエンジンの評判が良くなかったことなどを理由に「バイエリッシュ・モトレーン・ヴェルゲ」(Bayerische Motoren Werke GmbH。「GmbH」はドイツ語で有限会社を示す)に社名を変更。その頭文字を取り、BMWという名称がここに誕生したのです。
しかし、BMWという社名が現在までずっと続いてきたわけではありませんでした。
まず、第一次世界大戦で敗北したドイツはヴェルサイユ条約によって軍用航空機エンジンの製造を禁止されたことにより、BMWは航空機エンジンから鉄道用のブレーキやモーターの製造にシフト。1920年にドイツのブレーキ会社「クノール・ブレムゼ社」と合併することになりました。
ですが、クノール・ブレムゼ社がBMWの株を過半数所有した吸収合併だったため、会社としてのBMWは消滅(エンジン製造部門は継続)し、会社もミュンヘンへ移転しました。
その後、1922年に投資家であり航空機ビジネスの第一人者であったカミッロ・カスティリオーニがクノール・ブレムゼ社の筆頭株主となります。
彼の手腕によって、BFWが旧ラップ社(旧BMW)の生産施設やエンジン製造業務などを引き継ぎ、同時にBFWは社名をBMWに変更。ここで、BMWの名称が復活したのです!
つまり、BMWのルーツはラップ社ですが、現在のBMWはBFWの後継企業となるため、BMW本社は設立日をラップ社が社名を変更した日ではなく、BFW(グスタフ社)が誕生した1916年3月7日としています。
ちなみに、BMWが最初に二輪車を製造したのは1923年に登場したR32ですが、軍用エンジン製造禁止期間に二輪車を製造していたBFWと合併したことがバイクの製造に関わるきっかけでした。

なお、BMWのロゴは航空機の回転プロペラが、青と白に塗り分けられた四分円のBMWロゴに見立ててデザインされているとの説が広く信じられていますが、ルーツであるラップ社のロゴとバイエルンの州旗からデザインされたとの説が正しいようです。

レポート●手束 毅 写真●手束 毅/モーサイ編集部 編集●モーサイ編集部・小泉元暉
11月18日 18時07分追記:BFWのところを「BFM」と表記していたため、訂正を行いました。
11月18日 19時50分追記:現在のBMWの正式名称の箇所はBayerische Motoren Werke GmbHではなく「Bayerische Motoren Werke AG」の誤りでした。訂正を行いました。