「リコイル」は、ネジ修復の強い味方
第3話で少しだけ触れた別の案件にも取り掛かります。
サイドカバー類の脱着時、フレーム側の雌ネジが荒れていたんですよね。ZZRの場合、メインフレームと同様にフレーム後部もアルミでできています。そして荷掛けフックの取り付けボルトは、外装後部を固定する雌ネジも兼ねていますが、その1ヵ所の6mmネジの山が摩耗してボルトは空回り気味。
しかも、そのネジを修復しようと思った矢先、右側の樹脂製カバーの取り付け用の凹み奥が、振動のせいか経年劣化のためか欠損していました。右側各部に破損が集中してるってことは、元オーナーが転倒時に右足を挟まれるかして、カバー全体が押され気味に衝撃を受けたのか? 硬い物にぶつかったような破損がほぼないんです。
いずれにせよ、放置しておけないネジ山と樹脂部品の欠損です。
そこで、後部フレーム・荷掛けフック固定の6mmネジの修復には、最近工具屋さんで入手しやすい「リコイル」を使用。
元の傷んだネジ山をドリルで少し削って大きめな下穴に加工してしまい、そこに強い材質のリコイルで新たな6mmネジを立てることにします。



「レース用エンジンなど、小ネジを頻繁に分解するアルミの部分で、この加工はよく見たなぁ」と思いつつ、リコイルをネジ穴に組み込むと、荷掛けフックもキャリアも、規定トルク+少々でネジがしっかり締結できました。よしよし!
ZZRに限らず、荷掛けフックのネジ穴がダメになってお困りの方は、この方法で直りますよ。
続いて、少々面倒だったサイドカバーの部分欠損の再構築+成形に取り掛かります。
現状は、ネジを受ける広ワッシャーの大きさによって凹み部分の最深部が欠け落ちて、ほんの一部が残っていました。でもこの一部だけでもあると無いでは大違いでした。

手近にあったアルミのムク棒材(撮影スタジオ用品を自作した余り。ちなみに筆者の本業はカメラマンです)を使い、残留破片を元に破損部分の凸型を想定しつつ、小型旋盤で地味〜に削っていきます。

無事なほうの反対側のカバー形状も参照しつつ、おおよそいい感じでハマるよう加工。表側からそのアルミの凸型をガムテープで固定したら、エポキシパテをサイドカバー内側の型外周全体にギュッと盛り付けて時経硬化を待ちます。

ひと一晩寝かせ、ある程度固まったらアルミの型をグイッとねじるようにカバーから抜き取ってもうひと晩。カチカチになったら細部も整形します。

作業前には樹脂部分をしつこく脱脂し、型のアルミ材の周りには微量の油分を塗っておきました。離形剤代わりには暫定的にCRC556を使用し、内側に凹み部整形での余ったエポキシパテや、フレーム座面に接する部分は、ベルトサンダーできれいに面を出すように切削。細部はペーパーを細い工具に張り付けて滑らかに成形後、白でタッチアップ。
これでサイドカバーは、フレームにバッチリ固定できるようなりました。

待望の部品を中古で入手したものの、一部が思わぬ破損をしていて悲劇的なときなど、エポキシパテは希望を持たせてくれるアイテムのひとつですね。

こちらはカウルのサイド部分。やや外しにくい右カウル内側ボルト脱着は、カウル前下のメンテナンスカバー(?)を外し、ラチェットと5〜7cm程のエクステンション+10mmソケットを組み合わせると割と楽なようです。写真右下のラジエーターカバーは、後々再塗装します。
こうして少しずつ修復が進み、気分を上げつつ試走を続けていますが、そこでまた事件が!
いきなりスピードメーターが動かなくなり、停まってみたら案の定メーター側でワイヤーが外れていて復旧が面倒でした。

ともあれ、外装やネジの傷みといった部分も、放っておくと走行ノイズの元。ガタピシ言ってるのは好きじゃありませんから、電気・燃料系の部品待ちの間に終わらせることができてよかったです。で、次回はくだんのガソリン臭い案件と、急加速後のエンジン不調の原因追及。完調を目指し、作業は続きます。
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